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「国際協力」と「SNS発信」で、社会問題の根本的な解決に挑む──フリーランス国際協力師・原貫太さんの挑戦の軌跡

豊かな食事や労働環境に恵まれた日本。しかし、その地球の裏側では、物乞いをしなければ食べるものがない人や、戦争に巻き込まれやむを得ず参加しなければいけない子どもたちなど、貧しい生活を強いられている人が数多くいます。

そんな中、国際協力師として現地で支援活動をするだけでなく、SNSを通して情報発信にも力を入れているのが、フリーランス国際協力師の原貫太さんです。なぜ原さんは、国際協力に関わろうと思われたのでしょうか?SNSでの発信に力を入れる理由や、今後の展望について伺いました。

原貫太さん
1994年生まれ。フリーランス国際協力師。早稲田大学卒。フィリピンで物乞いをする少女と出会ったことをきっかけに、学生時代から国際協力活動をはじめる。大学在学中にアフリカ支援のNPO法人を設立し、新卒で国際協力を仕事にする。2019年1月からフリーランスに転向し、現在はアフリカと日本を行き来しながら、国際協力をテーマに多様な働き方を実践している。著書『世界を無視しない大人になるために』『あなたとSDGsをつなぐ「世界を正しく見る」習慣』。
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世界の不平等に違和感を感じ、国際協力の道へ

フリーランス国際協力師 原 貫太さん

──原さんは、どのような経緯で国際協力に関わろうと思ったのでしょうか?

大学1年生のときに、フィリピンで1週間ボランティア活動を行うスタディツアーに参加しました。その最終日、帰国するためにマニラ空港に向かっていたところ、ボロボロの白いワンピースを着た少女が赤ちゃんを抱っこしながら物乞いをしている様子を見かけたんです。

その瞬間、大きなショックを受け、2つ感じたことがありました。一つは、様々な地域で支援活動が行われているにもかかわらず、まだ困っている人がいることです。もっと他に目を向けるべき人や解決すべき課題があると気づかされ、後悔する気持ちが芽生えました。

もう一つは、世界の不平等について違和感を感じたことです。例えば、日本にいればお腹が空いたらパンやお菓子をコンビニで気軽に買えますよね。ところが、貧困国には身を危険に晒しながら物乞いをしなければ生きられない子どもたちがいるんです。

それらをきっかけに、どんな小さなことであっても自分にできることをしたいと思い、国際協力に関わり始めました。

──スタディツアーに参加される前から国際協力に興味はあったのでしょうか?

ほとんどなかったですね。当時スタディツアーに参加したのは、あくまで英語の勉強に力を入れたり、就活時の話題作りにできたらと思ったからでした。ほんの軽い気持ちで参加しただけだったので、その少女と出会っていなければ、ひょっとしたら他の人生を歩んでいたかもしれません。

“世界の現状”に気づくきっかけを与えるために、情報を発信


──原さんは、国際協力師として活動しながらYouTubeブログなどの発信にも力を入れられています。なぜ国際協力だけでなく、情報発信にも注力されているのでしょうか?

原さんが発信しているYouTubeの一部

「無力感を乗り越えたい」という思いが根底にあるからかもしれません。先ほどお話ししたように、フィリピンで物乞いする少女と出会い、その光景についてX(旧Twitter)で発信したんです。ただ当時はフォロワーが少なくて、いいねが2つしかつきませんでした。一方で、友人が「スキー合宿してます」と楽しそうな写真を挙げたら、いいねが数十個もついていて、そのギャップに悔しさを感じました。影響力を持つことができれば、より多くの人に事実を伝えられる。もっと世の中の現状を知ってほしいと思い、学生のころから発信を続けていました。

それに、どんなに現地で支援活動をしていても助けられる人の数には限界があると感じていたんです。もっと根本的な問題を解決するには、現場活動だけでは不十分で「なぜ戦争が起きているのか」「なぜ貧困がなくならないのか」とその背景にある原因を知ってもらうことのほうが重要です。

実際に、20年以上も現地で支援活動をしている方から「世界を本気で変えようとするならば、僕が取り組んでいる現場支援と原くんの情報発信のどちらにポテンシャルがあると思う?それは、原くんが取り組んでいる情報発信だと思うよ」と言われたんです。もちろん、現場の支援はなくてはならないものですが、多くの人を巻き込むという観点で情報発信は重要な役割を果たしているのかなと感じています。

──情報を発信する上で、気をつけていることはあるのでしょうか?

事実のみを伝えるように意識しています。自分の主張を押し付けてしまうと、受け取った人の考える機会を奪ってしまうかもしれないですし、反感も買うことになりかねません。より多くの人に情報を届けようとするのであれば、ニュートラルな視点から発信することが大事なのではないかと思います。

イギリスのことわざに「馬を水辺に連れて行くことはできるが、水を飲ませることはできない」という格言があるように、人を変えようと思っても、内発的な変化がなければ本当に人が変わったとは言えません。だからこそ、より多くの人の生き方や考え方を問い直すきっかけを与えることに努めています。

海外向けの発信を強化し、社会問題の根本的な解決を目指す


──知らない国や地域に足を運ぶことに対して恐怖心や不安はないのでしょうか?

