カレードリアの作り方

「カレードリアの作り方を教えて」そんな、唐突なテキストメッセージ。それくらい別にいいけれど、今の時代、たいていのことはスマートフォンで調べられる。それにそんなことはずいぶん昔に別れた女にいちいち連絡することでもないだろう。

「まずはお米を洗い、炊飯器にセットします。その間にカレーを作ります。面倒な時や時間がない時はレトルトでも可。ごはんが炊き上がったら、耐熱皿にごはん、その上にカレーをよそいます。その上からピザ用チーズもしくはとけるチーズを好きなだけのせます。最後にパン粉をまんべんなくかけます。予熱したオーブンに入れて、チーズがとけ、パン粉に焼き色がつくまであたためれば完成です。」

 就職のために一緒に上京した彼と、同じく上京して大学に通うわたしたちは、お互いしか知り合いがいない土地で、生活リズムの違い、友人関係の構築、少しずつ生じるさまざまなズレからいろいろとほんとうによく喧嘩をした。それでも、彼が「カレーが食べたい」と言うのが仲直りの合図だった。

 ふたりとも少食で、市販のカレールーを半分にしても3日間は食べ続けていたと思う。一日目はカレーライス、二日目はカレードリア、三日目は出汁でのばしてカレーうどんにして消費していた。

 カレーでは仲直りができなくなった頃、わたしたちは別れた。

 わたしは大学に通い続け、そのまま東京で就職した。彼は別れてすぐ地元に帰り、さまざまな仕事を経験したのち、結婚したようだった。

 レシピを教えたあと、本当に作ったらしく、写真とともに「お前が作ったカレードリアのほうがうまかったわ」とメッセージが送られてきた。



2020.06.05

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