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我が家の移住物語3 ~ 地域面談

見た瞬間に『ビビビっ』と来る物件に出会った我が家、さあ!いよいよ『地域面談』です!

『地域面談』とは

地域と入居希望者とのより良い関係を築くために地域で実施される面談』、それが『地域面談』です。

豊田市の空き家情報バンクに登録されている物件には、『申込受付期間』が設定されており、登録物件に入居を希望する場合は、申込受付期間内に『希望物件申込』をする必要があることは、前回の投稿『我が家の移住物語2 ~ 物件に出会うまで』でも書きました。

空き家情報バンク利用希望物件申込書』に必要事項を記入、物件の所在する支所窓口に申込という言わばエントリーシート、それが『希望物件申込』です。

申込受付期間内に『希望物件申込』があった物件は、申込受付期間締切後約1カ月ほどで『地域面談』が実施されます。

『地域面談』は入居希望者、大家さん、地域住民(自治区長など)の三者で行われます。
内容的には面談というよりは面接です。

ちなみに、空き家情報バンクに掲載されている物件への入居は、先着順ではありません
申込受付期間内に複数の希望物件申込があった場合、『地域面談』で選抜されます。
もちろん、申込受付期間内に希望物件申込が1件しかなかった場合も、『地域面談』は実施されます。

この『地域面談』、希望物件申込が1件しかなかった場合でも、「この入居希望者はこの地域では一緒に暮らしていけない」と地域に判断されると情け容赦なく落とされます

つまり、物件が見つかったから一安心ではなく、『地域面談』をクリアして初めて一安心となります。

我が家が暮らす集落の『地域面談』

我が家が暮らす集落は、『僕が暮らす田舎』でも書いていますが、豊田市中山間部の旭地区にある約30世帯ほどの集落になります。

我が家が暮らすこの集落は、旭地区の他の集落と比較するとちょっと特殊です。
どう特殊なのか、それは約30世帯の内10世帯がIターン世帯、つまりは移住してきた世帯というところです。
豊田市の空き家情報バンク等を活用して2010年度から2019年度末まで豊田市中山間部に移住した世帯数178世帯旭地区そのうちの70世帯が移住しています。
旭地区には35集落があります。
そのうちの1つの集落に、豊田市中山間部への移住世帯の5.6%がいるのですから、我が家が暮らす集落がいかに移住者の多い集落であるかは分かると思います。

こんなにも移住者が多いのには理由があります。
我が家が暮らす集落には、豊田市中山間地域の定住促進の旗振り役とも言える人が暮らしているからです。
この人を無くして豊田市の中山間地域定住促進は成し得ないと言えるレベルで、定住促進に心血を注いでいる人です。
事前に耳にしていたこの人の評判は『厳しい』でした。
そして、そんな人がいる集落ですから、我が家が暮らす集落は、『豊田市中山間地域にあるどの集落よりも、地域面談が厳しい集落』と噂されていました。

我が家の『地域面談』

申込期間が締め切られて少し経ってから、我が家の『地域面談』の日程の連絡が来ました。
日程は何日かの候補が示され、そこから希望日を選択することができます。
その結果、我が家の『地域面談』は2018年8月29日となりました。
またこの時、我が家が希望物件申込をした物件は、幸いなことに他に希望物件申込をした人は現れなかったことを聞きました。
当該物件に係る『地域面談』は我が家だけが対象となるということです。
『地域面談』まで日にちがありましたので、我が家は可能な限りのコネクションを駆使して、地域面談対策を講じました。
講じたと言っても、先輩移住者に話を聞いたりして、移住の心構え的なことを聞くぐらいしかできることはなかったわけですが。
また、『地域面談』までの間に、地域の中学校の見学会がありましたから、それに参加もしました。

