フロム・フレイム#前編
キャンペイグン「ウォーク・オン・フレイム」より「フロム・フレイム」
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12月24日。重酸性雨が地面を濡らす中、様々なネオンが道行く人々を煌々と照らす。今日はクリスマス・イヴという事もあり、街はいっそう派手に彩られていた。ここはネオサイタマ、電子的・物理的に鎖国状態にある日本の首都だ。
そんなネオサイタマの中にあるビルの1つ……トコロザワ・ピラーの1室で、複数のニンジャ達が気だるげに過ごしていた。彼らはクリスマス・イヴだというのにここに呼び出され、即応待機を命じられているのだ。彼らは知る由もないが、ソウカイヤは現在厳戒態勢にある――首魁ラオモト・カン暗殺の噂が現実味を帯びてきたからだ。
ニンジャ同士といえど、ビズでもなければ顔を合わせる事もない。幾人かのニンジャ達は親睦を深めるべく――或いは単なる暇つぶしに――アイサツしていた。
「ドーモ、アイソレイトです。まったく、クリスマスだってのに呼び出しやがって、とんだブツメツだぜ……」「ラオモト=サンが厳戒態勢ってことは…相当な一大事だな…どんな事態にも備えなければ...アッドーモ。マーシレスです」「ド、ドーモ…ラットハッカーです。キンチョーしますね…」
3人のニンジャの出で立ちはてんでバラバラだ。マーシレスは黒紫のニンジャ装束にフルフェイスメンポといった「いかにも」な姿だが、アイソレイトはゴーグル型メンポにオサゲ(微妙に似合ってない)、チャカとカタナを携えている。ラットハッカーはサイバーサングラスをかけた細身の人物で、いかにもナードといったなりだ。
「そんなにかしこまらなくてもいい。俺たちは対等だろ二人とも」とマーシレス。((あんな感じの子が寺にもいたな…なんか別に飛ばされたが))彼は元ボンズなのだ。 「ドーモ。こりゃまた随分カワイイニンジャだな」アイソレイトはラットハッカーを見ておどける。「た…対等だなんてそんな。僕はノーカラテですし、実際ハッキングしかできませんよ」とラットハッカー。
「たしかにその細い腕……お前さん、ホントにニンジャか?いや俺もあんまり人のこと言えねえんだけどさ……」「そう怖がるな。昨日今日でニンジャになったサンシタでも一発殴りゃ屈強なボクサーもオタッシャなんだから」 3人が話していると、ソウカイニンジャであるスキャッターとオフェンダーの会話が聞こえてくる。
「おい聞いたかよ。なんでも近々ザイバツが攻めてくるとか」「俺は反ソウカイヤクザクランが一斉蜂起するって聞いたぞ?はやくヤクザどもの皮をはぎたい!」「シックスゲイツの何人かも今はラオモト=サンに張り付いてるらしいし、マジなんじゃねえか?」「せっかくのクリスマスに待機命じられる俺たちはたまったもんじゃないけどな……そんな事よりはやくヤクザどもの皮をはぎたい!」
「……ゾッとしねえな、荒事か」アイソレイトはカトンでタバコに火を着けながら言う。「アイエ…なんかコワイこと言ってる…」ラットハッカーは身を竦めた。「アンタらは招集理由についてなにか聞いてないのか?」アイソレイトが聞く。「わからん。しかし大事なんだとは思う」「誰も何も聞いてないなって…秘密作戦ですかね…?」ラットハッカーはソウカイ・ネットを検索してみたが、ダイダロスの気配を感じてやめた。「ア……ダメですね。これ以上はいけない…」
「ウーム、そこの嬢ちゃんほどじゃねえけどケンカは苦手なんだよなあ……」アイソレイトはラットハッカーを見る。「ぼ…僕は男です!」「アイエッ、まじかよ!」ナムサン、華奢な体つきで実際分かりづらかったがラットハッカーはれっきとした男なのだ!「ソウカイニンジャは男女比率100/0だぜ?アイソレイト=サン」マーシレスが笑う。「マジかよ!オレは最近入ったんだが、とんだブラック職場じゃねえか!!」そんな時、詰所内にブザーが鳴り響く。続いて、シックスゲイツのニンジャ・アースクエイクの声が流れてくる。
ザリザリザリザリ……「こちらアースクエイク。休暇中のネコソギ・ファンド重役、クゼ・ソウジ=サンが何者かによって襲撃を受けている。アイソレイト=サン、マーシレス=サン、ラットハッカー=サンの3名は速やかに現場に向かい、当該する重役を保護せよ。追加ブリーフィングはIRCで送る。ヘリの中で確認せよ。以上だ」
