プロジェクションマッピングの導入は若者を劇場へといざなうか【後編】

5.アンケート分析

さて、ここからはTwitterの方で若者の舞台芸術とプロジェクションマッピングについての関心を探るアンケートを実施してみました。対象は僕と同じ大学の学生の方々です。ご協力いただいた皆さん、本当にありがとうございました!また、同じアンケートの、自分を含めたこのマガジンの作成者5人の回答も載せていきます(こちらは黒いグラフの方です)。

まず、僕の予想(仮説)はこのような感じです。
 
→若者は舞台芸術に対してはあまり関心がないが、プロマには関心を持っている。なぜならプロマは舞台芸術だけではなく様々なイベントで利用されているし、「インスタ映え」文化とも相性がいいとおもわれる。よって、舞台芸術にプロマを導入すれば、若者に舞台芸術に興味を持ってもらうきっかけになるのでは?
 
若者目線からのリアルな声が反映されたこのアンケート、どんな答えが返ってきたのか!?そして僕の仮説は正解なのか間違っているのか!?早速見ていきましょう!


アンケート1

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 思った通り、アンケート協力者の過半数が「舞台芸術に興味がない」!ちょっとショックですが気を取り直して見ていきます。


アンケート2

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 Twitterアンケートでは、舞台芸術に興味を持てない理由として「チケット代が高い」が最上位に。出費が多くて財布に余裕がないのが大学生、高額なチケット代は舞台芸術を敬遠する大きな理由となっているみたいですね。また、それに並ぶ理由が「お芝居はテレビやサブスクで見るので必要を感じない」。現代では家から出ず、それほどお金も使わずにお芝居を楽しめます。だからこそ、何かと出費のかかる舞台芸術は敬遠されがちなようです。どっちも似たようなものだったら、そりゃお金がかからない方を選ぶのは当たり前ですよね。
 また、マガジン作成者のアンケートでは、「チケット代が高い」が1人、「その他」が1人。「その他」では、「映画や本など、自分の今の趣味と比べると舞台芸術は見劣りしていると思うため、時間を割こうと思わない」という声が挙がりました。


アンケート3

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 プロジェクションマッピングそのものに関しては、皆さん興味がある様子。果たしてプロマは若者を舞台芸術に惹きつける有効な手段たり得るのか!?


アンケート4

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 想定解は「インスタ映えする」だったんですが、違いました。僕はインスタをやったことないから「映える」の感覚がイマイチわからない…。分かったことはプロマと「インスタ映え」文化は意外と相性が悪いということ。仮説が崩れてきましたね。
 Twitterアンケートでは「単純にきれいで魅力を感じる」が最上位になりました。
 また、マガジン作成者のアンケートでは「単純にきれいで魅力を感じる」が2人、「その他」が2人。「その他」では、「演出の幅が広がるから」「最新技術を使うだけあって、とても綺麗だと思うから」という声が挙がりました。


アンケート5

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 Twitterアンケートを見ると、「派手すぎる」とか「もともとの魅力が薄れる」とかでプロマを敬遠する人もいるようです。僕もどちらかといえば騒々しいものが嫌いなので少しわかります。建造物にプロマを投影すると面白い表現が生まれるのも事実ですけど、個人的には日本のお城とかにプロマを投影するのは「ちょっと違うな…」と思ってしまいます。なんか日本文化独特の趣というか静けさが薄れてしまう気がして。
 また、マガジン作成者のアンケートでは「その他」が1人。「その他」では、「プロマから「真新しさ」をもう感じない」という声が挙がりました。


アンケート6

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 Q1よりも興味を持ってくれている人の割合が増えている。これは期待できそう!


アンケート7

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 Twitterアンケートでは「きれいな映像の演出に魅力を感じる」が最上位に。先ほどのQ4と合わせて考えると、若者が思うプロマの魅力とは、その「きれいさ」であると考えて差し支えなさそうですね。あとは「単純にプロマを導入したら舞台芸術はどんな風に変わるの!?」と好奇心を抱く人も半分近くいました。
  また、マガジン作成者のアンケートでは「「プロマ」を使った舞台芸術がどんなものか気になる」が2人、「その他」が2人。「その他」では「プロマがどんな使われ方をするのか気になるから」「自分にとって未知の世界なので、どんなものか気になるから」という声が挙がりました。


アンケート8

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 Twitterアンケートでは「やっぱりQ2で選んだ理由が大きいから」が最上位に。つまり、「チケット代が高い」「お芝居はテレビやサブスクで見るので必要を感じない」が一番大きな敬遠の理由であることが明らかになりました。若者を舞台芸術に惹きつけるには、最新技術の導入ももちろん有効ですが、舞台芸術の根本的な部分を変えていくことが鍵なのかもしれません。
 また、マガジン作成者のアンケートでも「やっぱりQ2で選んだ理由が大きいから」という声が挙がりました。


