松井稼頭央が辞めない世界線を探れ

2024年5月26日をもって、埼玉西武ライオンズの一軍監督松井稼頭央氏が、その職を追われる事となりました。代行は現GMの渡辺久信氏が務めるそうです。

現在西武は15勝30敗の最下位。既に自力優勝の目は潰えており、上位進出の可能性も薄い状況です。
松井稼頭央監督は就任一年目の2023年、65勝77敗1分の5位で終えており、巻き返しが期待されていた二年目でした。志半ばで球団のレジェンドが監督を辞めるというショッキングな出来事に、阪神ファンの私も阪神タイガースのカード負け越しがどうでもよくなるほどでした。

チームの総得点数118とチーム打率.214はそれぞれリーグ最下位球史に残る打低環境とは言え、これで勝つのは難しいです。チーム防御率3.29もリーグ5位と投打共に奮っていませんでした。

松井稼頭央監督の評価は様々ですが、よく見る意見は2つあります。
1つ目は「この戦力で勝てというのは酷
2つ目は「二軍監督から指導者経験を積んでいるので言い訳が出来ない
この2点です。

今回私は、松井稼頭央監督を辞めさせないnoteを書くわけですから、1つ目の意見に限りなく近い思想を持っています
戦力を用意したのはGMですから「そのGMが自ら責任を取る」という捉え方にも私は同意しています。確かにそうだと思う。

一方で2019年に二軍監督に就任し3年、その後一軍ヘッドコーチを1年務めて満を持しての一軍監督だったので、ファンの期待も大きかった。それだけに松井監督を擁護しない声もあるんだなぁという感想です。
これもわかります。
東京にある某球団で高橋由伸氏が監督になったようなケースとは違います。西武ライオンズは、手順は間違えていませんでした

でも辞めない世界線を探りたいので「戦力がなぁ。」この思想で今から書いていきます。


戦力について

まずは2024シーズンの現有戦力について見ていきます。

投手

投手は十二球団でもトップクラスです。今井達也髙橋光成平良海馬と高卒の先発陣が期待値通りに育ち、ローテーションを構成。
残り三枚の枠では隅田知一郎武内夏暉松本航の大卒組が堅実に活躍。
もう言う事なしです。中継ぎは現状不安定ですが、セイバーメトリクスさんは問題無いと言いそうなのでそういうことにしておきます。理由は平良にでも聞けばいいでしょう。

野手

ここからが問題です。表をご覧ください。

育成契約の野手は10名

2023年秋のドラフトで獲得した13名のうち、野手は僅か4名。支配下契約は村田のみで、裏を返せば現有戦力に自信があったという事になるでしょうか。ただ本当にそうでしょうか???

まず、ロースター構成において不惑に入る中村剛也、栗山巧の両名を戦力に入れてはいけません。2023年度のwRC+を153、126としているレジェンドに期待をするのはもっともなようですが、年齢を考慮する必要があります。
そう考えれば、1995年までの世代で計算が立つ選手は外崎と源田だけに思えますね。

そして、これからの西武を作っていくべき世代(1996-1999)の空洞化も確認できます。内野手で生え抜きは渡部と児玉だけ
外野手は全て生え抜きとなっていますが、1.5軍クラスの選手ばかり。この辺が活躍してくれないとチームは苦しいですが、総じてコケています
しかもハイシーリング型だと思っていましたが、そうでもない気がしてきました。蛭間拓哉もハイフロア型のように見えます。

その後の世代では、村田、山村、長谷川、古川とプロスペクトが待機していますが、彼らがモノになるには時間が必要です(長谷川はそうでもないが)。
以上のことから「コンテンドを目指すにはまだ早かった」というのが私の結論です。

FA等の流出

選手の流出が多い西武ですが、やはりそれはチーム構成に影響しています。2018,19シーズンにパ・リーグ優勝を果たしたチームですが、その前後でも野手の流出は絶えません。

2018年:浅村栄斗、炭谷銀仁朗・2019年:秋山翔吾
2022年:森友哉・2023年:山川穂高

炭谷は帰ってきたけど

これだけ流出すれば戦力の維持も難しい。
それだけに2022年に源田壮亮、外崎修汰との契約延長に成功したのは評価されるべきなのですが、あまりにも流出し過ぎです。

山川、森の両名の流出は想定内だったと伺えますが、だからといってスムーズに戦力の入れ替えが出来るわけもないですね。

本当に再建出来ていたのか。

NPBは12チーム、各リーグ6チームですから、五年に一度優勝し十年に一度日本一になるのがサイクルとして目標にしていきたいところ。
西武ライオンズは2019年に優勝していますので、2024年となる今年は優勝争いに絡みたいところでした

