第2回:『風来のシレン6』 なぜ火遁忍者ばかりが話題に上がるのか

 シレン6で新規追加されたモンスターはそれなりの数いるが、半分ほどは「◯遁忍者」と「◯面山伏」と一括りにして扱われている。のだが、この中に1人、やたらと嫌われている奴がいる!お前やろ!
火遁忍者「違います」


1.種を分けた方が都合が良かった

 そもそも、忍者と山伏はなぜこんなに種類が多いのか。1種類にまとめても良かったのではないか?というところから話を始めたい。

山伏について

 たとえば旧作には「バッドカンガルー」という、モンスターに良い効果がある杖を振るモンスターがいた。山伏はこいつに近い性能をしているとの評を見たことがある。
 では、カンガルーとして実装しなかった理由はなんだろう。もちろん正解は開発者にしかわからないが、「レベル変動によって与える効果が変わる」というのを避けたかったのではないかと推測できる。

 山伏の登場フロアを見てみると、決まって数種まとめて出てくるのがわかる。これをカンガルーに置き換えてみると、レベル1〜4全てが勢揃いする(それでも足りない)ことになる。1フロアの中で、だ。これではレベルやステータスの調整なんてできたものではないし、階層を跨いで登場させるのも難しくなるだろう。
 (そもそも山伏ばかりが出るフロアを作るのはどうなのか、については好みの問題なので触れないでおく)

忍者について

 では忍者種が多い理由は?というと、こちらはおそらく、5種類の特殊能力が多彩だから。山伏の能力は「敵モンスターを補助する」という点で共通している。先に例を挙げたカンガルーにしてもそうだ。
 しかし忍者の能力を全部1種のモンスターに詰め込んだら、ごちゃごちゃして訳がわからなくなるのは明白だろう。シレン5にはフォーリーというモンスターがいたが、あれがナイスなモンスターだと聞いた記憶はない。同じ種のモンスターであんなことやこんなことをしても許されるのは、ボスだけの特権なのだ。

 じゃあ名前や姿を含めて全く違う5種にすれば、水増し感も消えるのでは?と言われれば、それもイマイチかもしれない。想像してみてほしい。少額ギタンを投げる敵。…ガマラの亜種か?吹き飛ばしの罠の効果を使う敵。…タイガーウッホの方が断然驚異だ。水中で佇んでいる敵。…もはやオトト兵よりもやる気を感じられない…
 このように彼らは、忍者というビジュアルと、「ヒョイっと避ける」共通能力があるからこそ成立するデザインなのである。おそらく開発側も一纏めにして作っているだろう。忍びの里のイベントを見るに、世界観とシステムの両立を目指した面もあるかもしれない。

2.シレンはアイテムが生命

 そんな三位一体ならぬ五行一体の忍者だが、話題を見かけるのは大抵「火遁」「火遁」「火遁」である。理由は言わずもがな「落ちているアイテムを燃やしてくるから」だろう。では、それが何故ストレスになるのか。防ぎようがないからという理由もあるが、もっと根本的なことを言えば、シレンが「アイテムを駆使して進むゲームだから」である。

 一般的なRPGではレベルの高さが重要なのに対し、シレンでは装備を含めたアイテムに重きが置かれている。低レベルクリアは昔からやり込みの代名詞だし、レベルを極限まで上げれば裸でもクリアは現実的な作品ばかりだ。しかしシレンでは逆に、レベル1でも鍛えた装備と潤沢なアイテムでゴリ押せるし、レベル99であってもノーアイテムでは野垂れ死ぬのがオチである。

 そしてその大事な大事なアイテムに危害を加えてくるモンスターは、得てして「嫌いなモンスター」との評を得やすい。例を挙げればノロージョ、畠荒らし、いやすぎガッパ、にぎり元締め、マルジロウ、行商人などなど。名前を見るだけで顔が渋くなるではないか。他にも、旧世代のファンブック「ビックリの壺」の読者投票では、イアイが堂々のトップを飾ったそうな。

 そしてシレン6では、彼らに加えて火遁忍者というルーキーが名を連ねることとなった。他4種にはない「アイテムに危害を加えてくるモンスター」という特徴を有しているからだ。これは失敗なのだろうか。否、実はしっかりと練られたものなのだ。

3.実は調整としては合格

 まず燃やせるアイテムの種類が絶妙で、草・巻物・杖・桃まんと、見事に消耗品を狙い撃ちにしてくる。地味に痛いがリカバリーもしやすい品々だ。
 これが装備や壺などの貴重品まで燃やしていたら、今の比にならないほど不満が出ていただろう。文字通り炎上してたかもしれない。
 また、おにぎりに対しては、焼きおにぎりとして残してくれるという温情も見せている。

 上で防ぎようがないと書いたが、道具寄せの巻物や無欲香など、全く手段がないわけではない。他にも、いらないアイテムを投げて気を逸らしたり、腐ったおにぎりを焼くアテにしたり、(おにぎり以外の)手持ちアイテムには被害が出ないなど、語れる要素は山ほどある。知識と状況次第で、毒にも薬にもなりえる、とても『シレンらしい』モンスターなのだ。

 少し昔話になるが、シレンDSで追加されたモンスターに「カラカラペンペン」というヤツがいた。手持ちのアイテムを破壊した上で、道具枠を1つ封じるという迷惑極まりない敵だ。
 対策は、『ない』。せいぜいアイテムを置くか、隣接しないか、状態異常にするか、くらいのものである。たとえばゲイズなら、一ツ目殺しやゲイズの盾といったメタアイテムがあるのに、カラカラペンペンにはそれもない。テクニックとして利用できる要素すらない。当然ながら人気も一切ない。本当にないない尽くしのモンスターだった。

結びに

 ちなみに、カラカラペンペンとヒーポフは同期である。ヒーポフはその後も頻繁に登場しているのに対して、カラカラペンペンの方はまるで音沙汰がないことから、いかに嫌われていたかを察してもらえるだろう。
 そんな忌み子のようなモンスターと比べれば、火遁忍者など可愛いものだ。それこそ、宿場浜でミーミー鳴くゲイズと同じように見えてきた時が、貴方もいっぱしの風来人になれた時なのかもしれない。

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