我が家の『地域面談』当日

2018年8月29日、集落の公民館で我が家の『地域面談』が開催されました。
この日は平日でしたので、午後から半休を取得しました。
入居希望者、大家さん、地域住民(自治区長など)の三者で行われる『地域面談』ですが、我が家の『地域面談』に集まった人数は、我が家も含めて記憶にある限りで15人
入居希望者として我が家(当時4人)、大家さんご兄弟(2人)、支所の定住促進担当、仲介業者、地域住民として自治会長、自治会名誉顧問、自治区の定住促進担当、集落の定住促進担当、我が家が希望申込した物件のはす向かいに暮らす移住者ご夫婦、移住者ながらも村社の氏子総代を務める方と、支所の定住促進担当曰く「こんなに『地域面談』に人が集まった記憶はない(笑)」という人数でした。
先述の「豊田市中山間地域の定住促進の旗振り役とも言える人」は、この時は『集落の定住促進担当』として『地域面談』に参加していました。

『地域面談』では、家族構成職業などから始まり、定住の動機などを聞かれます。
詳細については省きます。
詳細を聞きたい人もいるでしょうが、この投稿は『地域面談の傾向と対策』ではありませんから。
ただ、その入居希望者の定住に対する本気度は試されます
豊田市中山間地域が求めているのは、移住者ではなく、定住者だからです。

『我が家の移住物語』と題した投稿をしておいてなんですが、『移住』と『定住』は『似て異なる言葉』です。
僕が『移住物語』と題したのは、その方が意味の通りが良いと思ったからです。
移住』とは「よその土地にうつり住むこと。」であり、『定住』とは「ある場所に住いを定めて居つくこと。」です。
ある場所に住いを定めて居つくこと。」ということは、「その場所を『終の棲家』とする」ということです。
この地域は、腰掛の移住者は求めていません
この地域は、「その場所を『終の棲家』とする」そんな覚悟を決めた定住者を求めています。
その覚悟を問われるのが『地域面談』です。

『我が家の移住物語2 ~物件に出会うまで』にも『定住するなら覚悟を決めろ』と書いたのは、そういう理由です。

入居希望者を大家さんや集落の定住促進担当だけで面談するのではなく、集落の自治会長や隣家の人まで参加して面談するのにも理由があります
その移住者を集落が受け入れるということは、集落がその移住者がしっかり定住できるようバックアップするということです。
この面談は、集落が集落としてこの入居希望者の定住をバックアップするという覚悟を決める場でもあるわけです。
そのためには、集落の人間が、その目と耳で、入居希望者をしっかりと見定める必要があるわけです。

覚悟覚悟とかなり重い感じになりましたが、ここまでの覚悟を求めない地域もあるのでしょう。
ただ、僕は他の田舎に移住したことはありませんので、他の地域の事について語れることはありません。
僕が語れるのは僕の実体験のみです。
僕は、今回の定住体験で、『地域面談』とは定住希望者と定住先の集落の双方が覚悟を決めるための場であると感じました。

『地域面談』では、こちらから地域行事や自治会費など、自分たちが疑問に思っていることを質問することももちろんできます。

我が家が『地域面談』を受けた感想は、「想像していたよりも簡単だった」というものです。

『豊田市中山間地域にあるどの集落よりも、地域面談が厳しい集落』

と噂される集落ですが、面談で質問された内容はどれも質問されて当たり前の内容ばかりでした。
むしろ、それらの質問に答えられない入居希望者は、明らかに準備不足というレベルです。
我が家の場合、他の入居希望者がいなかったため、他の入居希望者を意識した自己PRをする必要がなかったというのもあるかもしれませんが……
ちなみに、他に入居希望者がいた場合面談は個々で別々ではなく、集団面接もとい集団面談になるそうです。

