インスタントラーメン・クライシス
『何度でも食べられる!自己培養型インスタントラーメン誕生!』
最先端バイオテクノロジーの結晶とも言うべきニュースが世界を駆け巡ったのももう以前の話。
人類にとって長きに渡り愛された革命的即席食品は、新たな革命を遂げて家庭に定着していた。
「今日は……塩にするかな」
俺は部屋の中をとてとてと歩いている『塩』を手招きし、机に座らせた。
家のラーメン達の中ではいい具合に麺と具が育ってきている。
食するに適した頃合いである。
ポットの湯を注ぎ入れると、たちまち湯気とともに食欲をそそる匂いが上る。
蓋を閉じて、三分。
インスタントラーメンが世に定着してから変わらない、儀式のような黄金の時間。
スマホを見ると、『生ラーメン原理主義派テロ組織声明』の文字。
「まただよ……」
寄ってきた『醤油』を軽く撫でながら、ニュースを流し読みする。
そろそろ三分か。……と、その時。
――ピンポーン
狙いすましたようなタイミングで、呼び鈴が鳴った。
【続く】
スシが供給されます。