もちろん恐怖心や不安は常にありますね。ただ、得体がしれないからこそ恐怖に感じるだけで、いざ現地に向かうと恐怖心は和らぎます。どんな場所であっても同じ人間が暮らしていて、小さい子供もそこで生きています。だから過剰に恐れる必要はないですね。

ただ、恐怖心と実際に起こりうるリスクは別物として捉えるようにしています。例えば、武装勢力に遭遇してさらわれた、という話を耳にしたことのある人は多いと思うのですが、現実的に直面するリスクは意外と低いんです。むしろ、マラリアに感染して命を落としたり、交通事故に合う可能性のほうが高い。恐怖心に襲われて、リスクに対して正しい判断ができなくなるほうが命取りとなる可能性があると感じています。

──見えない恐怖に囚われすぎてしまうことはありそうですね……。そういった実情はあまり知られてないので、恐怖や不安に対するリアルな内容も発信して知ってもらう必要性があることを改めて感じました。

今後、力を入れて取り組んでいきたいことを教えてください。

海外に向けた発信を強化していきたいです。これまでは、日本向けに発信をしてきましたが、本気で世界を変えようと思うのであれば、それだけでは不十分です。かつてアフリカを植民地支配していたイギリスやフランスなどは、日本よりもアフリカの情勢に目を向けています。そういった国に向けて発信することで、より多くの方が社会問題を知る・興味を持つきっかけになれたら嬉しいです。

活動を支援し、原さんの新たな挑戦を後押しする

──ここからは、FIRST DOMINOの大塚さんも交えて、原さんの活動についてお話できればと思います。


FIRST DOMINOでは、よりよい未来の実現に向けて挑戦し続ける人や企業を支援・出資しています。この記事を通して支援先の活動を発信し、新たなシナジーが生まれることを目指しています。


改めて、原さんが大塚さんと出会ったきっかけを教えていただけますか?

原さん:私が運営しているオンラインサロン「Synergy」に大塚さんが入会し、活動を通してお話するようになりました。数年後に突然大塚さんから連絡があり、それを機に再びいろいろとお話しするようになって。私の活動に強く興味を持っていただき、現在はスポンサーとして活動を支援いただいています。

──大塚さんは、なぜ原さんを支援しようと思われたのでしょうか?

大塚さん:理念に共感したからですね。私たちは、儲かる・儲からないといったことはあまり意識していません。数値的な結果や未来の売上を期待しすぎないからこそ、ユニークな活動をしている人を支援できる。原さんも、私たちがスポンサーになることで、より幅広い活動ができるようになるのではないかと思いました。

​​原さん:嬉しいですね。投資家の中には、利益を第一優先にされる方も多いと感じています。大塚さんのような方がもっと増えてくれると良いですね。

──投資家によって理念や軸が違うので、大塚さんと原さんが大切にしたい軸が一致したように見えます。原さんは現地での活動が多いかと思いますが、大塚さんとは定期的にコミュニケーションを取られているのでしょうか?

原さん:はい。日本に帰ってきたタイミングや何かイベントを開催した際に定期的に会ったりLINEをしたりなどして活動を報告する時間を設けさせていただいていますね。いま悩んでいることや、「もっとこうしたい」といったやりたいことをお話して、大塚さんからアドバイスをいただいています。

──大塚さんは、原さんからのこういった報告を受けて、原さんが行っている情報発信についてどのような印象を抱いていますか?

大塚さん:原さんの情報発信は、さきほど自身もおっしゃっていたように、あえて事実だけを伝えることで受け手が様々な解釈をしています。そうすることで情報がさまざまな捉え方をされることにより変容しているように感じるのですよね。
原さんの情報発信の様子を見ていると、受け手によって意味が変わる歌ととても似ているなと感じました。だから原さんの情報発信は、歌手と似ているなとも(笑)。

原さん:そういう風に見ていただいてとても嬉しいですし、興味深いお話です。まだまだ伝えきれていない情報がたくさんあるのですが、動画を作るのにすごい時間がかかってしまっています。そのため、実は2024年から会社を設立し、これまで自分が担当していた業務の一部を任せてもっと情報発信に力を入れていこうと思っているんです。ただ、仲間集めに苦労していて......。

大塚さん:まず自分は何が不得意なのか、苦手なのかを知る必要がありますね。原さんの強みは、情報発信できること。そこに注力できるような体制を整えることが重要だと思います。これからも今原さんが抱えている課題に一緒に向き合って応援しますので、また何かあればいつでもご相談ください。

Produced by 久保田(千休 代表)
Written by 大畑