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そこに名前のない私たち

名付けが好きだ。
人の名前を考えるのが好きだ。
自作小説で何度名前を考えたことだろう。
ちょっと捻るのも好きだし、阿部くんの下の名前が『亮(とおる)※仮名』なのも心に響くぐらい好き。
そもそも漢字フェチというか、好きな漢字が使われてる名前だとめっちゃ興奮する。
それくらい名付けが好きだ。
自分の名前が好きじゃないから尚更で。

なんで自分の漢字が好きじゃないかというと、ぶっちゃけると本名が『美沙子』なんだけれど、子どもの頃テレビ欄に『「美」と「子」が付く名前は今時古い?最近の名前ランキング』と紹介されていたり、物心付いた時には父親から「お前の名前はじいちゃんが漢字を当てたんだけれど、『沙』は『少ない』って意味らしい。だから『美の少ない子ども』ってことだな」って言われたりとか、とにかく嫌なことだらけだった。

そんな私がお腹に赤ちゃんがいるとわかったのだから、もう名前が凄いことになったのね。
名前辞典を1冊購入して、他にも図書館で3冊程借りて、画数だとかそういうのも気にしながら片っ端から気になる名前を書き写していった。
女の子の名前だけを。

何故かというと、一応これには理由があって、祖母が三姉妹を産んで、母が長女。
そのまた母が三姉妹を産んで、私が長女。
なので小さな頃から漠然と(私は女の子を3人産むのだな…)と思ってた訳で。
まさかお腹の子が男の子なんて思いもしなかった訳で。

ネタバレすると現在男の子2人の母親なんだけれど、当時はそんなことも知らず、「そろそろ性別わかるかもですねー」なんてエコーを撮ってもらうと、ちょうどおまたの部分だけ閉じて見せてくれなかった長男。
次の検診の時は位置が悪くて、やっぱり見せてくれなかった長男。
今思うと、長男は(自分が女の子じゃないから)気を遣っておまたを閉じて見せないようにしていたんじゃないかってぐらい私に対して心の準備をくれていて、(あれ、もしかしたらお腹の子どもって女の子じゃない…?)と思い始め、丁度その辺りで阿部くんを連れて検診に行くことになった。
なんとなくなんだけれど、寡黙な彼を見て、どこか他人事であるかのように感じてしまっていたので、一度検診についてきてほしいとお願いした。
意外にも二つ返事でOKをもらい、日曜日も開いてる所だったので予約を取り、2人で赤ちゃんの様子を見に行った。

心音を聞いてOKをもらい、3Dだったか4Dだったかの顔の写真を撮影して、おまたを見て、「男の子ですね」って言われた。
心の準備が出来ていたからか、やっぱりなと思ったのを覚えてる。
もらった写真を2人で見て、鼻が大きいねだとか、寝ていたところをつつかれて無理やり起こされたせいか、半目でこちらを睨んでいるようにも思えたその写真を見て可愛いねってなり、帰りの車の中で阿部くんが言う。
「あのさ、…俺の子だから、俺から一文字取ってもいいかな?」
「うん!」
それから我が家に置いてあった4冊の名付け辞典は、すべて阿部くんの名前にちなんだ名前を探すことになる。

結果として、阿部くんの名前の『亮』から取って、『大亮(だいすけ)※仮名』にした。
次男がまたひと悶着あったんだけれども、長男と繋がりを持たせたくて『亮理(りょうすけ)※これも仮名(本当は2人とも「戦国武将っぽいね」とよく言われる)』で、『亮』の字をダイともリョウとも読めるようにして、『すけ』を別な漢字にしたおかげで、結果として(特に次男は)誰も読めない名前になってしまった。
捻りすぎたな、と軽く後悔している。

でも、母ちゃんにとっては、どれも好きな漢字なんやで

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