見出し画像

航海の先に。

6月に入って、しばらくnoteを更新していませんでした。外に出ることが多くなり、これまでできなかったことをやり始めて忙しくなってきた6月でした。

6月3日よりイタリアは州を越えて移動が可能になり、その最初の週明けにプチヴァカンスに行って来ました。フィレンツェ があるトスカーナ州の西の海にあるエルバ島です。イタリア語ではIsola d’Elba(イゾラ デルバ)と呼ばれます。エルバ島は鉄が産出される島として有名です。古代から鉄が採れて、加工品を作っていました。鉄鉱石の種類も他の鉱石の種類も豊富に採れ、名前もこの島で採れるイルバイト(珪灰鉄鉱 Ilvaite)のラテン語のイルバIlvaが中世の時代にilbaやhelbaになり、エルバElbaになったと言われています。

フィレンツェ から車を走らせること、2時間。ピオンビーノという街の港から出るフェリーに車ごと乗船。出港して約1時間ほどでエルバ島に到着します。着いたエルバ島の港は、ポルトフェッライオ。(Portoferraio)意味は「鉄の港」ですが、13世紀から、この地域は紀元前エトルリア人・ローマ人の時代の製鉄業にちなみFerraiaと呼ばれていました。ロドスのアポローニオス(紀元前3世紀初期 - 紀元前246年以降)という叙事詩人であり学者が、金羊毛を求めてイアソンとアルゴナウタイの冒険を描いた、『アルゴナウティカ』という本を書いていますが、その中に出てくるギリシャ神話の英雄イアソンが魔女キルケーを探している途中にたどり着くのがこの港で、古代はポルトアルゴ/Porto Argo(Porto港+Argo白)白い港と言われていたそうです。

フランス皇帝ナポレオンが19世紀に追放された場所でもあり、今も博物館として現存しているムリーニ宮殿に300日弱過ごしていました。『エルバ島を見るまでは、私に不可能はなかった』と言い残しています。ただ、ここで終わってはいません。この後ナポレオンは脱出して、また権力を取り戻します。百日天下と言われた復位も戦争で負けて捕らえられ、さすがの2回目の追放では脱出ならず、南大西洋の孤島セントヘレナ島に幽閉されて病死(暗殺説、中毒説が別で噂されていますが)しています。

そのナポレオンが滞在していたポルトフェッライオのムリーニ宮殿も、私が訪れた時にはCovid-19感染防止行動規制により、まだ再開していませんでした。この宮殿のある通りを海の方に向かって坂を降りて行くと、小さな砂利の浜辺に出ます。そこは水が透き通る美しい海。砂利の上に座って、波の音を聞きながら瞑想をしました。少しずつ浄化されていくのを感じながら。

美しい海の浜辺を後にし、港まで戻ってインターネット情報で評判のあるレストランで美味しい魚介のスープでお腹を満たし、ポルトアズッロ/Porto Azzurro(青い港)に向かいます。国内旅行者のみの期間でプロモーションをしていた高級ホテルに格安に泊まることが出来、しかも夕食と朝食の2食付き、スパまで付いている豪華っぷり。まさにこの危機に際した特別な時期ならではの「棚からぼた餅」な滞在でした。エルバ島は通常は物価の高いリゾート地で、ハイシーズンに格安値段で来られるチャンスはもう2度とないでしょう。なぜ、ここまでラッキーだったのか?確かに、この感染病でロックダウンした直後、某ブッキングサイトの常連で会員レベルも上がってるから?という端的な理由もあるのですが、その幸運を授かったもう一つの縁に気がつきました。このポルトアズッロに、ギリシャ神話海の神、ポセイドンの像があったのです。しかもコムーネの建物の前に。別の場所にも。それらは現代彫刻ですが、きっとこの地に引き継がれているギリシャ神話からの伝説。古代ギリシャ時代より、ポルトロンゴーネと呼ばれていました。湾とそれを望む高台に守りの要塞があります。ロンゴーネについてはまた深く追求していくとして、ポセイドンがいて、しかもこの港の高台には聖ヤコブの教会があります。(今回は訪れていませんが湾になっている対岸のホテルに泊まりました) ポセイドンが歓迎してくれたのは、訪れたこの日が偶然にも世界海洋デーだったことと、まだ途中ではありますがオデュッセイアの解釈を勉強中であることが縁になっているのだと思います。また、聖ヤコブについては、また別の記事にて書きます。

世界海洋デーについては、こちらを参考に見てください。https://ja.wikipedia.org/wiki/世界海洋デー

トスカーナ州を出ずに海を渡って出かけたプチバカンス。海と美しい景色、美味しい食事、リラックスで終わればそれまででしょう。今回はまるで謎解きや宝探しをしているような感覚でした。海を渡れば、そこに古(いにしえ)の謎が潜んでいるのですから、面白いですね。実際にもエルバ島は鉱石鉱物が採れる宝島だったののですから。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?