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「アバター近藤が解説する業界史~逆タイムマシン経営論785」

皆さん こんにちは アバター近藤です。
「逆タイムマシン経営論」として、業界唯一の経営情報誌であるフィットネスビジネス誌のバックナンバーを引用しながら、それぞれの年のトピックスや記事について、示唆することは何かをアバター近藤なりに解説していきます。
「歴史に学ぶ」とは良く使われる言葉ではありますが、フィットネス業界史について、詳細に検証した文献は恐らくないと思いますので、これから良い歴史を作るために何かしらのお役立てになれば大変うれしく思います。

~Fitness Business通巻第35号(2008.3.25発行)「新会員種別・新スクールで、需要を喚起ー代替サービスに負けないマーケティングへの取り組み」1~※名称等は当時、一部文章省略

マーケットの潜在需要を喚起し、既存店への入会者の減少を抑えようと新しい会員種別を追加したり、新しいスクールを導入したりするクラブが増えてきている。

各セグメント毎に、新会員種別を導入
まず表をご覧いただきたい。

※表~メガロス吉祥寺のフィットネス会員料金・種別
①メガロスゴールド(税込月会費13650円)
②フルタイム(税込月会費10500円)
③マンスリー4(税込月会費6925円)
④アンダー27(税込月会費9240円)
⑤アンダー23(税込月会費8190円)
⑥シニアペア(税込月会費9240円)
⑦デイ(税込月会費8190円)
⑧デイアンダー23(税込月会費5600円)
⑨ウィークデイ(税込月会費7350円)
⑩イブニング(税込月会費5600円)
⑪ナイト(税込月会費6825円)
⑫アフタヌーン(税込月会費3990円)
⑬アクア(税込月会費8190円)

これはメガロス吉祥寺店の会員料金・種別である。
近隣に立地する競合クラブに対抗する目的もあろうが、マーケットを構成する各セグメントに対して、そのニーズを捉えるべく大変細かく会員種別を設定している。
とりわけ目を引くのは、入会が減少トレンドにある若年層を獲得しようと投入しているいくつかの会員種別である。
まず「アンダー23」。
「アンダー27」を設置しているうえに、さらにこの「アンダー23」も投入して、学生を中心とした若年層のニーズを捉えようとしている。
また「マンスリー4」。
これは業界に先駆けてティップネスが導入した会員種別である。
近年の若年層の消費行動の変化や可処分所得の低下に対応する会員種別として同クラブも導入したものと考えられる。
さらに同クラブが今、フィーチャーしている新しい会員種別として「アフタヌーン会員」がある。
これは3990円というリーズナブルな価格で、最長3ヶ月間登録できる、所謂お試しプランである。
とはいえ、同社のホームページを眺めると、以下のような惹句が踊る。
・夏までに見せる体を手に入れる。
・家事の間の、手の空いた時間にフィットネス
・今流行のヨガ、ピラティスにチャレンジ
・特に女性、主婦、学生の方々にオススメ!
・空いた時間にお気軽にLET’S「快適FITNESSライフ」!!

~ここまで~

記事当時は、総合型クラブが全盛かつ大型化が開発トレンドとなっており、それらのクラブは相応の集客を継続・維持する必要性がありました。
例えば、会員数5000名のクラブで平均退会率が3%であれば毎月150名、4%であれば毎月200名を補充しないと同じ会員数を維持できない計算になりますので、パンデミック以降の現在を考えると途轍もなく高いハードルに感じます。

そのような中で、編み出された施策が、以前からあった時間・空間・年齢等でセグメントした会員種別を、さらに細分化するという方法でした。
この施策は、導入直後にそれなりの反応が得られる結果となり、多くのクラブで実行されていきました。

と…ここまでは良かったのですが、歴史的に見るとその後、何が起こったか皆さまは類推できますでしょうか。

一つは同業他社の多くが追随することで、徐々に競争激化となり、さらなるダンピングへと駆り立てられました。
その影響で、一番登録して欲しいフルタイム会員の比率が落ち、客単価の低下傾向も鮮明となり、増加していたトータル売上が導入前よりも落ちる結果となったということです。

考えて見れば、フルタイムでいつでも利用可能な環境の顧客は、リタイアされ経済的にも余裕のある方など限られますので、自身が多く利用できる割安な会員種別に流れるのは至極当たり前と言えます。

つまり導入する時点で、客単価が下がることが分かり切っている施策という点で、すぐに効果の限界がくるものだという認識が足りていなかったように振り返って評価することができます。

お読みいただきありがとうございました。

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