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8月20日(日):エコロジカル・アプローチ「3種類の制約」と「5つのプリンシパル」

この数日は書籍「エコロジカル・アプローチ『教える』と『学ぶ』の価値観が劇的に変わる新しい運動学習の理論と実践」の内容に付随したことを綴っています。

一昨日にはエコロジカル・アプローチの運動学習理論を支えている基本原理の自己組織化に触れ、昨日はそれに付随して縮退の概念と機能的バリアビリティに言及しました。

簡単に振り返ると従来的な運動指導のアプローチは「パフォーマンス結果の安定性=動作の安定性」との考え方で型の習得のための反復が重視される一方、エコロジカル・アプローチでは「パフォーマンス結果の安定性=動作の安定性+機能的バリアビリティ」と考えます。

そして機能的バリアビリティの伴ったスキルを習得するには、厳密に同じ動作を反復するのではなく、「同じ結果を出すために、違う動きをすること」がポイントで「繰り返しのない繰り返し」をするために練習環境に存在する制約を意図して継続的に変更していく制約操作が大切になってきます。

そうしたなかでエコロジカル・アプローチの制約は「個人制約」、「タスク制約」、「環境制約」の3種類に大別されています。

■個人制約
・構造的:身長、体重、体脂肪率、柔軟性、ストレングス、スピードなど
・機能的:インテンショナリティ、認知能力、疲労、感情、モチベーション

■タスク制約
器具(ボール、ラケット、バットなど)のサイズや重さ、コートのサイズや時間、人数、得点形式などのルール

■環境制約
・物理的:温度、明るさ、標高、重力、サーフェス
・社会文化的:社会的な期待、家族の支援、人種や年齢の構成、スポーツのメディアイメージ

これらに対してコーチが意識すべきプリンシプルとして同書では以下の5つの観点が示されています。

1、代表性
ここで言う代表性は練習環境がどれだけ試合環境に類似しているかの観点です。類似度が高ければ「代表性が高い」、反対に類似度が低ければ「代表性が低い」との捉え方になります。練習環境で知覚し、判断し、動作して習得したスキルを試合環境で発揮(転位)するためのポイントが代表性の有無です。

2、タスク単純化
関連して代表制を高く保つためのコツとして、スキル習得のためにタスクを単純化することが挙げられています。なお注意点として言及しているのが「タスク単純化」と「タスク分解」の違いについてです。前者が代表性を保ちながら制約によって難易度や強度を調整するのに対して、後者は部分的なプレーや動作を要素分解的に抜き出して反復を行うことで、そこには大きな違いがあると指摘しています。

3、機能的バリアビリティ
こちらは昨日に記したことと重なり、良い変動性としての機能的バリアビリティです。新たな動作パターンやスキルを学習していくためにはバリアビリティを抑制するのではなく、増幅していくべきで、そのために上手く制約を設けていくことがポイントだと示しています。学習者がある制約に慣れてしまう前に制約を操作し続け、学習者がより多くの動作を学習できるような働きかけが大事になるといいます。

4、制約操作
制約操作によって効率的にスキルを習得するにはコーチ側がスキルマップを作成し、学習するスキルの選択と集中と移行が適切に進むようにしていきます。サッカーのファーストタッチであれば、インサイド、アウトサイド、足裏を使ったコントロールやダイレクトパスなど、様々なスキルをマップイメージにそって習得するべく、制約不足や過剰制約にならないように制約を操作し、学習者が探索をしていく流れを作ります。

5、注意のフォーカス
注意のフォーカスは運動を制御する際にどこに注意を向けるか、との観点です。ここは「内的フォーカス」と「外的フォーカス」の2つに大別され、前者はパフォーマーの注意が「動作そのもの」、筋肉や関節などの身体に関する情報に向けられている状態です。一方の後者は注意の先が「動作の効果」に向けられており、例えばキックされたボールの軌道などがそれにあたります。そして良いパフォーマンスを学習しやすいのは「外的フォーカス」がなされているケースで、そちらのほうが自己組織化が促進されるのだということです。

こうした観点を持ちながらコーチが制約操作をしていき、学習者のスキル習得・自己組織化を効率的に進めていくのがエコロジカル・アプローチになります。

私たちはフィットネスクラブの運営が主たる事業で、特定のスポーツ指導が本業ではないものの、学ぶべき点は多いですね。

一般生活者の大人であっても何らかの痛みが生じる背景には日常の姿勢や動作の改善が必要になるし、子どもの体操教室などでもそのまま応用できるでしょう。

自分たちの事業やシチュエーションに置き換えながら、さらに理解を深めていこうと思います。

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