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THE 日記(1/1〜1/12)

一月一日から一月四日
 『味方の証明』を書いたりApexをやったり雑煮を作ってそればっか食っていた。特になし。ただただぼーっと時間が過ぎた。途中で辞めていたトマス・ピンチョン『ブリーディング・エッジ』の続きを読み出した。マジでおもろい。

一月五日
 しっかり早寝していたから今回こそはフヅクエの会議に寝坊せず参加。
 CoCo壱の出前を頼んでみた。思ってたより安い。スープカレーがうまい。ちょっと昼寝して、働きに向かう。

一月六日
 早起きして洗濯機を回す。食器を洗う。衣服を畳んでしまう。なんて気持ち良いんだ。だけどどうせ明日にはリズムがぐちゃぐちゃになるだろう。

一月七日
 家から一歩も出なかった気がする。『味方の証明』を書いて、Apexやって、そればっかり。

一月十日
 新宿に行った気がする。ブルーボトルで『ブリーディング・エッジ』をちょっと読んだはず。そのときに満腹感を感じていたのは覚えているけど、何を食ったんだっけ。一蘭か? 思い出した、一蘭を食ったのは一月二日だ。俺は一月二日にも新宿にいた。一蘭はおいしかったけど混んでいて、少し居心地が悪かった。一蘭を食ったあと何をしたのかは覚えてない。「こんな新年早々一月二日からわざわざ一蘭食わなくてもいいんじゃない?」と自分に思ったことだけを明確に覚えていたからそこだけしか記憶がない。それはいいとして今日はなんで満腹なんだ? 何を食った? いつもは丸ノ内線で新宿に行くけど、この日は確か中央線から新宿に行った。思い出した。髪を切った。二年間伸ばしていた髪をズッポリ切った。起きて、白いカーテンが柔らかく日差しを遮るキッチンでなんとなく、今から髪切ったろうかな、と思ってそうした。初めて行く美容室を予約して、「切りやすいようにもう最初にザックリと切りますね」と言われて、ズバッと一太刀でおおよそ切ってもらい、すると美容師さんが捌く前のマグロを見せるかのように「これです」と切った髪のショー・タイムが始まった。その一太刀の前に「大丈夫ですか? 未練ないですか?」と確認もしてくれて親切だった。きっといざ切るとなったらビビって泣いてしまう人とかもいたんだろう。青っぽい色に染めてもらったが、実際の出来はほぼ茶髪で、よく見るとMA-1のジャケットのような燻んだ感じにはなった。外に出て駅前で自撮りを撮って恋人に送る。もともと恋人から「お揃いにしようよ」と言われて始まったロン毛だったけど、もう大体追いついたのでいいだろう、ということで切った。そのことも美容師さんに話した。昔はやたらに苦手だった美容室も、「もう何もかも言う」と決めてからかなり楽になった。小説書いたりしてます、普段は飲食店でアルバイトしてます、恋人からお揃いにしようって言われて、ドライヤーがめんどくさくて、家こっから近いです、とか、もう何もかも話した。これが一番ええ。
 しかしなんでブルーボトルで俺は満腹だったんだ? このあと何か食ったっけ? 食ったわ。マック食った。落合が毎日のようにマックマック騒いでいるからそれに釣られて新宿の東南口のマックでダブルチーズバーガーセットを食った。一月二日に一蘭を食ったのは木村くんがラーメンラーメン言ってるからだった。iPhoneの電池が切れていたからブルーボトルは割とすぐに出た。帰宅。
 少し前から『味方の証明』ともう一本小説を書き始めていて、これもこれでかなり良いのが書けていて、大体二個同時に書くとどっちかに偏ったり、最終的にもう片方を完全にボツにすることが多いけど、この二つは多分どっちもゴールしそうだ。タイトルも決まってないそれを黙々と三千字ぐらいゆっくり進めて、Apex。