チームは2020年からリーグ順位を3635と若干低迷し、この間秋山、森、山川と抜けているわけですから再建期間なわけです。本当に再建ムーブが出来ていたのか見ていこうと思います。

打席数の投資

最下位に終わった2021年から2023年の3年間において一軍で若手にどれだけ打席数が投資されてきたか大雑把に見ていきます。
前項で西武の主力となるべき若手が軒並み伸び悩んでいると記しました。彼らの打席数を調べていきます。

・渡部健斗:226打席 打率.202 HR7本
・岸潤一郎:618打席 打率.215 HR14本
・鈴木将平:536打席 打率.237 HR1本
・若林楽人:350打席 打率.249 HR3本
・西川愛也:166打席 打率.150 HR1本
・高木 渉: 80打席 打率.114 HR0本
・長谷川信哉:266打席 打率.212 HR4本

頑張っている印象です。選手によっては怪我もあり、十分に起用出来なかった側面もありつつ三年間で一定の打席数をそれぞれが貰っていました。
鈴木、西川、高木、長谷川が高校生でプロ入りしており、選手の流出に備えて補充を行っていたことも伺えます。
ただ最も大事な事は結果を出すこと。御覧の通り、低調な数字が並んでいます。

2023シーズンに限って見れば、鈴木、長谷川、岸にルーキーの蛭間を加えた四名はそれぞれ200打席前後の投資を受け、一定の成績を収めましたが誰一人としてリーグ平均以上の攻撃力でなかった事は決してポジティブではないでしょう(Data StadiumのwRC+で判断しています)。
トッププロスペクトの長谷川と蛭間に大きな期待を持つのは良いですが、たった一年間の結果で底上げが出来たと希望的観測をするのは、チーム運営においては非常に危険です。若手に投資をするという意思は感じますが、その成果は出ていませんでした。

この期間で一軍出場をしながらチームを去った中堅選手は山田遥楓、川越誠司、呉念庭、愛斗当たりの名が挙がりますが、こういったトランジションが大きな影響を与えたとは言えないでしょう。
特に川越や愛斗に関しては球団の考えあっての移籍でしたし、彼らが西武に残っていたからといって事態が好転していたとは限りません

つまり、埼玉西武ライオンズの再建は未だ終了していません
野手で言えば山村や古川、投手で言えば羽田や菅井、黒田といったプロスペクトの一軍本格デビューはまだ先ですし、現在の一軍戦力が振るわない以上、この状態は長引くことが予想されます

結論と少し思ったこと

総括

松井稼頭央監督は四年の下積みを経ての一軍監督でした。ただ、野球をするのは監督ではなく選手であり、戦力が整っていなければチームが勝つことは不可能です。「新しい風」といった形で監督は迎え入れられましたが、戦力は足りていませんでした。チーム順位に一喜一憂せず、腰を据えて再建をする期間がまだ必要だったという事になります。
一方でメジャー志望の投手が多く、もう一度優勝するためには残された時間は少ない。この狭間で、球団は無理やりコンテンドしようとしたのでしょう。

松井稼頭央監督の手腕には勿論至らぬ点もあったのだと思いますが、そもそも優勝争い出来るチームではなかったと思います。

最後に

渡辺久信監督代行は、会見で「球団からもこの状況をやはり打破していくためにはGMしかないと言われた」と言葉を残した。
「球団」と「GM」は違うのだろうか。球団を統括するのがGMであり、責任を持つのがGMである。「渡辺さんが代わって監督をしてほしい」と言ったのは誰なのだろう。

GMが「監督を代えた方が良い」と判断をするのがある意味健全であり、重要な判断を球団内で提言する人物が複数いてはいけないのでは。

昨オフ、悪い噂が絶えなかったソフトバンクホークスと正面からやりあった渡辺久信GM。GMではなく監督に矛先が向く事の多いNPBの中では珍しく、表に出て発言する事の多いGMであった。
山川穂高のFAを巡る一連の騒動で、現場外の人間としてチームを受け持つ責任を、ひしひしと感じていたのではないだろうか。
球界全体で不祥事が少なくなかった昨オフ、名を上げた一人であろう。

”チームをしっかりマネジメントしていかないといけない立場として今の成績ということで非常に責任を感じていた”渡辺久信監督代行が、どのような采配を振るうのか注目したい。"プロ野球人生をかけて挑む"ゼネラルマネージャーの運用を。



最後に1つの記事を貼っておきます。


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