フォー・フーム・ジ・オイラン・ダンシス #前編

キャンペイグン「ウォーク・オン・フレイム」よりサイドストーリー「フォー・フーム・ジ・オイラン・ダンシス」

目次

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12月24日。重酸性雨が地面を濡らす中、様々なネオンが道行く人々を煌々と照らす。今日はクリスマス・イヴという事もあり、街はいっそう派手に彩られていた。ここはネオサイタマ、電子的・物理的に鎖国状態にある日本の首都だ。

そんなネオサイタマにそびえ立つネコソギ・ファンド社のビル———トコロザワ・ピラーでは複数のニンジャ達が詰所に招集されていた。理由は詳しく聞かされてないが、やれラオモト・カンが暗殺されるだの、やれザイバツが攻めてくるだの、ヤクザが反乱を起こすだのと様々な噂が飛び交っている。暇を潰すためか顔を広げるためか、詰所に居るニンジャ達は歓談に興じている。

「…ドーモ、ブルータルウルフです」ヤクザスーツを着た男がアイサツした。「ドーモ、パイルスロワーです」 オイラン風ニンジャが返す。「……ど、ドーモ、…ブラックドールズ…です」その隣に居た長身の黒ゴス女も手に持った人形をいじりながら返す。(((なんだこのクソどもはァ…!殺そうぜ!((ブッダを燃やせ!))(((コラコラ…)))―――ブラックドールズの脳内に複数の声が響く。彼女は多重人格者であった。

「クリスマスだってのに抗争かい?」「…そ、そうみたいですね…コワイ」ブラックドールズは人形を見つめ…それを抱きしめた。今の表出人格は比較的大人しいようだ。ブルータルウルフはそんな事は知る筈もなく、会話を続ける。「休みたかったが、来るってんならザイバツの奴らを血祭りにあげてツリーに飾ってやるぜ」「アイエ俺もそう思うぜェ!ヘヘヘヘ!!」ブラックドールズは突如声を荒らげた!「アワワ…なんでもないです……私もカラテには多少は…アハハ」 しかし直ぐに元の口調に戻った。「お、おい、いきなりどうしたんだ!?」 ブルータルウフルは困惑した。しかしオイラン風のニンジャ――パイルスロワーは人形めいて表情を変えず、「暗殺には自信がありますが、抗争に参加した事はあまり無いので心配ドスエ」 ブルータルウルフに返す。「上手くミッションがこなせるかの心配ドスエ」

「ここにいるってだけで実力は保証済みのはずだろう?やれるだろ」「…ダイジョブですよ…」(((全員殺せばいい!)))(((アイエエ!?暴力はマズいですよ!)))――ブラックドールズの脳内は賑やかであった。

突如、ブザーが鳴り響く。「アイエ…」 続いて放送が流れてくる。「休暇中のネコソギ・ファンド重役、クゼ・ソウジ=サンが何者かによって襲撃を受けている。アイソレイト=サン、マーシレス=サン、ラットハッカー=サンの3名は速やかに現場に向かい、当該する重役を保護せよ」 名前を呼ばれたニンジャ達がヘリへと向かい、去っていった。

「なんだ?ついに来たのか?」「コワイ…です…」「大丈夫、支援します」 パイルスロワーはブラックドールズを励ます。(((早く殺してえェ!)))(((ウフフオイタはダメ…)))――当の彼女の頭の中はやはり賑やかであった。

それから1分後、再びブザーと放送。「———オオアライ・ロープウェイクランが反乱。スクワッシャー=サンとラバーダック=サンは鎮圧に向かえ」 さらに30秒後「———ドラゴン・ドージョーのゲリラを確認。デッドリーフ=サン、タルピダイ=サン、コーシャス=サンは迎撃に向かえ」 10秒後「———カタギジャナイ・ヤクザクランがムーホンを通告。バーグラ=サンは———」「———ラッキー・スム・ヤクザクランが反乱、ソウカイヤ事務所を———」「イネ・リバー・ヤクザクランが———」 時を追うにつれて呼び出しが増えていく。明らかにヤクザクランの反乱が多く、一斉蜂起か……と詰所内がざわつき始める。「次々と…」「…アイエエ…不穏だよォ…」「年末は忙しいドスエ」「今日は一段と規模がでかいな…裏でつるんでるんだろうあいつら」「……私たちも行くのかな…」「すぐに呼ばれるだろ」「おそらくは」 ブラックドールズの言う私たちはダブルミーニングだ。

そして。「こちらアースクエイク。マンドラゴラ・ヤクザクランが反乱。ブルータルウルフ=サン、パイルスロワー=サン、ブラックドールズ=サンは鎮圧に向かえ。追加ブリーフィングはIRCで送る。リムジンの中で読め」 ついに3人の名が呼ばれた。

「アッハイ、ヨロコンデー!」「ヨロコンデー」「アイエエエ…」(((やっとだぜェ…!)))(((アアダブ))) 「タイム・イズ・マネー!さっさと終わらスッゾオラー!」 元ヤクザのブルータルウフルがヤクザスラングを叫びながらリムジンへと向かう。「は、ハイ!」 ブラックドールズはヤクザスラングに驚きながらも追従し、パイルスロワーも無言でしめやかにその後を追った。

