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過去に戻って親友を救いたい話 #1

※注意※

この二次創作小説は原作を知らない方でも楽しめますが、知っている方が楽しめるかと思われます。リンクを張っておきますので、ぜひ確認してみてください。プレイはこちら  公式サイトはこちら

本編はここからです。

「……………様………ラ様?」
声が聞こえる。正直反応する力もない。今は何も考えたくない。
「…くだ…い。…………様……て」
うるさい。放っておいてくれ。私にかまうな。
「早く……れば、……で…まいます。」
よく聞き取れない。いや、むしろそれでいい。
「…生きて帰るのではなかったのですか?」
その一言が私を正気へと戻す。そうだ。私は生きて帰る、そう決めたばかりじゃないか。そう思い出して顔を上げると、目の前にはハンナキーが変な機械を持って立っていた。どこかで見たような機械だ。確か、ぶいあーる…というやつか?
「やっとお目覚めになられましたね。ひどく魘されていたようでしたが…。」
ハンナキーは安心したように肩の力を抜く。本当にこいつが敵なのかどうか時々わからなくなってくる。
「ああ。もう大丈夫だ。」
反射的にそう言って立ち上が…ろうとしたのだが、上手く立ち上がれず、ハンナキーの方へ倒れこむ。
「ひゃあ……っ」
ハンナキーは変な声を上げながらも私を受け止め、再びソファに座らせる。
「サラ様は今、衰弱しきっています。メインゲームまではまだ時間がありますし、暫くここで休んでいってください。何も危害を加えたりしませんので。」
「…すまない。」
私はそう言ってソファに座る。そして、気になっていた疑問をハンナキーに尋ねる。
「ハンナキー、その機械は?以前私が使用したのとは別のもののようだけど。」
けれど、質問の答えは返ってこず、逆に私への質問が返ってきた。
「サラ様は、過去に戻ってやり直したいと思ったことはありませんか?」
そんなことないわけがない。これまでに一体何があった?アリスさんの死、ミシマ先生の死、カイさんの死、
そして…ジョーの…。
「やり直せるならやり直したい。一体何人の罪なき人がお前たちに殺された?」
私はそう言ってハンナキーを睨みつける。
「ひぃっ…怒らないでくださいぃ…。何も意味のない質問をしたわけではありません。ただ、サラさんにその気持ちがあるかどうかを確かめたかっただけなのです。」
…確かめる…?私に…?ハンナキーは続けて話す。
「サラ様、私から一つ提案があります。私たちを管理する組織からではなく、私個人からの提案です。過去に戻ってこの現状を変えませんか?」
過去に戻る?何を言っているんだ。でも、個人からの、というところがとても気になる。
「…話を続けて。」
私はそう言って続きを促す。
「はい。私がノエルの正の感情を取り扱っていたのはご存じのはずです。ですが組織にも、他の誰にも内緒で私一人で続けてきた極秘研究があるのです。それが、時間の逆行。タイムマシンのようなものです。そしてそれがつい先日、完成いたしました。」
…ハンナキー一人で今の日本の科学力や技術を大きく上回るとは。果たして彼女は本当に人間なのか?
「本当に逆行できるのか?」
半信半疑で尋ねる。それが本当なら……。
「はい。逆行はできます。ですが、一つ問題がありまして、一度過去に戻った人間は二度とここへは帰ってこれないという欠点があります。」
ハンナキーは少し声を細めていった。……それって大丈夫なのか?不確定要素が多すぎる。
「簡単にでいいから原理を説明してくれ。」
原理によってはダミーの可能性もある。ここで見極めなければ。
「はい。まず、サラ様の遺伝子やDNA情報、現在の脳の様子をこの機械から採取し、すべてデータに変換します。その後、時空間をデータ化して纏めてある装置から、戻りたい日のデータを選択し、そのデータ内にあるサラ様のデータと先ほど回収したサラ様のデータを置き換えるだけです。すると、記憶を保持したまま過去に戻れるのです。」
…なるほどわからん。正直謎が深まるばかりだ。何が正しいのかすらもわからない。でも目の前にあるのは希望になり得る光だ。この際何でも利用してやる。
「わかった。話に乗ろう。最後の質問だが私にその気持ちがあるか確かめた理由は?」
「それは、この装置が作動する条件が、過去に戻りたいという強い気持ちが必要だからです。」
ハンナキーは私の目を見て答える。
「なるほど。今すぐ過去に戻れるのか?」
「はい。この装置を被ればすぐに。」
そう言ってハンナキーは手元の装置を私に差し出し、私はそれを受けとり、頭につける。
「準備はよろしいですか?それでは、逆行システム、作動。」
ハンナキーのその声を最後に私の意識が途切れる。


…意識が戻る。あたりを見回すが、ここは暗闇だ。動作に不良でもあったのか?
あたりを見回すも、何もない。しかし後ろから声が聞こえた。
『よぉサラ。どうしたんだそんなところで?』
聞き覚えのある声に、私は後ろを振り向く。
『過去を変えて未来も変えるなんてことお前ができると思うのか?』
「お前は…!」
ジョー……の幻影。
『人殺しのサラさん。一つだけ伝えておくぜ。』
黒い目が私をのぞき込み、ジョーが言い放つ。
『過 去 に 戻 っ て も お 前 は 俺 を 救 え な い 。』
その言葉とともに、私の意識は再び途切れた。

第一章一節 終


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