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詩| 夏のくに

バス通りを走る風は下り坂。
凪いだ日陰には、幼気なナイショ話がしんと佇む。
取り出せるはずと信じたガラス玉。少ないほどにきらめくビー玉。透かして見たら歪む水平線。
焼けたうなじに潮の移り香。

黄昏は最もゆったり流れる時間。
行き交う気怠い猫らは、ご自慢の尻尾で太陽をピカピカに磨いた帰り道。
17時のチャイムが鳴ったら帰る。夕日に背中を押されて帰る。また明日ねって泥んこの手を振る。
陽炎に紛れたかつての棲み家。

明日天気になあれ。
ブランコから蹴飛ばされたサンダルが、知らない未来をのたうち回って、草熱れに朽ちている。
Tシャツの色が変わったところ。汗で張り付くシメった心。洗濯機に放り込んだら、もういいかい?
故郷くには今なお希望の在り処。