「アバター近藤が解説する業界史～逆タイムマシン経営論539」
皆さん こんにちは アバター近藤です。
「逆タイムマシン経営論」として、業界唯一の経営情報誌であるフィットネスビジネス誌のバックナンバーを引用しながら、それぞれの年のトピックスや記事について、示唆することは何かをアバター近藤なりに解説していきます。
「歴史に学ぶ」とは良く使われる言葉ではありますが、フィットネス業界史について、詳細に検証した文献は恐らくないと思いますので、これから良い歴史を作るために何かしらのお役立てになれば大変うれしく思います。
～Fitness Business通巻第15号（2004.11.25発行）「スイミングクラブの成長戦略」12～※名称等は当時、一部文章省略
Ⅲ成長クラブの事例研究
事例研究3「発達心理学に基づいた独自カリキュラムとサービスで差別化」（スイミングスクール＆スポーツクラブWell Be）
Well Beのプールのプールサイドでは子どもが走り回っている。
スイミングのレッスンが始まれば思い思いにプールに飛び込み、コースの使い方も自由自在。
コースロープを横断する速さを競う姿もある。
「いけません」という言葉がない、実にユニークなクラブである。
株式会社水口スポーツセンターが経営するこのWell Beは、滋賀県の東南部に位置する水口町に平成1年（1989）に設立された。
当時、同町の人口は29,000人。
同社は筆頭株主が滋賀県内最大手のゼネコンで、水口町も22％出資している第3セクターである。
現在の商圏人口はクラブから10㎞圏で9万人、競合クラブには約7㎞離れた場所にイトマンスイミングスクール、2㎞先に2003年に新設されたオーパスフィットネスクラブ水口がある。
当初は延床面積450坪のスイミングプール1面の施設であったが、昨年、歩行専用プールとスタジオを拡張し、現在、延床面積700坪、会員2,800名（うち子ども1,500人）を擁するクラブとなっている。
このユニークなクラブができたのは、設立予定が1年間遅れたことがきっかけだった。
建築予定地の山林掘削許可がなかなか下りず、その間、開発を担当していたＨ氏は日本中のスイミングクラブを見て回り、ある思いに至った。
同氏は設立経緯を次のように語っている。
「私は当時ある知り合いからこの事業を引き受けたのですが、この業界のことを全く知らなかったので、この1年間がなければ、通常のスイミングクラブを見よう見真似で作っていたでしょう。ですが、その一方で、先行クラブを見ているとどれも全く同じであることが分かりました。弱い部分も一緒。それに気づいた時、これは十分ビジネスチャンスがあると感じました。その1つは、当時のスイミングクラブの経営者に水へのこだわりが感じられなかったこと、もう1つは提供しているプログラムが面白くないことでした。」
Ｈ氏は以前、生活協同組合に勤めた経験を持っていたことから衛生管理には特に厳しい目を持っていた。
当時のスイミングスクールは「厚生労働省基準」を守るに留まり、水にこだわりを持つクラブは皆無に等しかった。
また、同氏は生協で管理職として人材育成のための心理学を学んでいたことがあったことから、子どもたちがプールサイドに整列して座らされ、皆が同じことをしている姿に違和感を感じていた。
結局、オープンに合わせて理想的な水を導入しようと濾過機だけで5,000万円、循環システムも合わせると2億2,000万円の追加投資となった。
当初予算は土地代も含めて3億円（土地取得費1億5,000万円含む）だったから約倍である。
「結果的には、入会者のほとんどが初めてスイミングクラブに入会する人なので、水の良さを実感して貰えなかった」と話すが、これは後に認められるものとなる。
最終的な初期投資は建物及び設備だけで5億5,000万円に膨らみ、合計7億円をかけての施設となった。
現在もこの金利負担が利益率を圧迫しているというが、環境の変化に合わせた改修もこまめに行っており、こうした拘りが強さの源泉になっていることが感じられる。
～ここまで～
フィットネスクラブやスイミングクラブ関係者は、長らく経営・運営に携わると経験値が上がる一方、業界バイアスも強化され、それがマイナスに働くことを示唆する記事だと思います。
アバター近藤も業界歴が25年以上となり、それまでの業界常識に囚われないよう腐心しておりますが、それにはユーザーとして常に利用したり、顧客をつぶさに観察すること等でなんとか保てているように感じます。
特に現場スタッフは、そのクラブ内で業務が完結してしまうことによって、個店バイアスにもかかりやすい労働環境と言えますので、意図的に視点を変えてみる機会をたまに作ることも重要であると考えます。
お読みいただきありがとうございました。
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