誤解だらけの「高配当株投資」

※注意書き
このnoteは、投資について世間一般で言われていることの中で現役のトレーダーの視点から見て「それってどうなのよ?」と思ったことに対してツッコミを入れていくものになります。
故にこのnoteに書いてある内容は、ツッコミ対象になったことを既にやっている人からすれば「なんだコイツは?現役のトレーダーだか何だか知らないが、そんなどこの馬の骨だか知らない奴が言っていることよりも、それなりの知名度や肩書きがある人が言っていることの方が正しいに決まってるじゃないか!」という、いわゆる「認知的不協和」を引き起こす可能性が非常に高いものとなっていると思われます。
ですが、個人的には「マトモな投資の意思決定」には「感情は脇に置いておいて、リスクとリターンに真正面から向き合うこと」が必須だと考えているので、どれだけディスられようが受け入れられなかろうが、「それってどうなのよ?」と思うことを事実に即してつらつらと書いていくつもりです。
ちなみに上記のような判断をする人に対しては「言われている内容の良し悪しを『知名度』や『肩書き』でしか判断できない奴が、その内容の良し悪しをマトモに判断できてるワケないだろ」と思っているのはヒミツです。


今回のお題は「高配当株投資」についてです。
最近巷では「高配当株投資」が「安定した不労所得」といった形で取り沙汰されているようですが、個人的にはそういった認識は間違っていると考えているのでその理由をつらつらと書き綴っていきたいと思います。


「高配当株投資」とは何か?

そもそも「高配当株投資」とは、配当利回り(=配当÷株価)が高い銘柄に投資をすることによって配当による収益獲得を狙う投資方法のことです。
例えば「年間配当利回り=3%」の銘柄があったとしてその銘柄に1,000万円を投資したら、年間の配当金は30万円(=1,000万円×3%)ということになります。
上記のように「年間30万円の配当金」であれば世間一般で言われているような「安定した不労所得」とは程遠いものになりますが、もし投資元本が1,000万円ではなく1億円だとしたら、年間の配当金は300万円(=1億円×3%)ということになるので、ゼータクをしなければそれだけで最低限生活していけることになりますし、「年間配当利回り=3%」ではなく「年間配当利回り=5%」だった場合には年に数回はゼータクが出来るという感じになります。
なので最近流行っている「FIRE(Financial Independence Retire Early)」に憧れる人たちは、現状で比較的配当が高い銘柄だったり今後増配するであろう銘柄を保有することによって得られるその配当金で生活を成り立たせようとしているというワケです。


「高配当株投資」の問題点とは何か?


とまあ昨今流行っている「FIREムーブメント」が追い風となりすっかり人気の投資法となっている「高配当株投資」ですが、それをやっているほとんどの人がおそらく気付いていないであろう大きな問題点が一つあると思っています。
それは「配当を出すと、その出した配当と同じだけその銘柄の株価は下落する」ということです。
具体的には「権利付き最終日→権利落ち日」にかけて、出した配当と同じだけ株価は下落するんですが、これは一般的に言うところの「配当落ち」というやつになります。
これが意味するところは「配当とは、保有株式の一部を売却するのと変わらない」ということです。
どういうことだかを例を出して説明しましょう。仮にあなたの資産の状況が以下のようなものだったとします。

保有株数:10,000株
株価:10,000円
保有銘柄の評価金額:1億円(=10,000株×10,000円)
一株あたり年間配当金:500円
年間配当金:500万円(=10,000株×500円)
年間配当利回り:5%(=500万円÷1億円)
配当回数:年1回

この銘柄を「権利付き最終日」までに買っておけば「一株あたり500円の配当金」がもらえることになります。
しかし問題は「権利付き最終日→権利落ち日にかけて、この銘柄の株価は500円下落する」ということです。
話をわかりやすくするために、仮にこの銘柄の株価が権利付き最終日まで全く動かなくて「一株あたり500円の配当金」を出した場合の「権利付き最終日→権利落ち日」にかけての資産の状況は以下のように推移します。

【権利付き最終日時点の資産の状況】
保有株数:10,000株
株価:10,000円
保有銘柄の評価金額:1億円(=10,000株×10,000円)

【権利落ち日時点の資産の状況】
保有株数:10,000株
株価:9,500円(=10,000円-500円)
保有銘柄の評価金額:9,500万円(=10,000株×9,500円)

これを見て最初に疑問に思うことは「500万円は一体どこに行った?」ということだと思うんですが、安心して下さい。
その500万円は配当金として、配当支払日にはあなたの銀行口座に振り込まれることになっています。
つまりは「権利付き最終日→権利落ち日」にかけて、確かに「一株あたり500円の配当金」をもらう権利は獲得できてはいるのですが、その一方で配当落ちに伴う株価の下落により保有銘柄の評価金額は獲得した配当の分だけ下がっているので、最終的な収支はトントンということになるワケです。
先に述べた「配当とは、保有株式の一部を売却するのと変わらない」というのはこれが理由でして、要はこの銘柄が配当を出さなかったとしたら配当落ちに伴う株価の下落は発生しないので、そうであれば保有株10,000株のうち500株を10,000円で売却すればあなたの銀行口座には500万円のキャッシュが入ってくることになるということです。(ただし、保有銘柄の評価金額は9,500万円になります)
このように、配当は配当落ちがあるために資産を増加させる要因とはなっておらず、「保有株式の一部を自動的に売却して銀行口座に移し替えること」に過ぎないので、株式投資において「配当の獲得」は実質的には利益とは言えないのです。
では「配当の獲得」が利益とは言えないのであれば、株式投資で利益を出すには何が必要でしょうか?
答えは簡単で「値上がり益(キャピタルゲイン)の獲得」です。
というか株式投資において「配当の獲得」が利益とは言えないのであれば、むしろ株式投資で利益を出す方法は「値上がり益(キャピタルゲイン)の獲得」しかないと思います。
なので投資をするにあたっては、配当目当てで投資してもどうせ配当落ちで配当と同じ分だけ株価が下がって意味がないので、そんなことをするのであればハナから値上がり益を狙える銘柄に投資をする方がベターということになります。
今まで「配当狙いの投資がいかに意味がないか?」についてくどくどと説明してきましたが、それでも「どうしても配当が欲しい!」という人がいたらば、その方にオススメなのが「欲しい時期に欲しい金額分だけ保有株を売却すること」になります。(どちらにしても意味がないけど)
いかがでしたでしょうか?
おそらく既に「配当狙いの投資」を行っている人の中には最初の注意書きで書いた通り「認知的不協和」が発生している人もいるでしょうが、残念ながらこれがマーケットにおける現実になります。
しかし「マトモな投資の意思決定」を下していく上で重要なのは、そういった認知的不協和が発生しようが何だろうが、今まで自分が持っていた情報と新しい情報を出来るだけフラットに見比べて、より蓋然性が高い方を選択していくことだと思うので、もし自分の投資の意思決定をよりマトモにしていきたいと思うのであれば、一度冷静になって今回のことについて考えてみることをオススメします。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。


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