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6月観たもの読んだもの

新宿末廣亭6月1日夜席
 寄席。末廣亭は舞台が高くて見やすいな&お酒はまだ解禁じゃないんだな、だった。
 主任の喬太郎を楽しみに、やってきたが、隅田川馬石と柳家小ゑん、林家しん平でゲラゲラ笑った。楽しかった。喬太郎もめちゃくちゃ面白かった。稲葉さん、と言った瞬間にかなり人が笑っていて、なんだなんだ?と思ったら柳家さん喬の本名だった。あとから、さん喬のことを想像しながらあの落語を聞くとまた違う面白さがあるなというのと、さん喬自身がやるのを観てみたいな……と思った。落語協会の啓蒙ビデオ的なさん喬が観れるということか……。

『寛永宮本武蔵伝』
 講談。楽しい珍道中といった趣。

松岡和子訳『ロミオとジュリエット』
 戯曲。喜劇の様相。お下劣騒ぎという感じ。お下劣な言葉遊びとかは確実に原語を理解できる状態で観た方が面白いだろうなと思う。
 これを読む前に、ペストの時期の話でさ、というのを聴いてへ〜〜!って思ったなのをふむふむ確認しながら読んだ。
 映画だとディカプリオ版のロミジュリがいいよ、と聴いているが(アロハと銃のロミジュリ)そういうふざけた感じのトーンなのが戯曲を読んでよくわかったので観てみたいなと思った。

松岡和子訳『マクベス』
 戯曲。冒頭から終わりまでかなり好き(登場人物の名前の語感も、他の作品に比べて好きな感じの人が多い)。
 マクダフ夫人のシーンから最後に向かうところの、マクダフ夫人と子供のところとか、なんというか雷の稲妻に照らされた瞬間みたいなシーンが多く、作品全体を覆うトーンがかなり好みだった。ミステリ読むのが好きな気持ちに近いのかもしれない。横溝正史の湿気の感じとか、小さい頃に魔女や魔法使いの出てくる話が好きだった気持ちを思い出した。
 マクベス夫人に名前がないというのが気になるので『すべての季節のシェイクスピア』読みたくなった。
 なぜマクベスはこんなに権力に魅入られるのか、行くところまで行ってしまった人間のことが結構好きなので、割とワクワクしながら読んだ。マクベス夫人とマクベスの対の関係性と変化していく二人の性格のシーソーは読んでいても面白くて、割とコテコテに演劇で楽しみたいというイメージが沸いた作品だった(なぜかNODAMAP的な演出イメージで、読んでいた)。訳者あとがきも解説もかなり面白くて、マクベスについてのさまざまな議論を読んでみたくなった。

松岡和子訳『夏の夜の夢・間違いの喜劇』
 戯曲。フェイクスピアを思い出していた。妖精と人間がクロスオーバーしていく感じと、夜の夢の部分と、劇中劇と、最後のパックの口上という、幾重にも重なっているのが面白い。上演にも幅がありそうだからいろんな上演を観てみたいな、と思った。
 間違いの喜劇もめちゃくちゃ面白かった。かなりコテコテの面白さだけど、観客が混乱せずにやるにはちょっと技術が必要そうではある。双子の主人とその人たちに仕える双子の召使が幼少の頃に離れ離れになってしまって、とある場所で出会った際にそっくりすぎるし、お互いが自分の双子が同じ街いるとも思わないために、ありとあらゆるドタバタが発生するという楽しい喜劇。これがゾッとする形だと、ポーのウィリアムウィルソンということで。

松岡和子訳『十二夜』
 戯曲。またもや、間違いの喜劇に引き続いてそっくりさんによるドタバタ。言葉遊びやおふざけがたくさんあって、これも賑やか。二重にラインが走っていて、伯爵家の執事のマルヴォーリオが強かにやられる筋と、片思いの連鎖の筋がくるくる絡む、というかあまり関係しないけど上流の人々と仕える人々の層が分かれていて、そこでそれぞれ話が進んでいる、というような流れに感じる。みんなそれぞれにお馬鹿で、その中に一人小柄なマライヤが賢く、意地悪く立ち回るという図。そのキャラクターの感じがいい。
 あとは特に言葉遊びが多いと感じた。道化がかなりずっと出張ってて話しているのと、マライヤがいるので、複雑な言葉遊びと勘違いのおバカによる純粋なる言葉間違いが重なる。
 訳者あとがきで、この作品は憂いの顔がある作品だ、とされていたが、読んでいるとそんなに感じないので、へぇ、と思った。映画か舞台かで観てみたい。

