こんな月夜に君を知る 見向きもされぬ歌の主 見ているだけで嫌になる 認められない無意味さよ 目の前に立った僕を見て 猜疑、含羞、泡沫の 希望で滲む、その瞳 哀れに思って施して 小銭をチャリンと投げ入れる 間違えるなよ、その金は お前の歌への対価じゃない 月の形が戻りきり 君の声など忘れ去り 奏でた音はとうに消え 顔も貌も浮かばない 飽きたのならば情けなく 死んだのならば骨がある 胸に残るは一抹の 寂しさだって認めよう 君の歌声、好きだった ついぞ伝えは
なけなしの金と引き換えに 整えられた黒い髪 幼い夢はゴミ箱に 首にはタイを固く巻き ブーツの丈は切り刻み 別にいらないパンと水 ただその為に部屋を出て レンズの前で愛想笑い 直視できない自画像を 幾度も幾度、撮り直し 妥協の果てに見た顔は 投げた金貨と釣り合わず それでもそれを握り締め 鋳型の中に入るべく 誰も知らない夜の隅 僕の全てを土に埋め 「覚えておいて、僕のこと」 名も無い墓標のその下を