荒井先生

従業員が安心して副業申請をおこなうための管理部門のスタンスとは

2018年1月、厚生労働省は「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を作成し、公表しました。

これにより、副業・兼業についての理解も進み、また、企業からも労働者からも具体的な関心が寄せられていることを感じています。

筆者のもとにも、実際に副業・兼業の解禁について検討をおこなっている企業からのご相談が増えています。

【副業についての手続きは4タイプ】
さて、この際、企業のスタンスとしては大きく4つに分かれているように感じます。

すなわち、
①解禁したことは社内では公にはしないものの、具体的な相談があれば検討のうえ個別に許可をおこなうもの。
②解禁はしたものの、許可基準は明らかにせず、運用において調整するもの。
③届出制として、副業・兼業の事実自体は把握するのの、特段の事情がない限り禁止しないもの。
④届出も要求せず、副業・兼業の事実も把握していないもの。

どのアプローチをとるかについては企業の考えによってきますが、副業・兼業を促進したいと考える企業で、かつ、リスクについてもコントロールをしたいと考えるのであれば、現状においては③のアプローチが理想と言えるように思います。この点、同じく多くの企業で検討されている②の事前許可制との比較でご説明します。

【許可制の問題点】
そもそも、法的には、会社が、副業を一律に禁止することや、合理的な理由なく副業を許可しないことは禁止されています。裁判例でも、会社が合理的な理由がないのに副業・兼業の許可をしなかった事例で、損害賠償を認めた事案があります。

就業時間外は本来労働者の自由であるというのは確立した考え方であり、就業時間外の活動である副業・兼業が禁止できるのはごく例外的・限定的な場合だけといえます。

したがって、「事前許可制」と言えども、実際には副業・兼業の許可を与えないことが法的に認められる事案は必ずしも多くないといえます。
さらに、許可基準が明確に示されていなければ、労働者は自分の申請が認められるか否か疑心暗鬼となり、申請を躊躇する可能性があります。
その場合、その労働者がどうしても副業・兼業をしたいと考えた場合、会社に許可申請をしないまま黙って副業・兼業を始めてしまう可能性もあります(いわゆる「伏業」)。
これでは、副業・兼業を把握し、コントロールさせたいという目的でとった許可制の意味がありません。

【届出制のメリット】
これに比して、届出制の場合、「届出」は文字通り、ただの情報共有に過ぎないと意味ですので、副業・兼業については労働者の自由となります。当然、会社が届けられた副業・兼業を認めない、ということはできない、というか想定されていません。

他方、会社の事業に競業するような副業・兼業は許されませんので、そうした例外的な場合については、副業・兼業は認めない、ということが可能となります。厚生労働省のモデル就業規則はこの届出制を採用しています。具体的には、以下のような規定となっています。

第67条 労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる。
2.労働者は、前項の業務に従事するにあたっては、事前に、会社に所定の届出を行うものとする。
3.第1項の業務に従事することにより、次の各号のいずれかに該当する場合には、会社は、これを禁止又は制限することができる。
1 労務提供上の支障がある場合
2 企業秘密が漏洩する場合
3 会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合
4 競業により、企業の利益を害する場合

このような規定であれば、労働者は安心して副業・兼業を報告することができ、副業・兼業が促進されるとともに、会社にとっても実態の把握が容易となります。

また、もし競業が懸念される副業・兼業が報告された場合は、労働者と協議の上、例外的に禁止または制限することが可能となります。

 なお、副業・兼業を原則的に自由にする、という場合であっても、労働者には、守秘義務や健康の管理など、しっかりと意識して守ってもらうべき留意点もあります。こうした留意点について書面で確認をしてもらうことも意義が大きいと思います。
 以下はそのような確認書の例です。

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【まとめ】
以上の通り、副業・兼業を促進しつつリスクをコントロールするという目的からは、届出制が望ましいといえます。また、会社の方針として事前許可制にする場合であっても、せめて、許可基準を明確にしておき、透明性を担保しておくことが考えられます。

▼筆者プロフィール
荒井太一(森・濱田松本法律事務所Webページ) 


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