川久保晴『オッケイ』
 演劇。かっこよかったよ、と思った。noteに書いたけれどすぎていく時間の流れのことを考えた。人生のことをふと思い出す瞬間だった。

松岡和子訳『リチャード三世』
 戯曲。アンを口説くところで極悪だ……、と思い、エリザベスとマーガレットの前で話しているのを聞きながら、こんなにも表立って粗暴で極悪なのか……と思いつつも、結構ずっと面白い。気持ちは韓国ノワールの汚職の世界(リチャードにはそういう映画の主人公的なかっこよさはないが)で、割と面白く読んだ。

岩田規久男『景気ってなんだろう』
 書籍。読書会のために読む。かなり面白かった! 新聞読んだり、NHKの各党の代表者が集まって討論する討論番組をみたりしても、あんまり経済政策に関してピンとこないというか、なんの話をしているのか……と思っていたがこれを読むとどういうことなのかかなりよくわかる。この人一人の視点から語られているので、細かい点に関しては他の研究者はこう思っているみたいなことはなくはないのかもしれないが、基本的なことについてのとても優しい説明という感じだったので、このラインはまではみんな同意だろうみたいな雰囲気もある。あと、主流な解釈が複数ある場合には、この説とこの説と、というのも説明してくれているのである程度平等と思われる。
 最後に景気対策の政策の形についてもいくつか解説があって、わかりやすくて良かった。この人はアベノミクスへの言及をしていたり、日銀の副総裁をしていたこともあるので、それらの本を読むことでより現状の経済への解像度が深まりそう。
 あと読んでいて、状況が良くなるためには消費がずっと盛り上がっているということを求められていて、無尽蔵に作り無尽蔵に消費することがある程度善な世界観なので、こりゃここから消費を増やしていくってもう飽き飽きだし、このまま後戻りできないからと人類が資本主義社会を歩んでいくことによって、破滅するみたいな未来を想像しちゃった。

岩田規久男『日本銀行は信用できるか』
 書籍。かなり痛烈に日銀は批判されており、読む限り確かにダメダメでは……ということを強く感じる。人文系だとか自然保護の観点で行政から専門家は全く軽視されているな……と感じることは多々あるが日銀もそうなんだ……という感想を抱いた。
 具体的な日銀の金融政策において、やったことに対する評価を数的な根拠に基づいて行い、それに基づいて今後の動きを決める、という、試作実行における基礎の基礎が全然行われていないようだ、ということにかなり愕然とした。たしかに、複合的な要因が絡み合って、どういう指標でどういう結果をどのように捉えるのかというのが難しい分野なのは重々承知だけれど、そのために研究者や他国の状況の分析とかをする調査機関とかがあるはずで、それらを駆使して現状の把握と改善のサイクルを行う仕組みすら整ってないんだ……と思った。仕事をする上でそれをサボってうまくいかないということは、まぁ結局あらゆるところで起きてて、それができるとうまくいくという部分ではあると思うけど、流石に中央銀行だからな……ちゃんとやってほしいな……と思った。前例主義と相反するやり方なのかな〜という感じもするので(そういえば、法律の考え方は前例主義であり、法というのはそう簡単に曲げられないようにするために、前例主義という方法を取るということにもある一定の合理性がある、という説明を読んでなるほど〜とは思った。民主主義のコストとかにも近いかも)、その辺うまい仕組みたてを作る必要があるんだろうけど、それは総裁が誰かということなどに左右されないものである必要があるよな〜、うーん、と思った。
 この本を読んでいると、投資家などにどういう印象を与えるのかということや過度な不安を与えさせないことなどが割と重要であるはずなのに、その辺がぐだぐだだというのも、読んでいて、え〜〜となる部分だった。割と外交などの駆け引きにも近いところがあるのかな(知識に基づいた上で)という感じがして、日銀の総裁が会見でどういうことを言うのか(というのを読んでるタイミングで、日銀総裁が「7月利上げ十分あり得る」というロイターの記事が目に入った)もかなり重要なんだなと思った。

