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1年漁師

「漁師やる?」

3月初旬に上司からメールが届いた。
僕はラーメン凪に就職して9年になる。今まで製造部をメインとして働き営業部で店長の経験もある。
秋頃からすストレスと変わり映えのない毎日に嫌気がさし、僕は生活環境を変えたいと強く思っていた。
そこで、仕事の相談を受けてくれた上司や社長は僕に道をつくってくれた。

営業をさせてみる考えもあったようだが、長崎県の漁業会社と仲の良い社長は、この会社の取り組み【1年漁師】プロジェクトを進めてくれた。
それが(株)天洋丸であり、ここから僕の漁師生活がスタートとした。

海や釣りが好きな僕にはピッタリで、プラスの変化を期待してくれたのだと思う。

期待通り毎日が新鮮で魚と命のやり取りを目の当たりに海で過ごす日々は、僕の心を和やかにしてくれ長崎県と天洋丸がすぐ好きになった。

漁師の仕事についてお話しします。
天洋丸では、まき網漁法でカタクチイワシ漁を行なっています。

【まき網漁】魚の群れを探し、網で囲い込んで獲るまき網漁。
それぞれの役割を持つ数隻の船が船団を組んで漁をする、チームワークが必要な漁法

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この漁法で我々は夜23時に湾を出発し、ポイントへむかう。
一度の仕掛けから引き上げまでは約1時間でこれを3〜4回行う。そして、運搬船は取れたカタクチイワシをすぐに湾の加工場へと運びこれが煮干となる。
このスピードと橘湾の豊富なプランクトンが上質な長崎煮干を生み出す。

ラーメン凪はこの長崎煮干を使用しています。

船には役割がそれぞれあり、まず、火船と呼ばれるL E D搭載の船が光で魚を誘きよせ、本船(網船)が400mもの網を海に仕掛け、引き上げられた魚は全て運搬船に積みこまれる。
僕は本船に乗り、網を引き上げたり、甲板の掃除が主な仕事。
職人気質の人が多く、目で見て体に覚えこませていくスタンスでどんくさい僕は仕事を覚えるのに苦労している。
1年で一人前になるにはハードルが高そうだ。

本船員は12名程いて、船の前後とサイドに位置し、機械で網を操作したり、ワイヤーをセットしたりとポジションに分かれる。カタクチイワシを引き上げる際は、船長以外総動員で網の引き上げ作業に当たる。

体力仕事に加え、眠気、寒さ、雨、波の揺れ等さまざまな苦難が待ち受けるが、手伝いに来てくれている70歳近い漁師達がキビキビと作業をこなしていく姿をみると、やはり海の男は逞しいなと思う。

そして、朝6時過ぎ船団は帰路へと向かう。獲れたカタクチイワシは運搬船に全て移しているので、我々本船は網だけを積んで帰ることになる。
湾に戻ると温かいお茶、カップ麺、おにぎりが用意されている。
無事に帰れた安堵感と疲れた体で食べるカップラーメンは染み渡る美味だ。
その後、掃除、片付け、養殖魚の餌やり、翌日の準備等を行い、お昼前に作業終了となる。
翌日が土曜日であればそのまま、土日休みとなるが、平日の場合、よく朝9時から仕事が始まる事が多い。
カタクチイワシ漁シーズンともなれば、連日してまき網に出漁する事もあるそうだ。

作業終了後船員は、湾から徒歩1分ほどの寮に戻る。そこでは僕を含め9名が生活をしている。
ひとり一部屋与えられ、すぐに眠りにつく者や、リビングでゆっくり過ごす者など割と自由気ままで、長崎に来る前のイメージとは違い、かなり快適だ。
夕食も一緒に食べたり食べなかったりだけど、カレーを皆で食べた時は学生時代のようで懐かしい気持ちになった。

「ここならなんとかかやってけそうだな
明日はどんな仕事をするんだろ⁉︎」
そんな思いで眠りにつき僕の漁師生活の夜はふけて
いった。

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