「アッハイ。…アイエ!?出撃命令!?」「ウェイ、面倒くさいな。承知した」「ヨロコンデー!カシコマレ!相手はシックスゲイツサマだぞ」マーシレスが叱りつける! 「アイエエ!ハイヨロコンデー!」ラットハッカーは見られているわけでもないのに最敬礼オジギ! 「おかたいこというなって、一方的な通信だろ?どーせ聞こえてねえさ」アイソレイトは余裕の表情だ。((実際目の前にいたらドゲザするけどな……)) 「いや…オマエに言ったわけじゃねえラットチャン。そんなかしこまらなくてもいいから」「ヒッヒ、ラットチャン! いいね、オレもそう呼ぼう」「アッハイ。エエエ?チャンはやめてくださいよぅ」「じゃあ…ラットクン?」「サンになるよう頑張ります…」
詰所の横はヘリポートになっており、1機のヘリがローターを回し始めた。「よしヘリが来た、いこうぜ、ラットサンチャン」「乗り遅れるぞ。頑張ろうぜ」「アイエエ…テストに出ないよぉ…」3人が乗り込むと、ヘリはネオサイタマの夜空へと飛び立った。
「ネコソギファンドの重役を襲うなんて何者でしょうね…?」「さてなあ、噂のザイバツか、敵対ヤクザくらんか、それともイッキ・ウチコワシか……」「まあ何にせよ、ソウカイヤにアダナス物は皆殺しだ」マーシレスの戦意は高い。シックスゲイツの指揮下にあれば相当なイサオシが期待できるからだ!
そこにアースクエイクからのIRCが届く。
#Dangou (@EQ): 現在クゼ=サンとは通信が途絶しており詳しい状況は不明だ
#Dangou (@EQ): クゼ=サンを保護し帰還せよ
#Dangou (@EQ): 尚、可能ならば襲撃者を全滅させろ。
#Dangou (@EQ): ソウカイヤをナメるとどうなるか思い知らせてやれ。
#Dangou (Merciless):ヨロコンデ—
「全滅!頑張ってくださいね!」ラットハッカーが2人を見る。実際彼はノーカラテなのだ!「他人事かよ……。ま、ラットチャンはともかくマーシレス=サンのワザマエは信用できそうだ、よろしく頼むぜ」「ああ、ヨロシク」((俺のカラテミサイルで殺しきれる数だといいんだがな…)) マーシレスが独りごちる中、ヘリは目的地に接近!
そこは別荘のようで、所々にクリスマスの飾り付けが見える……が、さらにその周りには多数の赤い旗を立てた装甲車!旗には「革命」「闘争」「搾取を許さないです」等のイデオロギー文言が踊っている。「ウチコワシか!」「オイオイオイ、随分数が多くねーか!?」「イッキ・ウチコワシ…こんなにいるんですか…!? アイエッ!?もう持ちそうにありませんよ!?」ラットハッカーの視線の先では今まさにガードマン達を打倒したイッキ・ウチコワシ兵が突入しようとしている!
ヘリが別荘の裏口上空でホバリング、ハッチが開く!「大義名分を掲げるのはいいが重点しすぎて頭まで赤くなったクソヤロー共...」マーシレスは飛び降りながら独りごちる。((まあ俺にもこんな頃あったけどな...黒歴史だぜ…)) 「(ニンジャはいなそうだな)うっし、いっちょお仕事といくか!」続いてアイソレイトが飛び降りる! 「ハァ…ハァ……ロープとかないんですね……」ラットハッカーも意を決して飛び降りる!
3人は前転しながら着地、勢いそのまま裏口の扉を蹴破ってエントリー! 「ヌゥッ!」突然のエントリー者に身構える者あり……それはモヒカン頭に赤いサイバーサングラスをかけたニンジャ!左右にウチコワシ兵を従えている! 「随分と来るのが遅かったな。おかげでこちらは決断的包囲戦術の良い練習になったわ。ドーモ、イッキ・ウチコワシのフラマブルです」
((ウェイッ、ニンジャいるじゃねえか! 俺の勘頼りにならねえな!))アイソレイトは顔をしかめる!彼のニンジャソウルはゲニンのためまるで感知能が低いのだ!たじろぎながらアイサツ!「ド、ドーモ……アイソレイトです」「ド、ドーモ。ラットハッカーです。ソウカイヤだぞ!」「ドーモ、マーシレスです。雁首をそろえるだけを包囲戦術というとは。実際脳味噌まで赤く染まっていると見える」「ほざけ!」
廊下には机やUNIXなどで築いた簡易バリケードが敷かれ、その影でチャカを構えている男有り。「ソウカイヤか!?頼む、私の事はいい……妻子を助けてやってくれ!金はいくらでも払う!」 彼こそが今回の重点任務目標、クゼ=ソウジだ! そして3人の鋭敏なニンジャ聴覚は隣の部屋に隠れている女と子供の心音を聞き取った……そしてそこに近づくイッキ・ウチコワシ兵の足音も!
