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12月23日(木):「いまの解決策が次の問題を生む」

昨日は「WIRED」で創刊者のケヴィン・ケリー氏が触れていた「いまある問題は、かつての解決策だった」、「いまの解決策が次の問題を生む」との示唆に関連したブログを記しました。

そこでも記しましたが、すぐに次の問題が生まれるのではなく、いずれにも共通するのは「長い時間を経たあとで」、「異なる形で問題が現れる」ことです。

昨日は社会にある様々な事象を例に挙げましたが、本日は私たちフィットネス業界に置き換えた話をしようと思います。

時計の針を25年ほど巻き戻すと当時のフィットネス業界でいえばバブル崩壊後の様々な社会環境の変化のなかで、生き残りを模索する時期でした。

バブル期は年間の出店数が200店(現在はクラブが小型化して年間の出店数も増えているが、当時の基本は大型クラブ)を超えるほどでしたが、バブル崩壊後の数年間は30店前後で推移した低迷期でもあります。

この時にフィットネス業界は従来の高額な入会金やファッショナブルな若年層の場から、高齢化が進む社会環境の変化、ニーズの変化を拾い上げつつ、顧客層を拡大していきます。

具体的なアプローチとしては営業時間の拡大や会員種別の多様化(例えばシニア会員の導入など)、プログラムの多様化や入会金無料のキャンペーン等です。

それらによる顧客層の拡大、会員数の増加によって現在のフィットネスクラブの姿につながる礎を築いた点は、紛れもなく当時の問題に対する解決策にはなっていたと言えるでしょう。

ただ、この時のアプローチをシビアに俯瞰してみると、それは「営業システムの変更」と「割引」で乗り切ったという見方もできなくはありません。

そこでの成功体験というものが、その後の難しい状況に直面した際に本質的な提供価値を引き上げようと努力するよりも、営業システムや割引で何とか対処しようとする発想の温床になった点はあるように思えます。

その後、2000年代以降になってからはフィットネス業界にも様々な業態のクラブが出てきて競争環境が激しくなるなか、多くのクラブで進んだのが省人化・無人化に近いローコストオペレーションです。

合理性や収益性の観点からいえば、その当時の問題に対するひとつの解決策ではあったかもしれません。

ただ、それによって得たものもあれば、当然ながらに失うものもありますね。

それはフィットネスクラブにおける現場力であり、トレーナー力でもあります。

私のなかではトレーナーという存在は今も昔も「価値創造の源泉」だと位置付けています。

でも、前述したように現場はアルバイトスタッフが大半、あるいは無人に近いといった状況になれば、フィットネスクラブにおける提供価値はハードに依存するのみで、ソフトやヒューマンで上乗せする余地が乏しくなるのは必然です。

此度のコロナ禍で多くのフィットネスクラブが会員数を減じ、収益面でも厳しい状況に置かれましたが、その要因が先のような点と密接に結びついているのは疑う余地もありません。

このようにフィットネス業界においても「いまある問題は、かつての解決策だった」、「いまの解決策が次の問題を生む」という構造は同様に捉えることができます。

それだけにコロナ禍の現状で危機を乗り越えるための問題解決としてどんな手段を選択していくのかは非常に重要でしょう。

仮にその場しのぎの解決策に留まっていては、それがまた次の問題を生んでいく構図は明らかなので、より本質的な解を見出していくことだと思います。


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