都知事選の東京都知事選立候補予定者共同記者会見
 都知事選前の情報収集をするぞ〜〜、ということで、6/19日にあった記者クラブによる共同記者会見を観た。初めての都知事選だ!って感じ。
 現状の都政についての情報は現職の人の方が多いから、具体的な数値を元にした公約の話ができるために有利になる部分があるという話を家人としてなるほど…!!と思った。現職でない人々はそのあたりの調査力とか情報の準備が大変なので、バックにどういう人がいるのかとか、その調査情報が手に入るのかどうかとかも、重要なんだな〜とそれぞれの回答とその具体性やバリエーションを聞きながら納得した。
 神宮外苑の件の現状を把握していなかった。
 こういう記者会見は、ここ半年〜一年くらいでちゃんと観るようになったんだけど、ニュースとかを断片的に観るよりも、自分で咀嚼して情報を知ることができるので、観た方がいいな、というのを実感している。

岩田規久男『日銀日記』
 書籍。著者が日銀副総裁を務めた二年間の日記(第二次安倍政権下の頃)。『景気ってなんだろう』→『日本銀行は信用できるか』→『日銀日記』の順で読むことで、安倍政権下の金融政策ないし、一部財政政策についてもある程度理解ができたのでよかった。いきなり『日銀日記』を読んでも、景気改善を金融政策としてどんな風に行えるのかという構造がわからないからさっぱりだったと思う。『景気ってなんだろう』でその名の通りそもそも景気の良し悪しとはどのような数値を見て判断が可能なのか、それらの数値はどのようにして関連し影響を与え合うのかということを学んだ上で、『日本銀行は信用できるか』で、では日銀はどのように金融政策を行いどのように問題があるのかということを知った上で、では本人が在任の際にどんな風に変化があったか、改革が行えたのか?ということがわかる。
 資本主義、あんま良くないところいっぱいあるが、もうありとあらゆるものが結びついていて、風が吹けば桶屋が儲かるが常に起きているので、ちゃんと金融政策やらないと人間の生活そのものとかに支障が出るというのは確かにそうだな、ということに納得できたが、では資本主義のこれは嫌だなという部分からシフトしていくのは可能なのか?というとかなり難しい気がしていて、それは政治側がどういう風に、何を規制するかなんだろうけど、規制の具合によっては経済成長しなくて困る、ともなるだろうというので、ん〜〜、それをどうやればいいのか知りたいよ〜〜と思った。これは誰もその手段を思い付いてなくてこうなってるんですよね、たぶんね、って思いはするが、気にはなる(経済学者からしてみれば、脱資本主義って非現実的すぎてちゃんちゃらおかしいな、と思われてそうなのは、この三冊を読んでまぁそりゃそうだな〜と納得した)。

東京都知事選公開討論会
 リハックのやつ。自己紹介聞きながら、ネットにチューニング合わせてきてるなと思ったけどそのほかは前の討論会に近かった。
 小池さんと蓮舫さんはそれぞれしっかり政策を作るための調査などができるバックがある感じがして、何をやるかとか、どこを争点にするかがかなり絞られているというのがよくわかり、この討論会ではかなりバチバチしていた。田母神さんは割と政策は一貫していて(その根拠となるデータの信憑性などについては考える余地があるけど)方向性もわかりやすい感じ。素朴な感じがある。たまにめちゃくちゃ右翼だ……ということを言うのでギョッとする。石丸さんは毎回何を中心に据えているのかというのがぼんやりしていて、この人どういう政治をしたいのかがよくわからん……と割となる。論破、とか、政治のための政治批判とか、経済のスペシャリストだから、とか、教育、とかいろいろ言っているけれど、それらがどういう方向に集約していくのかとか、問題だと思っていることと解決策とがどう結びついてるのかがあんまりわからなくてぼんやりしている印象があった(なんか結構人気あるみたいだけど、正直受け答えは一番微妙だし、一番何をやるのかが不明瞭な感じがある)。

ポリタスTV 東京都知事選挙を徹底解説!|東京都知事選挙の現場を取材する3人が様々な政策を比較しながらどこよりも詳しく解説します。

 動画。まだ途中までしかみられていないんだけど、都知事選に関わらず、選挙をどう考えてどんな心持ちで参加すればいいのかということがいろいろ話されていて面白いのでぜひみてみてほしい(ちょっと長めですが)。たぶん7月5日19:00まだみられるはず……。
 特に、畠山さんがなぜ全候補者を取材するのかという理由なのかという話のあたりが選挙ってどういうことで、選挙する時は投票者はどういうふうに考えるといいのか、という話をしていてすごくよかったです(31分10秒ごろから話しています)。

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