「別の保護対象か…ヤクザも楽じゃねえな。引き受けたぜ」「チッ、女子供がいるのか……おいリーダー殿、ボスからの命令はそこのクゼ=サンの保護だぜ」アイソレイトが耳打ちする。「で、でも奥さんと子供を見殺しには……」「ワカットルワ。だが下手に要求を無視して喚かれても困る」
3人は1瞬で状況判断!「俺は前に飛び出して護衛対象を守る。準備はいいか?」アイソレイトは言ってから気づく。((……アレ?俺が一番アブネエ役回りになってねえか?)) 「ああ。オレはカラテミサイルで妻子を救出する」そう言うとマーシレスの顔面をフルフェイスメンポが覆う。「カナシバリで赤いヤツ……カナシバリで赤いヤツ……」緊張した表情のラットハッカー!
「フン、退廃的資本主義の豚を守りに来たファシストどもめ……トーチカからあぶり出されるドイツ兵めいて焼きだしてくれる!ゆくぞ革命闘士達!ソウカイヤの犬どもを排除して革命を決断的前進だ!」 「今すぐ退いてくれる……わけねえよな」タバコを咥えると、アイソレイトはカトンで火を付ける。鼻先を火が炙る!「アチチ!」 「煽り文句を考えるのに脳味噌を燃やし尽くしたか?どちらにせよオマエには死んでもらうぜ」マーシレスの煽りを契機に……全員が一斉に動き出した!
登場人物
◆アイソレイト (種別:ニンジャ) PL: ANIGR
カラテ 3 体力 3
ニューロン 2 精神力 2
ワザマエ 4 脚力 2
ジツ 1 万札 -10
◇装備や特記事項
スキル・ジツ:『カトン・ジツ』
装備:
カタナ
ノーカスタム・チャカガン
「オイオイオイオイ冗談じゃねえ!全然ワリにあわねえ仕事じゃねえか!」
ゴーグル型メンポと似合わないオサゲが特徴のカトンサムライガンマン。31歳。
カネ好き・女好き・カッコつけのビビリで悪人になりきれず損するばかりの三枚目
ソウカイヤとは距離をとりたがっているが、難しいようだ。
タバコにカトンで火をつけるのが決めポーズだが、よく失敗して鼻を焦がしている。
かつて婚約していた恋人に殺され、ニンジャになった。
◆マーシレス (種別:ニンジャ) PL: うーぱー
カラテ 3 体力 3
ニューロン 4 精神力 4
ワザマエ 2 脚力 2
ジツ 1 万札 0
◇装備や特記事項
スキル・ジツ:『カラテミサイル』
黒紫色のニンジャ装束とフルフェイスメンポを装着した男ニンジャ。
ボンズ上がりの名もなきアンタイブティストであった彼ははNERDZの暴動で爆破されて死に、
邪悪なニンジャとして蘇生した。
今までの無軌道すぎる人生を恥じた結果、彼はソウカイニンジャとして生まれ変わった人生を
真面目に歩むことにした。
これまでの人生経験からゼンのココロを学んでおり定期的にザゼンでヘイキンテキを保つが、
アンタイブティストめいて発狂することもあるだろう。
タダオ大僧正ほど強大ではないがディバイン・カラテミサイルを使用可能。
◆ラットハッカー (種別:ニンジャ) PL:Wolfram
カラテ 1 体力 1
ニューロン 5 精神力 5
ワザマエ 1 脚力 1
ジツ 2 万札 -13
◇装備や特記事項
スキル・ジツ:『カナシバリ・ジツ』
装備:
生体LAN端子
無軌道大学生ナード。無理矢理連れていかれた飲み会で先輩の引き立て役としてイッキさせられ、
薬物と飲酒のオーバードーズで死亡。
ニンジャソウルに憑依されるが、先輩にやり返すでもなくそのまま逃走する。
ニンジャということで一応ソウカイヤにスカウトされるがソウカイヤ内でも舐められまくっている。
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