面談に参加した集落の方からは「100点満点の世帯」「断る理由を探す方が難しい」なんて声もありました。
大家さんからは「明日から住んで良いと言ってるんだし、うちがこの家族で良いと言ってるから良いじゃないか。」と援護射撃が入りました。
面談の手応えは抜群です。
『100点満点の世帯』とは、おそらく我が家が「仕事が倒産しにくい業種かつ転勤がない」「子育て世帯で入居時には子どもが3人」「子どもが小学校&子ども園世代」「刈払機を使った草刈り作業の経験あり」と、少子高齢化に悩む中山間地域としてもっとも定住して欲しい世帯像であることを表現したものだと思っています。
もちろん、『子育て世帯』でなければ定住できないわけではありません
うちの集落に定住した世帯は、単身世帯もあれば定年後の老夫婦の世帯もあります
ただ、子育て世帯の方が面談の際に有利には働くと思います。

『地域面談』が終わると、参加した地域の皆さんは討議に入ります。
そこで、我が家の定住を許可するかどうかの話し合いが行われるわけです。
結果は後日、支所から連絡が来るということで、我が家は面談が終わった時点でその日は帰宅しました。

『地域面談』の結果

面談の翌日、2018年8月30日に支所の定住促進担当から連絡がありました。
面談の結果は、満場一致で合格
入居交渉権獲得です。
合格通知は書面を郵送でも送付してくれます。

ええ、そうです。
入居交渉権獲得です。

ええ、そうです。
合格で獲得できるのは入居交渉権で、入居権ではありません。
これから、入居交渉というフェーズに入ります。
プロ野球のドラフト会議みたいなもんです。

入居交渉については仲介業者がフォローしてくれるとのことで、ここでこの案件は支所の手を離れ、仲介業者の手に渡るわけです。
仲介業者からは後日今後のフローについて連絡があるとのことで、とりあえずは仲介業者からの連絡待ちとなります。

大家さんが「明日から住んで良い」って言ったって書いてるのに入居交渉なんているの?という話ですが、我が家は値下げ等は求めていませんが、今回の家は『農地転用』しないと売買できない条件なのです。
そういった手続きを含めて『入居交渉』となります。

なぜ『農地転用』が必要だったのか

豊田市の空き家情報バンクを活用して定住すると、特例として農家資格を有していなくても1000㎡までの農地を物件取得と同時に行うことができます
逆に言えば、1000㎡を超える農地は取得できないわけです。
我が家が入居交渉権を獲得した物件に隣接する農地は994㎡特例で取得できる面積ギリギリなのですが、その農地とは別に無断転用されて駐車場+一部建屋が建ってしまっている農地がありまして……その面積が254㎡ありましたので、この部分を『農地転用』しないと売買契約が締結できないというわけです。
これ、「田舎の物件あるある」だそうです。

リノベーションのことも進めないとね

入居交渉と並行して、物件のリノベーション計画も進めないといけません。
我が家が転居を目指すのは2019年3月末、この時既に2018年9月ということで、転居まで残された時間は半年しかありません。
我が家は国産木材、しかも可能な限り地元に近いもの、理想は豊田市産木材を使用したリノベーションを構想していたので、それに応えてくれる工務店を探す必要があります。

この時点で候補に上がった工務店は2店、1店は豊田市産木材の流通コーディネートをするウッディーラー豊田さんに紹介してもらった工務店です。

ウッディーラー豊田さんに紹介してもらった工務店は、打ち合わせの結果「納期的に請けられない」ということで断念しました。

もう1店は当時は豊田市産の木材の取扱いはなかったものの新城市産の木材の取扱いがあり、『農家民宿ちんちゃん亭』から紹介してもらった『有吉住宅』さんです。

有吉住宅さんは「納期的には非常に厳しいが、何とかしてみます」と請けてくれました。

この2店との打ち合わせはどちらも2018年9月8日でした。
入居交渉権獲得から僅か10日で、我が家はリノベーションを担当する工務店を決定したのです。
もう本当にそれぐらいギリギリのタイミングだったのです。

この時点では入居交渉権も獲得し、工務店も決まったことで一安心していたのですが……この後にまだハードルが残っているとは……その話はまた次回ということで……


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