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prologue_hello

深夜1時、独りの部屋でアデルのHelloを流す。


ずいぶん前から知っていた曲だけど、今この状況になって聞くと、歌詞の一言一言に思いが重なる。

今までなら、連絡が途絶えてから何日目かの夜に必ず私から電話をしていた。数年前なら怒りで寂しさを隠して電話はいつもケンカで始まっていたが、最後の何回かは、小さな声で普通に話をするだけになっていた。責めるわけでも、詰るわけでもない。ただ、小さな声で、元気?どうしていた?と聞くだけだった。

最後に電話した深夜1時、何度もならしたけどその電話はつながらなかった。そしてそのまま私は電話をしなくなった。

電話する事が、誰にとっても間違いだっていう事、自分が笑えないくらい滑稽な存在である事、これ以上傷つく事に耐えられないほどに心が擦り減っている事に気がついたから。

あれから自分に言い聞かせ続けた、全部が嘘だったと。でも今でも涙が止まらないのは、やっぱり本物の何かがあったと思っているからなんだろう。どこかで、透明なほどに純粋で、お互いにどんなひどい仕打ちをしても断ち切れない力強い絆が存在しているんじゃないかって、夢見ている。

XXX、

あなたが忘れたであろう思い出を全部覚えている私、あなたが結婚した事に泣き叫んだ私、あなたと離れる事よりもプライドを捨てる事を選んできた私、あなたを気にするあまり下らない事でも怒っていた私、夜中に何度も電話をかけてきた私、最後に静かに謝った私。

そんな私があなたの人生から消えた。あなたは手を差し伸べて引き留めようとしなかった。

これがあなたの本当の姿?これが私たちの本当の姿なの?

答え合わせは、しない事にした。

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