パンの話

いつもより、ほんの少しはやく家を出た。
仕事場の近くにあるパン屋に行ってみようと決めていた。
スーパーの角にあるパン屋とか、駅ビルの中に入っているチェーンのパン屋ではなくて、路面店の、町のパン屋。
駅から仕事場とは違う方向に歩いた。

初めての道だった。事前にスマホで地図を確認していたけれど、まっすぐの道はなかなか距離があって、道が合っているのか不安になった。
途中、お豆腐屋さんがあった。そば屋もあった。
とんかつ屋の向かいにパン屋があった。

前を歩いていた女性もそのパン屋に入っていったので、少しだけ気まずかった。
大きな窓があって、パンが並んでいるのが見える。三人くらいお客さんが入ったらいっぱいになるくらいの広さのお店だった。

消毒をして、トングとトレイを取った。
もう売り切れのパンもたくさんあって、メロンパンとか、パンドミとか、札だけがすみっこに並べてあった。

くるみあんぱんに決めた。
くるみも好きだし、あんこも好きだから。
こういうパン屋に来ると、ひとつしか買わないのっていいのかなって気持ちに少しなってしまう。ならない?
キャラクターの顔の少しちいさいパンが、4個詰め合わせで売られていて、かわいかった。

お会計をしてもらうのを待っていたら、先の女性が冷蔵庫からひとつ取っていた。
バナナオムレット。スポンジがぱんぱんにラップでくるまれている。

わたしはくるみあんぱんとバナナオムレットを買った。


仕事場のほうに向かって歩いていると、公園があった。
濃いピンク色の八重桜がぽんぽん咲いていて、きれいだった。
なんというか、やわらかい空間で、ここでパンを食べて行きたかったけれど、そこまでの時間はなかったので、少し座って水筒のお茶を飲んだ。
絵本の忘れ物があった。



2021.04.07

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