ユーザーを泥棒あつかいした産業は、歴史的に沈んでいった
昨日、noteを運営するピースオブケイク社から、以下のような声明が出ました。
2月13日の文化庁の文化審議会著作権分科会での、ダウンロード違法化に反対する声明です。海賊版対策に、ダウンロードを違法化の対象を超拡大するというのは、害のほうが大きすぎるという意思表明です。
本来なら、こういう政治的なゴタゴタには、スタートアップは近づきたくありません。ですが、noteは「だれもが創作をはじめ、続けられるようにすること」を標榜しています。クリエイターに不利益をもたらしかねない政治的アクションには、しっかりと意見を表明すべきだと考えました。
これはnote設立から続く、CEOである加藤の強い思いでもあります。
著作権法は、基本的には「表現の自由」の限定例外事項にとどめるべきかと思います。なぜなら簡単に拡大解釈できる上に、強すぎる法律だからです。特定の表現を、個人あるいは企業が申請なしに100〜120年も占有できる権利というのは、控えめに言っても強すぎる権利です。
クリエイターにとって大事な権利ではありますが、それ以上にパブリッシャーに大きく利する強権を拡張する行いは、慎重に吟味して行われるべきです。少なくとも、クリエイター視点で拡張されるべきでしょう。
違法漫画コンテンツは確かに問題ですが、その問題の是正は、表現の自由やユーザーの利便性を大きく毀損してまで対応すべきものではありません。優先順位はあくまで表現の自由が先にたつべきです。
以下、個人の雑感
あわせての雑感。コピーコントロールCD、コピペ&右クリック禁止ホームページ、映画泥棒、過剰な楽曲管理、私的録音録画保証金など…
ユーザーを泥棒あつかいしはじめた業界は、大半がそのあとに足並みをそろえて衰退するようにみえます。
歴史を見てみると、既得権益プレイヤーが自らの立場を守るために、過剰な保護政策をとりはじめると、産業や国家は基本的に衰退するようです。これは新しい試みが萎縮したり、新しい試みを行うこと自体が放棄されるようになるためです。多くの場合、イノベーションが封印された国家は、最終的に外敵の侵略をうけて消滅します。
漫画村問題の本質は、テクノロジーの進歩にたいして、現行の法律とビジネスモデルの両方が対応できなかった点です。
この場合、真に行われるべき処置は、
・コンテンツ産業のビジネスモデルをアップデート
・現行法律をテクノロジーの進歩を阻害しない形で修正
・違法サイトの経済合理性・優位性をなくす
です。しかしながら、現在検討されている方式は、
・テクノロジーの進歩を阻害する形で抑止
・ユーザーに不便とリスクを押し付ける
というアプローチ。このような、ユーザーに不利益を押し付ける形での規制は基本的にうまくいきません。 違法コンテンツへの対処そのものは賛成ですが、そのアプローチはテクノロジーやユーザーと寄り添ったものが議論されるべきかと思います。