自分は自分の物差しで測る
私はいつも悲劇のヒロインになろうとした。すごく大変です、苦労してます、努力してます。そうアピールして、「大変だね」「がんばってるね」「すごいよ」そう誰かに言ってもらうことを望んだ。
そうしないと、自分を認めてあげられなかった。
いつもの思考パターン
大学生のときのこと。研究室に入り、なかなかきついプロジェクトに関わることになった。スケジュールが厳しく、短期間でそれなりの結果を求められた。事実、いわゆる「できる人」ではなかった私には、荷が重かった。
当時の私は全てのことにおいて
「みんなみたいにはなれない」と思っていた。
「なんで私はできないんだろう」
「私以外の誰かならできたのに、私が選ばれたから迷惑をかけている」
という思考で埋め尽くされていた。ただただ辛い辛いと泣くだけの日々だった。
限界をむかえた
そんな思考回路にも、あるとき限界が来た。自分を責める思いが膨れ上がって、泣き崩れてしまった。
なんとか彼に助けを求めた。彼は私の期待通り「十分がんばってるよ」と言ってくれた。私は、誰かにそういう言葉をかけられることを望んでいたし、そういう言葉しか受け入れようとしていなかった。
でも彼は「もう自分を責めるのはやめよう」とも言った。意に反した言葉をかけられて、「そうじゃない!」「私を認めて!」と不満に思ってしまう私がいた。
このままでは身が持たない、は変化のサイン
この時点で私には、残り2年の研究生活がまっていた。学校を辞める勇気もなかった私は、だんだん「こんな毎日では身が持たない」と感じるようになった。
辞めたからといって、結局自分が変わらないと別の場所でまた同じことを繰り返すかもしれない。それが怖かった。だったら自分を変えるしかない、そう思った。
それからまず私は、自分にできることをやろうと思うようになった。
しかしまだ「みんなと頭の作りが違う」と思い込んでいた私は、言葉通り「今の自分ができること」だけしかやろうとしなかった。
みんな努力していた
さすがに「どうしたら現状を変えられるか」と考えるようになった私は、だんだん周りの人に目を向けるようになった。
(みんなどうやって研究を進めているんだろう。あれ、あのAくんにも分からないことがあるんだ。そっか、そういうときは一つずつ調べてやってみて失敗して、を繰り返してるのか。あれ、滞りなく進んでると思ったBくんも、いろんな課題を解決してきたんだな。)
(あれ、みんなの現状は最初からあったものじゃなくて、努力してるから出来上がったものなんだ。あれ、私は…?)
たしかにAくんやBくんと私とでは、持っている知識や身につけている能力が違う。それは事実だ。
でもそれが何だっていうんだ?私は私にできることを、しようとしてきたか?
恥ずかしくなった
できないできないと嘆き、私はみんなとは違うと思い込み、あの人はいいよなと羨んでいるだけ。だんだん恥ずかしくなってきた。
私はできないことをしようとしたか?頭を使ったか?手を動かしたか?失敗してきたか?
私は何も動いていなかった。自分を責めて、嫌うことで、行動することから逃げていた。
自分に意識を向ける
自然と、意識が自分に向き始めた。
他人、すなわち自分にないものばかり見て「なぜできないんだろう?」と変わらない現状にとどまり続けるのではなく、
今、そして未来の自分自身を見て「どうしたらできるようになるんだろう?」と考えるようになった。
自分は他人にはなれない。いくら羨んでも自分は一生、自分にしかなれない。つまり誰かと比べて嘆くだけの時間からは、何も生まれない。
叶いもしないことをうだうだ言ってる時間に、少しでも行動した方がよくない?と思うようになってきた。
自分の物差しで測る
高校の部活の顧問が「自分の物差しで他人をはかるな」とよく言っていた。つまり、他人のものさしで自分を測るな、と言うことでもある。
物差しは、一人ひとり違う。価値観や基準、その目盛りは様々だ。
誰かには簡単にできて、自分にはできないこと。またはその逆も、たくさんある。
誰かの物差しで自分をはかっているうちは、いつまでもぴったり当てはまることがない。いつまでも満たされることはない。
自分を測ることができるのは、自分の物差しだけだ。
誰に何と思われようと、自分は自分で測るべきだ。
それから
こんなふうに考えられるようになった頃は、すでに卒業の時期を迎えていた。気づくのが遅かった。3年間、一体何してたんだろ。
このことを話すと、ある後輩が「それに気づくための3年間だったんじゃないですか。」と言ってくれた。私はその言葉に、救われた。
人が変わるのにはとっても時間がかかる。「知っている」と「分かる」は違うから。
その後は、次こそは!という思いのもと、社会人として働いている。
未だに同じようなことで悩んだりはするけれど、同じことは繰り返したくないので、前向きに悩むようにしている。
あのとき、冷静な対応をしてくれた彼にもとても感謝している。その後彼にも「甘えるのはもう卒業するから!」と宣言した。
少しずつ、変われてきている実感がある。それがすごく嬉しい。
自分で自分を認めてあげるために、今日の私も精一杯生きるのだった。
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