父ちゃんとわたし
私の父ちゃんは
普段は優しいけど無口で、
仕事から帰るとすぐにお酒を飲み始め、
私が家に帰る頃にはいつも酔っ払っている。
そんな父にうんざりの私は、
たびたび“無視”という反抗にでる。
二人で会話をすることもあるが、それは気分屋の私の機嫌が良い時か、彼がシラフの時のみ。
しかし顔を合わせる時はほとんどの確率で向こうは酔っ払ってるし、それをみて私は機嫌を悪くするので、会話は滅多にない。
そんな父娘2人が、片道2時間かけてお出かけすることになった。春のお彼岸ということで、約10年ぶりに父の両親の墓参りへ行くことになったのだ。
気まずさと、これを機会にいろいろ話したいという二つの気持ちがせめぎ合い、出発前はドキドキが止まらなかった。
いざ出発🚃
意外にも、話は止まらず、
最寄り駅まで歩く道も、電車に乗ってからも、
私たちはおしゃべりし続けていた…(奇跡✨)
我が家のお騒がせboy👦🏻の話題を入り口に、将来のこと、仕事の楽しさや愚痴、いろんなことを話した。まぁほぼ👦🏻メインだけど。
(クレイジーで最高な弟、いつも話のネタになってくれてありがとう！)
そしてその日はWBC準決勝の真っ最中⚾️
試合が気になる父は、話が落ち着く度に
試合がどうなったかを聞いてくる(彼はスマホを持っていないので調べられない)
その度にTwitterで検索し、
「わー負けてる」「吉田スリーランホームラン！」「村上が叩かれてる」「大谷打った！次村上！」「え、日本勝った！！！」「村上様やったわ！！」
と知らん人のつぶやきをそのまま父に実況。普段感情を表に出さない人間が一喜一憂を繰り返す姿は実に面白い。少年に戻ったような父がそこにいた。
そんなこんなであっという間に父の地元に着き、お墓参りへ。
父のご両親は私が生まれる前に亡くなっているので、会ったことはない。
会ってみたかったなぁ、孫は元気に生きてるよ
と、心の中でつぶやいた。
街中を散策してから父の実家に向かう途中、
久しぶりにお墓参りできた安堵感とWBC決勝進出の興奮がおさまらないのか、陽気になった父が不意に
「娘と2人で墓参りした今日のこの日は一生忘れないんだろうなぁ」
と、柄にもないことを口にした。
「そうだね」
と、ぶっきらぼうに返してしまったけれど
内心照れくさくて嬉しかった。
普段会話しなさすぎて、ただの同居人？隣人？レベルの父ちゃんと私だけど、
紛れもなく親子で、彼にとって私は大事な娘なんだなぁと実感できたことが、嬉しいというか、こそばゆいというか。あったかい気持ちになった。
父の実家に到着し、親戚と一緒に美味しいご飯やお酒を呑み食いし、WBCの録画を観て、帰る頃にはしっかりとしたいつもの酔っ払いが完成されていた。(私は人前で呑む時は気が張っていて滅多に酔わない)
帰り道は会話することなく、ひたすら父を介抱。
酔っ払いはやっぱり嫌いだけど、今日は許してあげようと自然とやさしい気持ちになれた。
家に着く直前、
「久しぶりに父ちゃんと母ちゃんに会えて、良かったなぁ。喜んでくれたかなぁ」
べろべろに酔っ払った父のつぶやき。
なんだか心がじんとして、涙がこぼれそうになってしまった。
私はこれまで“父”としての父ちゃんしか見ようとしていなかったけれど、
父ちゃんも一人の人間で、
子ども時代があって、
大人になって、
家族を失う辛さとか、
家族が増える喜びとか、
いろーんな経験をして
今を生きている。
って当たり前のことに今更気づいた。
普段無視したりぶっきらぼうでごめん。
もっと人として大切にしよう。
って思った。23歳にしてようやく。
その日の夜、父は寝る直前まで
「今日はありがとうな。本当にありがとうな」
と繰り返しわたしに言ってきた。(酔いすぎ)
彼からの一生分のありがとうを聞いた気がする。
こちらこそ、ありがとう。
たくさん話せてよかった。楽しかった。
…とは言えなかった！
流石にそんなにすぐに素直で可愛い娘になれない！！！
「こちらこそー、もーいいから早く寝な」
と返し、私も寝た。
あの日から2ヶ月以上経った今、
父ちゃんと私の関係は、
すれ違いざまに「おはよう」と挨拶する程度の、ただの隣人のような関係に戻っている。
やはりこのくらいの距離感がちょうどいいのだ、とも思うが、
あの日のことを思い返しながらnoteを書いている今、日々の私の態度の悪さに我ながら呆れる🤦♀️
人として大事にしよう、とか、父ちゃんも1人の人間なんだ、とか感動してたはずなのに、
まだまだ素直になれないし、ぶっきらぼうだ。ちょっとは父ちゃんへの無視は減ってたらいいんだけど…。
家族なんてそんなもん！って開き直りたくもなるけど、父ちゃんへの感謝とかいろんな気持ち、いつかしっかり言葉で伝えたい。結婚式の親への手紙かな。それまでもうちょっと不器用でわがままな娘でいさせてください🙏