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そこは出口のない世界
「無造作に丸まった下着を広げるとき、わたしは一瞬、ここへ来たことを後悔する。きのうまでハトロン紙にくるまれ、壊れやすいお菓子のように丁寧に箱におさめられていた絹の下着が、まだ二、三時間しか着ていないというのに、もう腐敗しかけた残飯になってしまった気がする。」
逢引の前に図書館で、寄生虫図鑑を眺める。
わたしも寄生虫になって、彼の中をさ迷えたら、そこは出口のない世界。
ねえ知ってる?寄生虫って、生まれた時は目はついているけれど、宿主となる魚を見つけてくっついてしまえば目玉は捨てるんですって。
わたしもあなたにくっついていられるなら、
刺繍する少女 図鑑 /小川洋子
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