一月十一日
 帰宅する電車の中で俺はまだラップスタア誕生のeydenくんのライブを観ていた。そしたらあとはまたサイファー審査のサイバールイちゃんを観て、喉電波を観て、と繰り返す。名前は出さないけどとあるラッパーがeydenくんのラップに対して「ヒップホップに根付く男尊女卑的な価値観が好みじゃない」と言っていたけど、果たして本当に男尊女卑なんだろうか、と考えていた。「ギャルの腰に手当てて揺れるケツ、kissするGUCCIベルト、たまんねーぜやっぱこれだね、ガキのままでmake」とかのリリックに対して言ってるんだろうけど、これって男尊女卑なのか? 実感を歌っているだけで差別ではないと思う。すき家の牛丼はうまい。とか、そういうレベルの話だと思う。雪降ったら寒い。近所の野良犬かわいい。あったかいお風呂は気持ち良い。ギャルとバックでヤるの最高。てことを言ってるわけだから、それって差別なのか? 実感を歌うことと女の人を見下していることは全然別の話だ。
 そしてこのリリックは一行ごとにカメラポジションが変わっていく凄いリリックでもあった。
「ギャルの腰に手当てて揺れるケツ」が一人称視点、男の目線のカメラ。
「kissするGUCCIベルト」がバックルを寄りで撮ってる三人称視点のカメラ。
「たまんねーぜやっぱこれだね」が実感(精神)を撮るカメラ(男の顔や気持ち良さそうに見えるものを撮る)。
「ガキのままでmake」で今後や全体の話。次のシーンに飛ぶカメラ。

 Awichさんが女の人目線からの快感やエロさを歌う度に、俺は男だけどぶち上がる。セックスに限らず快感を着実に描写する力に手を挙げているだけで、差別に向かってイイネしてるわけじゃない。
 かと言ってそのラッパーを攻撃したいわけでもなく、自分の中の気持ちに整理を付けたかっただけだ。だからそのラッパーの「男尊女卑的な価値観が好みじゃない」という発言は俺にとってとてもありがたいものだった。
 小説や短歌を、誰かや何かを蔑ろにしたくて書いてるわけじゃなかった。誰かや何かを蔑ろにしてしか得られない気持ち、生きていけない人たち、というのがあって、それを書いている。肯定はしていない。否定もしていない。存在をそのまま書いている。そして別にそれのみを書いているわけじゃなかった。たくさんある対象の中でそういうのもある、というだけだ。



パンクスがまいばすけっとで犬を買う 八年経ったらその犬死んだ



肉骨茶を煮込む巨乳の女たち 揺れる花束 鉛の指輪



セブンティーンアイスを食べてる盲導犬 薔薇の花束飛び交う鳥葬



葬式にロバ連れてったらダメですか iPhone白だと怒られますか



洗濯機、夕日の塊、プレステ2、揺れるカーテン、黒人差別



いじめっ子JKの杭打ち騎乗位 長屋の表に盆踊りの火



ばあちゃんの切れた右肘治すため燃やした裁判出頭命令

 出来事や物体や気持ちの極端さ平凡さに関わらず全てが同時に存在するこの世の中で俺たちは程度の差はあれど確実に理不尽なものと対峙しなきゃいけない。だから俺はそういうのをぐちゃぐちゃに書いて、眼前に現して、どう処理していくべきかを考えているだけだ。電車に乗っていて急に刃物で切りつけられたらどうすればいいのか、というのを考えていた次の瞬間には「明日の子供のお弁当どうしよう」が存在する人生で。猟奇的殺人鬼にだって違法薬物の売人にだって「あったかい緑茶飲むと落ち着くわぁ」の気持ちがあるし、温厚な数学教師にも優しいおばあちゃんにも「あいつ殺してえ」の気持ちがあっても何ら不思議じゃない。

 四時か五時に羽毛布団の中にくるまるも、全く寝付けず、朝の八時ぐらいになっていた。ブチギレながらまたプレステをつけてApexをやる。無茶苦茶だ。そのままAmazonで本を五冊ぐらい買った。はっはっは!

一月十二日
 五時間ぐらい寝て起きたら、もう本が一冊届いていた。早すぎる。ドストエフスキーの『死の家の記録』。新品で買ったのにカバーがところどころ小さく破けていたりヨレていたり。どうせ汚すことになるんだろうけど、最初からこんなボロボロなのは全然嫌だ。働きに向かうバスの中で読んだ。おもろい。
 帰りの電車でも読む。おもろい。
 コンビニで買えるぜんざいを毎日のように食っている。一日に二回食う日もある。食い過ぎ。このあとも多分食うだろう。大丈夫?

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