成人式の思い出。

ちょうど10年前の成人の日。

大学進学により上京してからちょくちょく連絡が来てた元ヤンの宮村から「達っちゃん（元ヤン）に車出してもらって皆（ほぼ元ヤン）で成人式の会場に行こうぜ。」と連絡が来た。

文字面だけ見ると最悪に見えるが僕は当時その元ヤングループからのお誘いがめちゃくちゃ嬉しかった。
なぜならこのグループは中学校当時のスクールカーストトップグループだったからに他ならない。

20歳の僕は中学を卒業してもあのカースト1軍のグループに成人になった今でも参加できるんだとカーストの価値を再び噛みしめていた。

そもそも不良でもない僕がなぜそのグループにいれたのかというと、中学生の僕はイジられ役を全力で全うしており、イジられてはツッコんでイジられてはツッコんでの負け芸の繰り返しの日々に流石のヤンキーたちも皆笑ってくれたからである。「お笑い」がダサい僕とヤンキーの接点をも生み出してくれた。
ただ僕はそのグループにずっといるわけではなく、普通の人たちのグループにもいたので負け芸を駆使してでヤンキーと普通グループを行き来できるようになってた。

そんなトップグループに成人式に誘われた。
ぼくはテンションが上がった。

宮村からの電話に二つ返事で了承しワクワクして集合場所に行ったら既に皆が集まってた。

「遅れてごめん〜。」と駆け寄った僕の目の前に広がってた光景は今でも忘れらない。

目の前には気合の入りまくった赤や青の鮮やかな色でギラギラした袴集団がそこに居た。

見た瞬間思った。

『うわぁ！爆裂にダサい！』

昔成人式のニュースで見た袴を着て暴れるやばいやつらが実は目の前の彼らにも該当してたことにこの時初めて気づいた。

でも彼らがダサいわけない。なぜならカーストトップだったからだ。そう自分に言い聞かせたが目の前の行きすぎた仮装と昔の彼らとのギャップに苦しむ。

「うぇーい大！久しぶりじゃーん！」の挨拶に返事はしつつも僕は苦笑いだった。

1人だけヤンキーじゃない体育会系の野球部のやつがいてそいつだけは僕と同じスーツだった。
スーツの僕とこいつがやはりダサいのか？と思ったけど身の丈を越えすぎたサイズ感で過度にギラついた袴と、こんなに寒いのに何故か右手に持つ無意味な扇子が何度見てもダサいと思えて仕方が無かった。

ショックだった。中学の頃からイケててカッコいいと思ってた彼らがもしかしたら「成人」という視点で見たらダサい人という事実。
1人は結婚もしてるからそれ知ってると余計に。

とりあえず車で向かい、会場に着いたら夜の同窓会まで自由行動ということになり、僕はすぐ彼らからわざとハグれる形で離れ、別の平和な仲良しグループと落ち合った。

後で聞いたが、ヤンキーたちは他校のヤンキーともワイワイつるんで、うち1人はハイテンションモードを抑えきれずコンビニのATMを破壊し警察に連れてかれたデストロイヤーが爆誕したと聞き、あいつらから離れてマジで良かった。

その後の同窓会でもヤンキーたちは大はしゃぎ。

酒という最悪の武器を手にした彼らは大はしゃぎする免罪符を手に入れ、会場のど真ん中で暴れまくり、仕舞いにはちゅうえいさんの一発ギャグをもろパクりして盛り上げてた瞬間はとんでもなく香ばしかった。

彼らは身なりから何まで必死に「あの頃」を取り返しに来てるのがヒシヒシと伝わった。

僕はもうそれを見て必要以上に彼らと喋りたくないのにドカっと元ヤンキー数人が隣の席に座り、酔ってたのでテンションが上がって突如ほっぺにキスされた直後ノータイムでビンタをかまされ「いや、てっちゃんやりすぎ〜！ww」みたいな地獄の酒の席が生まれた瞬間は「うおおおををあああああ！！！！ぼく上京して良かったぁ〜！！！！」と心叫びで破裂した。

お笑いサークルで毎月楽しくもしっかり準備してライブやってその後打ち上げで先輩後輩同期としょうもないくだりの応酬を肴にしっぽりと酒飲んでゲラゲラ笑い合うことのが性に合うんだなとこの時はっきりわかって良かった。

価値観のアップデートを実感した。

僕はすぐに席を移動して仲の良かった平和なメンバーと酒を飲んであの頃やってた内輪ノリにキャッキャすることを選んだ。これで良いんだと何度も思えた。

そんな同窓会も終わって帰り際、小学校の時好きだった坂本さんに5年ぶりに再会した。めちゃくちゃ綺麗になっててすごいびっくりした。
意外に向こうも久しぶりの再会にテンションが上がって「写真撮ろー！」と言ってくれた。

僕はそれが震えるほど嬉しくて早速撮ってもらった写真を見た。

写真には綺麗な坂本さんの隣で腑抜け笑顔でヘロヘロダブルピースをしてる狩野がそこにいた。

散々彼らがダサいと言ってた僕は僕でこの瞬間完全に童貞がほとばしっていてそれはもう究極にダサかった。

「成人式」は男たちの精神そのまま「あの頃」に戻すダサタイムスリップ装置なのかもしれない。