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イラストレーターが映画監督になるには。


「正しいことをしたい、意味のあることをしたい、人より前に進みたい。」

それがいつであれ、多くの人が一度は感じたことのある感情のはず。
時には自分を殺して「競争だから」とか、いろんな言い訳を使い、自分が前に進むために他者を出し抜くこともあったはず。


"アニメーション映画"


総合芸術と言われる所以は、さまざまな芸術的要素が含まれていることだけでなく、「他者」の協力がなければ「ひとり」では作りえない、集団で制作することも、この"総合"という言葉には込められていると思います。


「イラストレーターが映画監督になるには?」


2018年9月29日に投稿された1枚のイラスト「Summer Ghost」。
タイトルからもわかるように、loundraw初監督映画「サマーゴースト」の原点ともいえるイラスト作品です。
当時はほかのオリジナルイラストと同じく、あくまで新作イラストの一枚として公開された作品でした。
(画像:オリジナルイラスト「Summer Ghost」)

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PROJECT COMMONの始動を発表した時。
たった半年前のことですが、自分はどんな感情だったのか。たまに振り返ります。
約1年後、自分たちの人生は前進しているだろうか。次の作品を期待してもらえるような、そんなスタジオになっているのだろうか。
もちろんその答えは公開後に分かることですが、今はそんな未来を想像し、興奮と恐怖が行ったり来たりするような時間を感じています。

イラストレーターがアニメを作るときにまず起こる問題は、一般的なアニメーション制作のフローとの違いがあげられます。
ひとえに「アニメ」といえど、イラストレーション(=イラストレーターが描く1枚絵)の連続体として考えるアニメーションと、動画を構成する静止画の連続体として考えるアニメーションとでは”1枚”に対する考え方が異なり、それ故に完成までのワークフロー(作業工程)やスタッフィング(参加クリエーターの技能と役割)が異なります。

僕らFLAT STUDIOにはアニメーション業界経験者がほとんど居らず、イラストレーターやそれ以外のキャリアを持つクリエーター・スタッフがほとんどです。
これを「新しい」といえば聞こえは良いですが、これまで僕らがご一緒させて頂いた方々には我々の無知からご迷惑をかけてきたことも事実。

「作画さんへの指示書の作り方は?」
「色彩設計で作る資料ってなんですか?」
「編集ってそもそも何をするんですか?」
「ダビングをしたあとに音声をいじってはいけない?」

あげればキリがないですが、特にパインジャム向井峠さん、イアリンジャパン笠島さん、A-1 Pictures藤田さん、トムス鈴木さん、ボンズ鈴木さん(とタムラコータロー監督!)など、アニメを制作するという視点で多くを学ばせて頂きました。
会社は違えど同じくものづくりに携わる人間だからこその連帯感を勝手ながら感じています。
そして、そのやりとりをするなかでなかで「イラストレーターがアニメを作ること」の利点を感じることも出来ました。

ひとつは「監督の役割」

本来の監督は作品作りにおけるクリエイティブの最終意思決定者。どんな絵作りで、どんなストーリーにするかなど、プロデューサーや関係者の意見はあれど内容面の最終判断は監督が行うのが一般的です。
なので、「指揮する」という意味を込めて、その業務はディレクションとも呼ばれています。

一方、イラストレーターに最低限必要なスキルは「絵を描く」こと。この基礎にして必須のスキルがイラストレーターという職能を定義づけています。そして、完成度や方向性の違いはあれど、イラストレーションを構成するためのスキルセットをコンプリートしているのでれば下記の要素を自ら生み出すことができる。

・レイアウト
・キャラクター
・美術
・物語(=瞬間的なシーンの演出)

イラスト制作をルーツに持つ監督は自分のイメージを自分で「作る」ことができる。言葉で指示をするか、自分でイメージを描き説明するか。これは大きな違いに思えます。

聞くところによると、アニメスタジオ出身の監督には、制作進行から演出〜監督になるケースと、アニメーターから経験を積み監督になる場合の大きく分けると二分化されるようです。
指示することが役割か、実際に手を動かして作ることも役割か。完成に向けどちらが適しているかは作品により異なりますが、我々はイラストレーションをルーツに持つスタジオとしてアニメーションに挑戦しています。


「才能に奉仕するのがプロデューサーの仕事だ」


映画プロデューサー奥山和由さんの言葉。
プロデューサーは、制作進行は、マネージャーは、宣伝スタッフ、デザイナー、バックオフィスまで。
作品完成に向けて「好き」という感情だけで割り切れるほど単純ではない作業をどうしてこうも続けていけるのか。好きだったことが好きじゃなくなることもある。僕たちは誰かの夢を実現させることに、どうしてこうも躍起になっているのだろうか。

映画「サマーゴースト」の制作に携わるクリエーター、スタッフ。
ひとりひとりがこの作品に自分自身のテーマを持って向き合っているはずで、それはスタジオとしても同じです。
今回、FLAT STUDIOが「サマーゴースト」に向き合う意義は。


《イラストレーターが監督するアニメーション作品をどう作るか?》


ものづくりにおいて技術や役割の境界が曖昧になり、より横断的なクリエイティブをするクリエーターたちが増えた今。イラストレーターという技能は絵を描くだけでなく、より多くの場面で活かせるようになっています。
(FLAT STUDIOのイラストレーター以外のクリエーターもこのテーマを持っていると思います)

イラストレーターに勇気を貰ってファンになった人、これからイラストを描いてみたいと思っている人。静止画というキャンバスに限界を感じている人。イラストレーターに注目する人。

そんな人たちに向けて僕らはこれからのイラストレーターの可能性を提示したい。
クリエーターとスタッフが手を取り、新しい挑戦をすることの価値・意義を伝えたい。
まだまだイラスト表現には可能性があります。

(動画:Z会×映画「サマーゴースト」コラボムービー)


結果的にアニメスタジオを立ち上げ、結果的にメンバーが集まり、結果的にアニメ映画をつくることになる。
一年後に自分たちがどうなっているのかは当然予測できないながらも、映画「サマーゴースト」の制作を通して、イラストレーターの可能性を提示すること。これは僕自身に課したミッションでもあります。

どのように映画作品が作られていくのか、途中経過含めてなるべく全てを伝えていきますので、完成までお付き合い頂けますと嬉しいです。
2021年公開作品、loundraw監督短編アニメーション映画「サマーゴースト」の続報をお待ちください!


FLAT STUDIO
石井 龍(https://twitter.com/ishii_ryu)

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