サッカーオタクだけど映画オンチの私が観た「サンシーロの影で」ーヨコハマ・フットボール映画祭2022ー
私はサッカーが好きです。
新型コロナウイルスが蔓延する前は、年間100試合ほどスタジアムで観戦していました。仕事以外のほとんどの時間をサッカーを観て過ごしているので、映画館で映画を観ることはあまりありません。観ても年間1〜2本でしょうか。
飛行機で世界中を飛び回っていたときは、機内で話題作や気になる作品を観ていました。その機会も失われて早2年以上。すっかり映画に疎くなってしまいました。
私の大好きなサッカー×あまり親しみのない映画。
それが化学反応を起こす素敵なイベントがヨコハマ・フットボール映画祭です。
サッカーオタクだけど映画オンチの私がヨコハマ・フットボール映画祭の作品を観るとどんな感想が出てくるのでしょうか。
■「サンシーロの影で」概要
■見どころ① 美しい映像と音楽
概要に「夢の陰でもがく若者を、美しい映像でスリリングに描く」と書かれている通り、美しい映像が魅力的な作品です。
私がその中でも特に気に入ったのが、アングル。サッカーを描く場面で「サッカー中継では、こんなアングルでは撮らない」と思うような角度から撮られているシーンがあってハッとさせられます。
こういう描き方が、映画ならではなんでしょう。
映像だけでなく、音楽もいいです。サッカーはスピード感のあるスポーツなので、ノリノリの音楽が合いそうですが、この映画は、クラシック調の音楽を合わせているシーンが結構あります。
美しい映像との相乗効果もあり、意外とサッカー×クラシックというのもありなんだなと思わされます
ネタバレになるので多くは語れませんが、イタリア語の歌の使われ方もいいです。
■見どころ② タラレバを想像させる展開
「プロサッカー選手になる夢の為、故郷のスウェーデンを離れ、ユースの選手寮で生活を始めた彼を待っていたのは、敵意に満ちたチームメイト達だった」
主人公はスウェーデン人で英語はかなり話せます。しかし、イタリア語はほとんどわからない状態で、インテル・ミラノと契約をしています。ユース選手寮ではイタリア語がメインです。そのことも敵意を向けられるきっかけになりました。言葉の壁も彼にとってかなりのストレス源になっていたでしょう。
劇中では、主人公をめぐって争奪戦を繰り広げたというイングランドプレミアリーグのとあるクラブの名前も出てきます。
もし、そっちのクラブに行っていたら……。
少なくとも言語のディスアドバンテージはなかったでしょう。
この映画は生まれていなかったかもしれません。
契約金等の条件が良かったからインテル・ミラノだったのかもしれませんが、スウェーデン人だけにあの選手の影がチラつきます。
いろんな国やリーグで活躍していますが、イタリアでの活躍が特に印象深いです。彼みたいになる、というのが主人公の中にあったからインテル・ミラノを選んだのかな?と想像してしまいます。
■見どころ③ 原題or邦題どっちがいいか問題
この作品の原題は「Tigrar」です。英題だと「Tigers」
作品を観るとなぜこのタイトルが付けられたのか、わかりますが、観てみたい・気になるという感覚まで持っていくにはかなりの距離があるでしょう。
ちなみに、私がTigerと聞いて思い出すのは前橋育英高校サッカー部。全然違う物語になってしまいます笑
私のような連想をする人はいないと思いますが、サッカーの映画であること、その先に起こることが匂わせられていないので、原題ではフックが弱いです。邦題の「サンシーロの陰に」だとイメージがつきます。
サッカーが好きだったら、想像力がかき立てられて、興味を持つでしょう。たまにガッカリな邦題が付けられた作品の話を聞きますが、この邦題は絶妙です。
原作のタイトル「In the shadow of San Siro」からきているとのこと。
ただ、原題を知っておくと物語の深みが増すので知っておくといいと思います。美しい映像・世界観の中で「ああこういうことだったのか」とハラオチします。
■見どころ④ 日本にいるとあまり気づかない「渇望」というワード
彼を獲得したGMが、彼をトップの試合に抜擢した際に、彼に語りかるシーンがありました。
「(彼のプレーに)渇望が見えたから彼を起用する」
よく南米のサッカー選手は、家族・親族を背負って、生活・人生を懸けてやっているからハングリーさがあるし、プレーの必死度が違うと言われます。
主人公も今まで彼を支えてくれた母親の期待を背負って、異国の地で戦っていました。SNSにも「インテルのサッカー選手」と書いて自分を鼓舞し、陰湿なイジメにも戦ってたように思います。
日本代表の試合などで、日本人選手は必死さが足りないと言われることがあります。心身ともに追い込まれることが少ない印象です。
アジア圏だと、韓国のアイドル界には似たような渇望を感じることがありますが、その代償としてメンタルが不安定になるということもよく聞きます。
夢を見る、それを叶えるために頑張る、限界だと思ってもそこからもう一踏ん張りすること。
渇望の先にある自分のリミッターを外す行為ですが、良くも悪くも「一億総中流階級」と言われる日本人にはあまり見られない行動だと思います。
眩しいな、と憧れのような目で見つつ、「失敗しても死にはいない」「ダメだったら次がある」と思うスタイルは、天才は生まなくても、悲劇を生むこともないから、今の社会にフィットした考え方なのかもしれません。
この渇望はこの映画の中でとてもいいエッセンスになっています。
■「サンシーロの陰で」が気になったあなたに!
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(間に合わなくても他に気になる作品があれば、シネマパス(1DAY、2DAYS)といったお得なチケットもあります)
「サンシーロの陰で」
6月5日(日)10:15-12:39 [映画上映+トーク]
この作品のトークゲストはサッカーフリークとしても知られているスポーツメンタルアドバイザーの木村好珠さん。
映画を観た後に、木村さんのお話が聞けるなんてより深い考察ができそうです。
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