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白髪を染める

小さかった頃、父方のおばあちゃん家に行くと、おばあちゃんは2パターンいた。
髪の毛がふわふわしているおばあちゃんと、湿った髪の毛でツンとする臭いをはなつおばあちゃん。
今思うとおばあちゃんは自分で毛染めをしていたのだろう。
小さかった私はそういうこともわからず、ただ、ペッタリとした頭のおばあちゃんが苦手で逃げ回っていた。

そんな今年40歳になった自分の頭は根本が白髪で溢れていた。
3㎝ぐらいかなぁ…茶色い頭でいるところに、急に白髪と黒髪が半々であらわれている。
思えば25歳の頃から少しずつ白髪が増え始め、美容室に行けば「えっ、若いのに可哀想…」と哀れみの目で見られ、それでも勇気がでなくて、初めて染めたのが30歳の時だった。
丁度長男が生まれた時で、ちょっと離れるのも嫌々でギャン泣きしていた時になぜ?って話なんだけれども、ふと鏡を見た育児で疲れきった自分。
伸びきった髪の毛に、やつれている白髪頭の、でも丸々とした山姥がそこにいてぞっとした。

──ヤバい。

今思うとやつれたデブ、という謎の存在が一番ヤバかったのだけれど、当時は伸びた白髪に一番危機感を感じていた。
気が付けばベビーカーごと
近所の美容室に飛び込んでいた。
「どうします?」
「カットと…カラーでお願いします!」
わかりましたー、と簡単な返事があって。
「髪の毛って染めたこと…」
「ないです!」
「じゃあパッチテスト…」
「いらないです!とにかく染めて下さい!」
凄く怪しい客だったと思う。
実際そうだった。
幸い特に痛みもなく、20分程経過してシャンプーをしてもらう自分。
「どうですか?」
そう言われて鏡を見ると、思っていたよりは明るくなかったけれど、地毛よりは多少明るくなった、少し若々しさを取り戻した自分がいた。「…いいですね」
「それならよかったです!」
微笑む美容師さんにつられて私も微笑んだ。

で、それから約10年。
たいして働いてもいない割に予定がそこそこ入っている自分としては髪の毛を染めにすら行けない訳で。
しかも免許の更新の期限切れまで1月切ってる。
というか半月切ってる。
やべぇ。
という話をしたら、きょうだいから「車出すから行こう」と言われ、快諾したものの白髪。
超白髪。
染めに行く時間がない。
言うならお金もない。
そんな自分で染めるしかない状況が出来てしまう。
泡タイプなら出来そう、798円ぐらいなら出せそう。
そんな消去法で選んだ初めての毛染めは、えらく簡単そうに見えた。

よくわからなかったので、頭からゴミ袋を被り、液を混ぜて泡を頭に塗っていく。
なんか美容室で嗅いだことのある匂いがしてきて、なんとなく正解なのかなとか思ったりしてね。
そうして20分後。
洗い流して、なんとなく、こんな感じかな?と思った自分がいた。
自分にとって初めての体験だったものだから、何回も鏡の前に立って覗き込んだり、ちょっと離れてみたりする自分がいて、端から見ると滑稽で。
でも、なんとか40歳にして初めて染めることが出来ました。

ちなみに余談なんですが、免許証の写真が白髪以前の問題で本当に落ち込みました。
なんだこの粘土でほっぺたかさ増ししたおばちゃんは…!

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