【詩】的と矢
一日目。
人が集まる目立つところに、的が置かれる。
「今日はあの人がこんなことをやらかしました!」
その的めがけ、みんなが一斉に、
矢を放つ。
"馬鹿なの?"
"死ね!"
"二度と顔も見たくない!"
的は穴だらけになって、地面に落ちる。
二日目。
的が置かれる。
「過去にこの人があんなことをやらかしました!」
みんなが一斉に、
矢を放つ。
"さいてー。"
"もうあの番組出られないね"
"好きだったのに……もう嫌いです"
穴だらけの的が地面に落ちる。
三日目、四日目、五日目……。
ぼろぼろの的が地面に増えていく。
XX日目。
「今日は特に何もありません!」
みんなは虚空を見ながら、
手に持った弓をいじる。
つがえる矢も、今は持ち合わせていない。
YY日目。
的、置かれる。
「今日はこんないいことがありました!」
その的めがけ、みんなが一斉に、
矢を放つ。
"私はこんなに苦しいのに、ずるい!"
"だから?"
"そんなことより俺の話を聞けよ"
形を成さなくなった紙切れが、地面に落ちる。
矢は尽きない。
的が何であれ、矢はその人の心から作り出される。
その矢は飛び出すこと以外、知らない。
何かを、傷つけずにはいられない。
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