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「目先の利益に引っ張られる」のお話

新入社員のこばかなさんが、「こばかなスケッチ」という自分企画を頑張っている。THE GUILDでの日々の仕事と、読書で学んだことを、一枚のスケッチにまとめるチャレンジだ。

彼女のスケッチが溜まってきたので、復習とサポートを兼ねて、解説を書いていきたい。第一回はこの絵。


人は目先の利益を優先しやすい

人間は目先の利益を、過大に評価する性質がある。このため、中長期の利益を後回しにし、沢山の人がとても損をしている。宿題をしないで遊んでしまうのも、貯金せずに浪費してしまうのも、だいたいこれが原因だ。

一見すると、その人の心が弱いだけ…に見えるかもしれない。でも実は、「目先の利益に惑わされる」のは、人類の普遍的な性質なのだ。これは、脳の進化に由来する問題だったりする。誰でも多かれ少なかれ、この傾向を持っている。


進化が脳を規定し、脳が行動を規定する

なぜ、人は目先のことに一喜一憂して、中長期の正しい判断ができないだろうか? これは脳の進化の歴史が原因だと思われる。

生命の歴史の大半に置いて、脳の役目は刹那的な情報処理がメインだった。「影が見えたら隠れる」であるとか、「食料があったらとりあえず食べる」とか、そういった判断が生存のためには重要だったのだ。

やがて2万年前に農耕で食料の蓄積が容易となり。4500年前には貨幣が生まれ、財産が抽象化された。1000年ほど前にインドで0が発明される。人類が進化して、経済が生まれ、寿命が伸びてくると、長期プランの重要性は急速に増してきた。

ところが、4億年かけて洗練された「瞬間的判断」の処理系に対し、「長期的判断」の処理系が必要となった期間はあまりに短い。脳の進化の歴史と比べると1%もない。生存のための「瞬間的判断」の回路はまだまだ現役で、21世紀になっても、最優先に処理される思考回路のままなのだ。本来なら合理的判断をしなければならない場面でも、でしゃばってくる。

時代に対して、脳が追いついていないため、色々な問題を起こしているわけだ。


脳のバグ(あるいは仕様)と、どう向かい合うか?

では、僕らはこの性質を、どうデザイン(ハック)に生かせば良いだろうか?

ポジティブなデザインとしては、「未来の利益」を「今の利益」へとリデザインすることが考えられる。ダイエットも貯金も受験勉強も、利益が未来の話なので、現在の誘惑に負けてしまう。

逆に、「未来の漠然とした不安」を手前に、「今の不安」へと変換するデザインもありえる。こちらは、ユーザーを急かすことが可能だろう。受験勉強を継続させるには未来のご褒美(合格)も、罰(落第)では弱すぎる。年度ごとに留年を設けたり、期末ごとに補習のペナルティを作るのは、「未来の不利益」を「今の不利益」に差し替えるデザインだ。理屈の上では、毎週小テストを行ったり、毎日ミッションを与えるのも有効だろう。

一方でこの仕組みを利用した、えげつないデザインも多い。クレジットカードのリボ払いは、支払い(罰)を、先送りして見えなくするデザインだ。月額課金など「契約すれば勝ち」のビジネスで、購入特典やおまけなどをズラズラ並べるのもこれに当たる。いずれも「目先の利益」を大きく見せることで、脳の認知錯誤を狙うハック的なデザインだ。ある程度ならば商売の工夫かもしれないが、度を過ぎたものはやはり改めるべきかなぁと思う。



…というようなことを、打ち合わせに向かうタクシーの中で、こばかなさんに話したりしている。彼女は聞いたことを復習がてら、スケッチにまとめている。

時間があるときに、ボチボチと解説していこうと思います。間違いがあったら、コメント欄でご指摘してください。

よろしくお願いいたします。


いただいたサポートは、コロナでオフィスいけてないので、コロナあけにnoteチームにピザおごったり、サービス設計の参考書籍代にします。