卒業記念作品は痛かった
もうウン十年も前の事なりますが、卒業記念制作品の話をしましょうか。
私の通っていた中学は、公立でごくごく一般的な田舎の中学だ。
日常の通学はジャージ登校。
毎月第1月曜日は全校集会のため制服。
他は終業式や卒業式などという式典関係と定期テストも制服。
だから基本はジャージで、どの授業を受けるのもジャージだ。
そんな私たちの学校の卒業制作は、年度によって違っていた。
その年々の美術教員が提案し、生徒が作る。
私たちの年は「木製モザイク画」だった。
10×10の正方形、厚さは1.5センチほどだっただろうか。
これが1人1枚配られ、それを好きにデザインし、更にそれを組み合わせて1枚の画を完成させるというものだった。
まずは授業中に下書きと輪郭を彫る作業。
残りは冬休みを使って仕上げてこいというものだった。
私の場合、デザインはすぐに決まった。
だが彫刻刀を使って彫る作業がそれはそれは難儀した…
厚さが1.5センチもあるから、深めに彫ったら陰影がついて面白い作品になるんじゃないだろうか。
そう思い彫り始めたのだが、考えが甘かった。
そもそも私は不器用なのである。
だから想像通りには仕上がるはずもなく…
そう、元来飽き性でもある私は、上手く進まない作業に嫌気がさしてきて、ついテレビを見始めてしまったのだ。
テレビを見ながら左手でしっかりと木を支えて、右手は彫刻刀を持って深く彫る…
彫る…
彫……
ざくっ!
そう…テレビの画面を見たまま作業を続けた私は、彫刻刀を支えていた左手の人差し指にざっくりと差し込んでしまったのだ。
深く彫ろうと思っていたから、それはそれは結構な力が入っていましてね。
今でも痕が残っています。
けれどどうにかその作品を仕上げて提出したものがこちら。
私の作った物は、中央の青のグラデーションに塗られた物です。
周りの作品を見ればお分かりだろうが、この作品は色を付けても付けなくても、製作者の自由だった。
私も当初は色は塗らないつもりだった。
むしろニスを何度も塗り、その味を作品にしようと思っていた。
だが彫刻刀を指にさした時に大量の血液が出て、それが木についてしまい落ちなかったのだ…
仕方なしに着色したわけだが、結果的には気に入る出来となり自信満々に提出した覚えがある。
今思えば、雑さは否めないが、思い出なのだ。
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