全員が乗り込むとリムジンは合成ヤクザスラングクラクションを鳴らしながら街道に飛び出した。そこにアースクエイクからのIRCが届く。

#Dangou (@EQ): 標的であるマンドラゴラ・ヤクザクランは違法オンセンラウンジ"自由な肉体文化"を拠点にしている
#Dangou (@EQ): 元々はソウカイヤに従順だったのだが……数ヶ月前からミカジメ料の上納が遅れ始めた
#Dangou (@EQ): そして今回、"もうミカジメ料は払わない"とふざけた通告を寄越してきた
#Dangou (@EQ): お前たちはコイツらに再びソウカイヤへの忠誠と上納を誓わせてこい。必要なら暴力で以て経営者の首をすげ替えるくらいの事はしても構わん
#Dangou (@EQ): 但し、使える人材を全滅させて滅亡させるような真似はするなよ……目的はあくまでも継続的搾取だ
#Dangou (@EQ): 尚、現経営者は腕利きの元オイランアサシンだ。油断はするなよ

「違法…オンセン…?パイルスロワー=サンなら詳しいんじゃないか?」 ブルータルウルフがパイルスロワーに目をやる。「アサシンとして派遣されることが多く違法施設にはあまり……」「ああ、畑違いだったか…」「…モータルだけど武器とか持ってるよネ…多分。…ガンバル…」(((タノシミダゼェ…)))(((ペケロッパ!)))

店の少し手前でリムジンが停まる。店の前では屈強なリアルヤクザが入り口を守っているのが見える。客は会員証を見せ、リアルヤクザがそれをサイバーサングラスで照会してから中に案内するシステムのようだ。「警備はそれなり…会員証があればスルーできそうだが」「……」 ブラックドールズはヤクザを見て怯えた。

店の方に1人の男が歩いていく姿が見える。3人のニンジャ視力は、その男が手に持った1枚のチケットに書かれた文字を捉える。――自由な肉体文化 招待状―― 門番ヤクザは他の客の対応をしており、この客と3人には気づいていない。

「私がすりとってみましょうか」 パイルスロワーが提案する。「チャンスじゃねえか?やれるか?」「エ?殺すの…いいじゃねぇか…やろうぜ……あ、取るだけなんですね…申し訳ない…アイエエ…」「まあまあ殺したら騒がれるじゃないか。頼むぜパイルスロワー=サン」「ヨロコンデー」

パイルスロワーはしめやかに男に近づき、すぐに戻ってきた。はたから見ればキモノの袖がふわりと舞っただけのようだが、「こちらになりますドスエ」 ナムサン、何たるワザマエか!彼女の手には招待状! 「流石だ」「…スゴーイ…」「俺が券を持って二人を連れてきた体なら疑われないしそのほうがいいだろう」ブルータルウルフは招待状を受け取ると、門番ヤクザの方に歩き出す。「では」 パイルスロワーはカラカサを取出し、ブルータルウルフと相合い傘に。(((ちーッ殺しをしたいぜ…!)))ブラックドールズは最後尾についた。

招待状をスられた男はいくつか問答した後無碍に蹴り飛ばされ、泣きながら帰って行った。その後にブルータルウルフ達が門番ヤクザの前に歩み出る。「ドーモ!会員証か招待状はお持ちでしょうか?」「ドーモ、お勤めご苦労。もちろんある」 招待状提示!「アッハイ、ウットコ建設のナガム様ですね」「ああ、よろしく頼むよ」「エート、そちらの女性は……お連れ様でしょうか?」 パイルスロワーとブラックドールズに目を向ける。「そうドスエ」「ハイ…」「二人も連れて入りたいんだが…だめかな?」

「アッハイ、当店はコンパニオン同伴でも実際問題ありません!ドーゾ!」「懐が広いことで、ドーモ!」「ドーモ」「お、オジャマシマス」 カネモチはお気に入りのオイランを侍らせながらこうした風俗施設に入る事も、マッポーのネオサイタマでは珍しい事ではないのだ。実際パイルスロワーはオイラン装束であるし、黒ゴスに身を包んだブラックドールズはゴスオイランと言えばそれで通ってしまう。何より、二人とも豊満であった。


3人はしめやかに店にエントリーした――――――

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#後編


登場人物

◆ブラックドールズ (種別:ニンジャ)  PL: しろい
カラテ		5	体力		5
ニューロン    	2	精神力		2
ワザマエ		2	脚力		3
ジツ		1	万札		-10

スキルやジツ:
 ヘンゲヨーカイ・ジツ

装備やアイテム
 サイバネアイ:ワザマエ判定時にダイス+2


アサイラム患者にニンジャソウルが憑依。その際か元からかは不明だが
超多重人格者となった。ゴシックロリータ人形を何体も持ち歩き、
露出度ゼロのゴス装束に身を包む。
主な人格はサイバーゴス、アンタイブディスト、ヤクザ、子供など。
◆ブルータルウルフ (種別:ニンジャ)  PL: T3
カラテ		3	体力		3
ニューロン    	3	精神力		3
ワザマエ		3	脚力		2
ジツ		1	万札		0

スキルやジツ:
 ヘンゲヨーカイ・ジツ
 

ヤクザ・バウンサーの男が抗争で命を落としディセンション。
クランがソウカイヤに吸収されると同時にソウカイニンジャとなった。
ヘンゲヨーカイ・ジツの使い手で、その名の通り巨大な狼へとヘンゲする。
◆パイルスロワー (種別:ニンジャ)  PL: 避雷針
カラテ		3	体力		3
ニューロン    	4	精神力		4
ワザマエ		6	脚力		3
ジツ		-	万札		-10

装備やアイテム
 サイバネアイ:ワザマエ判定時にダイス+2

スキルやジツ:
 ノーカラテ・ノーニンジャ


先端を尖らせたカンザシを投擲し返り血を浴びず暗殺するワザマエの持ち主であった
オイランアサシンにニンジャソウルが憑依、ネギシ・ダートという筆めいた形状の鉄杭を
投擲するニンジャとなった。ニョタイモリ研修などの過酷なオイラントレーニングも積んでおり
オイランとしての技能も高いが、彼女が無料でサービスした男は皆悲惨な最期を遂げるという噂がある。

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