6.アンケート考察と全体のまとめ


 Q3、Q6より、プロマは若者を舞台芸術に惹きつけるために有効な手段であるということができると思いました。

 Q2、Q8より、舞台芸術に興味を持てない理由として、まず「チケット代が高い」が挙がりました。出費が多くて財布に余裕がない若者にとっては、チケット代が高いだけで舞台芸術のハードルは上がってしまいます。そのためには、やはり劇団や主催者だけではどうにもならない問題なので、国や地方自治体といった行政側が芸術文化振興に力を入れて補助金を出してあげるか、民間からの寄付、NPO法人などからの支援をもとにチケット代をなんとか安くする工夫が必要だと感じました。
 
 次に、同じくQ2、Q8より「お芝居はテレビやサブスクで見るので必要を感じない」が舞台芸術に興味を持てない理由として挙がりました。ここから分かるのは、若者にとって、テレビやサブスクと舞台芸術は大体似たようなものだと認識されていることです。そこで、テレビやサブスクと舞台芸術を差別化することが必要だと感じました。同じようなものならば、お金がかからない方を取るのは当たり前です。しかしテレビやサブスクにはテレビやサブスクの、舞台芸術には舞台芸術のよさがそれぞれあります。だからこそ「舞台芸術にしかない魅力」を前面に押し出していけば、若者に興味を持ってもらえるのではないかと感じました。
 また、これに関連して思ったことは、前から個人的に思っていたことですが、舞台芸術が人との間でほぼ話題にならないことです。僕は地方出身で、そもそも活発に活動している劇団や劇場が少ないため、特にその傾向は強いと思います。舞台芸術がなぜ話題にならないかの原因の1つに、「テレビがドラマや映画ばかりを話題にし、人々が舞台芸術について知る機会がないこと」があると思います。現代社会においてもっとも影響力のあるメディアは、老若男女が触れることのできるテレビです。自分の経験上、テレビが舞台芸術を話題にすることはあまりなかった気がします。だからこそ、テレビが舞台芸術を話題にし、「舞台芸術にしかない魅力」がより多くの人に伝われば、それが人々の間でも話題となり、テレビやサブスクと舞台芸術が差別化され、最終的に若者にも興味を持ってもらえるのではないかと感じました。また、近年ではスマートフォンが普及し、若者に影響力をもつメディアはインターネットに移行してきている気もします。「マイナタリー」など、舞台芸術に関する情報を発信するメディアがスマートフォンアプリ化しているため、若者が舞台芸術の情報を得るハードルも低くなってきました。実は若者に「舞台芸術にしかない魅力」を知ってもらうまであともう一歩のところまで来ているのかもしれません。
 
 Q4、Q7より、若者が思うプロマの魅力とは、その「きれいさ」であることが分かりました。したがって、ただ単に「最新技術」であることを前面に押し出しても多くの若者には興味を持ってもらえないと思います。また実際、もうプロマは様々なところで何回も催されているからか、Q5では「プロマから「真新しさ」をもう感じない」という声も挙がっています。だからこそ、プロマのきれいさを写真や動画で発信したり、プロマを舞台芸術に導入した結果どんな表現が繰り広げられるようになったかや、観客はどんな体験と感動を味わうことができるのかを強調した方がより興味を持ってもらえると思いました。「4.プロマが抱える問題」で述べたことと関連しますが、
その舞台芸術作品に話題性を持たせるため、とりあえずプロマを使ってみて客寄せに利用するのではなく、プロマをあくまで舞台芸術のいち表現技法と捉えて追求し続け、そこから生まれる「体験」的側面を発信していくことこそが大切なのだと思います。


7.参考文献 


・石多未知行,「プロジェクションマッピングという映像手法とその課題 (実世界へのプロジェクションによる映像技術)」,『光学』,43(10),2014.10 p.450-456
 
・株式会社アシュラスコープインスタレーション,「詳しく知りたいプロジェクションマッピングの最先端技術」,http://www.projectionmapping.biz/projectionmapping2 , [2020年7月12日閲覧]
 
・バンダイ キャンディ事業部,「「日本おもちゃ大賞2014」イノベイティブ・トイ部門大賞受賞!スマホを使って楽しむ、驚愕の映像エンターテインメント食玩 ハコビジョン」,
https://www.bandai.co.jp/candy/hakovision/about/ , [2020年7月12日閲覧]
 
・諸富大輔,「ダイオウイカ×プロジェクションマッピングに反応したら週末は六本木へ|Mac」, https://weekly.ascii.jp/elem/000/002/616/2616888/ ,[2020年7月12日閲覧]
 
・「ライブ・スペクタクル「NARUTO-ナルト-」~暁の調べ~大阪公演公開ゲネプロ ダイジェスト」, https://www.youtube.com/watch?v=CD87Bsx7uuE ,[2020年7月12日閲覧]

・株式会社ピクス,「Panasonic リアルタイムトラッキング&プロジェクションマッピング「EXISDANCE」」,
https://www.pics.tokyo/works/exisdance/ ,[2020年7月12日閲覧]

・「進撃の巨人プロジェクションマッピング "ATTACK ON THE REAL" フル / Titan Projection Mapping 《公式》」, https://www.youtube.com/watch?v=-q6DO2pfREg ,[2020年7月16日閲覧]

・「ライブ・スペクタクル「NARUTO-ナルト-」 DVD2015年8月26日発売!」, https://www.youtube.com/watch?v=XoOYA5RDwR8 ,[2020年7月12日閲覧]