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雪崩に関して思うこと

昨年に引き続きプライベート雪崩講習会に参加させていただくことができた。
参加者は昨年とほぼ同じメンバー12名。
今回はゲレンデ内ではなく、実際にBC装備で山に入って行った。



内容はチームごとに行うビーコン捜索、斜面深くに埋没した人を効率よく掘り出すための技術「スノーコンベアベルトシャベリング」の練習、さらに雪の埋没体験や、ピットの掘り方と積雪観察の仕方など、盛りだくさん。

ビーコン捜索では、実際に発信モードになっているビーコンが入ったバッグを雪の中に埋め、それを探し出す。
思い切って私も6名グループのリーダー役に名乗り出て、本番さながらに頑張ってみた。

ビーコン捜索中の別グループ

私がリーダーを務めた時のシナリオは、付近にいた別グループから、仲間の3名が雪崩に遭遇したと助けを求められ、捜索を代わりに行うというものだ。

まずそのグループに「どのあたりに、何人が巻き込まれたか?」を確認する。
巻き込まれた人がビーコンを持っていたかも重要な確認事項だ。
「わかりました!それでは私たちが捜索をしますので、皆さんはご自身のビーコンのスイッチをすぐに切ってください!」と私は言う。

次に仲間のうち3名をビーコン捜索係に決め、雪崩の走路を三等分するような感じで、ある程度距離を空けてスタートするよう指示し、すぐに捜索を始めてもらった。

次に残りの2名をシャベル&プローブ担当とし、そのうち一名に救助要請をお願いした。
またもう一名には、二次雪崩の恐れがないか周囲を警戒してもらうよう伝えた。
サーチを行う人には数字を大きな声で読み上げてもらうようにする。
サーチ係以外の3名はビーコンをオフにした。
(私のアルバはサーチモードと送信モードの切り替え部分が甘く、動いているうちに送信モードになってしまうことがあるので、サーチを担当する時以外は切ろうと思う)

ザックは背負ったままスキーも履いたまま、私もシャベルを斜めに担いでプローブ片手に1人目が見つかりそうな場所へと移動した。
1人目は割とすぐに見つかった。
大きな声で「(救助者の)ビーコンのスイッチを切ってください!」と言う。
自分が大声で言えば大抵相手もつられて「はい!切りました!」と大声で返してくれるものだ。
「1人目発見!ビーコン切りました!」
すぐに他のメンバーにも伝わるようもう一度叫ぶ。

そうやって全体に状況がわかるように逐一大声に出す。
これが本当に大事。
ビーコン係の人は数字を常に大声で読み続けること。これもとても大事。

2人目の位置がほぼ確定されたところで、すかさず自分の持っていたプローブを突き立てた。
2人目も無事見つかりビーコンを切り、3人目の捜索へ。

ところが3人目のビーコンの電波を誰も拾うことができない。
なんと埋めた人のうっかりミスで、電源を入れ忘れてしまったらしい。
でも、こういうことは実際にはあり得る話だ。
ビーコンのスイッチを入れ忘れていたり、そもそも持っていない可能性もある。

すぐに捜索を見守っていた別グループに「プローブを出してしてくださ〜い!」と声をかけて、総動員でプロービングすることになった。
その先は私もどうして良いかわからず、講師が全て指示を出した。

全員一列に肩が触れ合うほどくっついて並び、右!真ん中!左!と順にプローブを自分の前の3箇所に突き立てていく。
3箇所突いたら全員揃って一歩前へ。
また3箇所突いて一歩前進。
これを繰り返す。
偶然のミスにより、急遽プロービングでの大捜索となったが、ビーコンを装着していない埋没者を見つける困難さがよくわかる貴重な経験ができた。

ビーコン捜索やシャベリングではもたついてしまった私だけれど、リーダー役では褒められてすごく嬉しかった。
意外と全体を見渡し指示を出す方が向いているのかもしれない。
いざという時は私が率先して指示を出していこう。

余った時間で1人で掘ったピット。所用時間約10分でそれなりの角柱を作れた。実践ではこれで十分か。


一緒に行った仲間が、万が一雪崩に巻き込まれたら全力で助けられるよう、こうして毎年学んでいるわけだけど、当然私は私自身を助けることが出来ない。

やっぱり一番大切なのは「雪崩に遭わない」
これに尽きると思う。

積雪構造や気象推移や風向きや地形や、実際歩いた感触等様々な判断材料から、かなりリスクの回避はできるように思う。
これからも捜索だけに固執せず、さまざまな角度から学び続けたい。


雪崩は本当に身近な脅威だ。

これまで何度もいろんなところでこの話をしているけれど、こんなサンデーハイカーのような私の周りにも雪崩に遭遇している知人友人が多くいる。
山のパートナーを雪崩で亡くした友人もいる。

雪崩死亡者の割合は、滑走者と登山者がほぼ5:5なので、登山だから無関係という空気はただの楽観視に過ぎない。
実際ビーコンを持たない登山者が、数珠繋ぎで斜面を登り、一度に複数人が流されるという事例も過去に起きているのだ。

登山であろうと、滑走であろうと、雪崩は人を選ばないし容赦をしない。
山に入る以上、雪崩リスクは誰にでも等しくあるのだという意識を全員が持つべきだろう。

また、ビーコンを持っているから大丈夫、という謎の過信?もよく目にするのだけれど、それも私は全く納得しない。
確かに、自分が埋まった時は仲間に運良く探して貰えるかもしれない。
けれど、仲間が埋まったらどうするの?
もし自分の勉強不足で救えない命があったら、一生大きな十字架を背負って生きていく覚悟があるのだろうか?(私にはない)

ビーコンはお守りではないのだ。
使いこなせなければ持っている意味がない。

訓練に参加をすると、生死の分かれ道と言われる15分での捜索がどれほど困難であるかよくわかる。
それに、今回の訓練のように、見つけたらハイ終わり!ではない。
そこから心肺蘇生だったり低体温症や怪我の処置など、やらなければならないことは山ほどあり、無数のパターンに対応して動かなければならない。
人の命がかかった一刻を争う状況で、ベストな判断と行動をし続けることがどれほど難しいか、誰でも想像がつくだろう。

だから毎年訓練を重ね、いざという時に素早く確実に動ける自分を目指したい。
どんな状況でも悔いの残らない行動を取れる自分になりたい。

いや、でもやっぱり
そもそも雪崩に遭ってはならないのだ。

雪崩事例を読んでいると、これは回避できたのではと思うことがよくある。
雪崩に遭うのは結局運だと言う人もいるけれど、私は99%ヒューマンエラーだと思っている。
というか断言してもいい。

雪崩を発生させた時点で、どこかで必ず判断ミスがあったはずなのだ。
そう言う私も、過去にヒヤリハットを何度か経験していて、今それらを振り返ると本当に恥ずかしいし、情けない。

山は怖い。

知れば知るほど怖いところだと私は思う。
登山をはじめて10年が経過した今、それを痛切に感じている。
どんな時でも回りに流されずNOと言える自分でありたいし、それを理解してくれる仲間とこれからは雪山を楽しみたい。


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