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ウクライナは降伏するべきか

 ウクライナとロシアを巡る状況は刻々と変化している。ニュースサイトを開くたびに新しい情報が目に入る。ロシア軍は民間人や市街地にも攻撃を加え、幼い子供を含む多くの犠牲が出ているようだ。最近、こういった犠牲者を減らすためにウクライナは降伏をするべきではないかという議論が起きている。終わりの見えないロシアの攻撃を前に、ウクライナは降参するべきなのだろうか。

 私は、ウクライナはロシアに対して降伏するべきでないと思う。なぜなら降伏はウクライナという国が本質的に失われることを意味するからである。ウクライナを残すことは非常に重要だ。そう考える理由は二つある。ウクライナ国民の感情に寄り添うべきだという点と、国際社会としてウクライナをロシアの傘下に下すことは認めるべきでないという点である。 


ウクライナの国民感情 

 第一に、ウクライナ国民の感情は無視することができない。もともとウクライナとロシアの間には確執があり、ウクライナ国民の間には反ロシア感情も存在していた。そこに今回の侵攻が起き、さらにロシアに対する憎悪の感情が盛り上がった。このような状態でロシアがウクライナを支配しても、いつか必ず独立運動が起きるだろう。ウクライナ国民の心情を前提にすると、ロシアの力による支配は無理のあるものだと容易に考えられる。
 では、そもそもウクライナに反ロシア感情があったのはなぜか。それはウクライナの独立の歴史と関係がある。ウクライナは旧ソ連から独立したことで、独自の文化・政治構造・民主主義の価値観を手に入れた。それらと一線を画すロシアに対しては違和感と疑念を持つとともに、ロシアによる支配でそれらを失う可能性への恐怖も抱いている。その結果がウクライナ国民の反ロシア感情として現れているのだ。


国際社会が降伏を認める訳にはいかない理由

 二つ目の理由として、国際社会としてロシアによる支配を認めるべきでないということがある。第一に、ロシアの大義名分のない侵攻は断じて認められない。ロシアは何かと理由をつけてウクライナへの侵攻を開始したが、その手法は決して論理的なものではなく、正当なものとして認められるものではない。
 第二に、この問題を認めることで将来的に国際社会に悪影響が残る可能性がある。それは、ロシアの「力による現状変更」を認めることで、将来他にも同様の手口で他国に侵略する国が出てくる恐れがあるということだ。ロシアの例で認められたから、という論理でそれを真似する国が出てくることは好ましくない。

日本は何ができるのか。私たちには何ができるのか。

「ウクライナに勝ち目のないこの戦争では、早期に降伏した方がより多くの命を救うことができる」という主張もある。確かに、犠牲者を一人でも少なくするためには一刻も早い停戦が必要である。しかし、降伏することによってより多くの代償を支払うのもウクライナ国民だ。ウクライナという国を守ることは、主権・国民の誇り・文化を守ることになるのは明白である。さらにそれは国際社会における秩序を守っていくことにもつながる。国際社会が協調して、ウクライナを守っていかなければならない。
 戦地から遠く離れた日本では何ができるか。政府は経済制裁や難民の受け入れを通じてウクライナを支援する立場を表明している。国民の一人としては、この問題に対して関心を持ち続け、意見を発信していくことが重要だ。ウクライナが最も恐れることは、国際社会の関心が薄れロシアによる侵攻が黙認されてしまうことだ。世界が一丸となってロシアに対して厳しい視線を投げかけ、反対の意思を表明し続けていかなければならない。たとえそれが遠い国の、たった一人の意見だったとしても。

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