第1回:『風来のシレン6』 とぐろ島の神髄について思ったこと
自分の周りで「神髄が簡単かどうか」と議論になっているが、個人的な感想は「易しいじゃなくて優しい」になる。つまり簡単じゃなくてユーザーフレンドリー。難易度的には4や5と大差ないかと思う。
1.神髄に行くまでにダンジョンをいくつもクリアする必要がある
これら自体がチュートリアルを兼ねているというのは経験者なら感じ取れると思うが、全て目標が浅い階層かつ『潜りたくなる』ダンジョンである。これが重要。(デッ怪ラッシュが嫌いなどの好みの話はまた別)
4や5はもっと不思議がクリア後にすぐ挑めることと、コンセプトダンジョンがチュートリアルでないことから、良くも悪くも経験者が喜ぶようなデザインだった。ダンジョンセンターが味気なかったことを批判した風来人は果たして何人いただろうか?
しかし今作はほとんどのダンジョンがメインからの分岐なので、半ば強制的に見ることになる。ストーリーもちゃんとあるので、導線もバッチリ。これは初級者にとても優しい。
一方で杖巻領域や推測裏などは面白さと実用性を兼ね備えているので、ベテランでも潜るモチベになる良い塩梅。
2.運ゲーは低層集中のバランス
1Fで大砲死、2Fでバッタ死、3Fでマルパコ死…等々、散り様は枚挙に暇がないけれど、ほとんどは10Fくらいまで(ネットワーク危険度参照)で、そこを越えれば冒険失敗は極端に少なくなる。つまり、やり直しが容易で、とっつきやすいということ。誰だって、時間をかけて進んだ回で理不尽に負ければストレスだし、序盤に呆気なく散れば笑いの壺にしてすぐ再挑戦できよう。
以前の作品では、中盤以降でもなす術なくやられるという状況がままあった。初代の36F以降やアスカ見参のアーク・大根・元締め大発狂など好例だろう。しかし、今作ではこういった事故はかなり少ない。大抵は、プレイヤー側がしっかり策を練った上でミスを連発しなければ、ちゃんとクリアできるようになっているのだ。
3.正解が多い
これは個人的に最も強調したいポイント。
今作は、部分部分で意図的に大味に調整している節が見受けられる。白紙は山ほど手に入るし、金神器はカブラ風魔より強い。印も共鳴もバリエーション豊富。その上ドスコイが強烈だから脳筋ゴリゴリプレイもできるし、透視忍び足でガン逃げでもOK。これこそが公式の掲げる「原点回帰」的なバランスなのだ。
たとえば初代の吸い出し分裂など、たとえば2の草受けやモン壺など…と同じように「これを引けば勝ち確」という要素はあった。これらはナンバリングが進むにつれて洗練化され、削られていた。4や5では、透視や山彦盾など強力な道具はことごとく分割&ナーフされ、深層では即降り推奨なバランスになっている。
ニッチな話になるが、GB2はこれの極地だったと思う。50F頃に「ここで稼いでください」と言わんばかりのフロアがあるのだが、ここで限界まで稼いだとしても、深層ではガチ『れない』バランスだった。神髄で言えば山姥セット+99でタイガーウホーンに殴り負けるようなものだ。推奨どころではなく、即降り以外『許されなかった』。
しかし今作ではガチり・搦手・即降りのどれでも許される。このような自由度の高さはプレイヤーの間口を広げ、好評も得やすい。「ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド」で祠の解き方が奇抜で話題になったように、「ストリートファイターⅥ」でモダン操作が受け入れられたように。あらゆる事象で、先鋭化とマンネリ化を打破できるかが転換点になる。それこそ、ゲーム業界が廃れかけたのを任天堂がWiiやDSで立て直したのもそうだ。
4.縛りが緩い
ナンバリングが進むにつれて、もっと不思議で満足できなくなった風来人が増えて、より高難易度のダンジョン(通称「裏」)が登場した。これらはモンスターやアイテムテーブルが弄られていたり、夜を追加したりなど、ゲームシステム側で縛りを入れたものが多かった。
しかし、いわゆる裏神髄は、ダンジョン自体はとぐろ島の神髄と変わらず、持てるアイテム数が徐々に減るというもの。これはプレイヤー側で自主的な縛りプレイをしているのとほぼ同義だ。しかも、縛りに失敗しても通常クリアを目指して続行することもできる。これはつまり、「難易度を上げたい人は自分でやってね」という公式からのメッセージなのだと思う。
実際、ゲーム開始時のジャカクー戦クリアや、合成・身代わり・桃まん未開放神髄クリアなどを成し遂げている熟練者もいる。しかしそれらは報酬を伴わない、あくまで自己満足のやり込みの範疇だ。これらは上でも述べた自由度の高さに通ずるものがあり、楽しめるプレイヤーを増やすことに繋がる。
結びに
これらを踏まえた上でもう一度まとめると、様々なプレイスタイルを許容するような、プレイヤーに寄り添った作品になっているということ。クリアへの道筋が増えているので、知識の多いベテラン風来人にとっては、難易度が低いと感じるかもしれない。しかし、それは決してヌルい訳ではなく、いろんなプレイヤーに楽しんでほしいという、開発からの配慮の賜物だと思う。マゾゲー路線をやめて万人受けを目指したことを「簡単」の一言で済ませているうちは、シレン6の『真髄』を味わえていないのではないだろうか。