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THE 日記(7/6〜7/29)

七月六日
 映画館で『パターソン』を観た。良い映画だった。久しぶりに観たらちょっと泣きそうになった。普通の脚本家だったらあのバーを「家庭の悪口を言う場所」として機能させるけど、そうしないのがかっこいい。いや確かに家庭とは別の場ではあるから、パターソンが「彼女は僕のことを理解してくれている」と言うことが、そのセリフが全てだった。二人は上手くいっている。
 霞ヶ関まで歩いて、そっから丸の内線で帰った。

七月九日
 『くらいくらい公園のタネマシンガン』を公開。Twitterに直接埋め込んだ動画とYouTube本編の方の視聴数の乖離が凄い。やっぱ全然観てくれないんだな〜と思う。
 CRカップのメンバーが発表されていた。NIRUさん&釈迦さんチーム、ボドカさん&ギアさんチーム、が楽しみ。
 Apex。ローバとホライゾンを使うようになった。ホライゾンのリフト上昇スピードが速くなって、結構使えるようになった。ローバのアビリティは上にあんま行けない。

七月十八日
 森奈ちゃんがうちに来て朝まで話す。

七月十九日
 休み。ずっとApex。十三時間ぐらいやった。
 途中でコンビニに行ってレッドブルやタバコ、ごはんなどを買った。
 夜、木村くんとぺっちゃんとランク行ってたら木村くんが回線落ちして、家のネット回線が死んだらしく、それはVDSL方式だった。もうなんか珍しい気がするんだけどまだ意外と多かったりするんだろうか。
 小山田圭吾が辞退した。

七月二十日
 バスの中が混んでいた。だせぇヴィトンのクラッチバックみたいなのを持った長身のすらっとした男が俺の隣に立っていて、いつも乗客がたくさん降りるバス停に着くと、乗客が降りる前に後ろの席に座ろうと歩き始めて、そのせいで降りたい人たちが降りられない。俺はこういう馬鹿が本当に嫌い。考えろよ。お前が座りたい席はまずその人たちが降りないと空かないだろうが。こういう奴はそいつにとっての一番の苦痛を四六時中味わいながら生き続けろ。
 コンビニでポカリとチョコを買うためにレジに並んでいたら、目の前で小学生二人組がアイスボックス(あのグレープフルーツ味の氷のうまいやつ)を二つ買おうとしていて、消費税のことを考えていなかったのか二百円しか持っていなかった。店員さんが「二百十六円で〜す」と言った。それで男の子の元気な方が「え?」となって、店員さんが「消費税あるんで二百十六円ですね」と、優しくも冷たくもない温度で言った。元気な子が「じゃあ一個にします」と言い、冷凍庫の方に戻しに行ったので、残ったおとなしい方の子に「買うたろか?」と話しかけた。すると明らかに怯えている様子で「大丈夫です」と言われ、それは完全に不審者を見る目つきだった。東京だな、と思った。誰かわからない、意味のわからない他人がうじゃうじゃいて、その前提をみんなが取れている。という共通認識まで取れている。十六円ぐらい奢るし、奢ってもらえばいいのに、確かに怖かっただろう。デカイし滝廉太郎みたいなメガネをかけているし腕長いし。余計なことをした。でもまた同じ状況になったら「買うたろか?」と言ってしまうと思う。一人一個食べたいじゃん。だって。俺の十六円で小学生の夏休み始まりたてのこの日がちょっとでも良い感じになるなら払いたい。それが知らない小学生でも。これは善意とかではなくて、むしろ俺がそうしないと気が済まないみたいな話で、だから怯えられて当然だった。それが善意だろうが悪意だろうが、「そうしないと気が済まない」で他人に話しかける奴は不気味だ。ここがメキシコなら死んでただろう。でもここは七月二十日の下北だった。
 恋人や友人にその話をすると、「もう十六円直接その子たちに渡せば良かったんだよ」と言われ、確かに、と思った。

七月二十二日
 オリンピックスタート。みんな手のひら返しで普通に楽しんでてキモい。引いた。選手がどうのこうのとか、始まってしまえば、とか全部うるさい。ダメなもんはダメ。めちゃくちゃ人死んでるから。関係ねえよ。クソ。

七月二十三日
 語りの形式として三人称を用いるのがいいんじゃねえかとふと思いついて、なぜか今まで一人称にやたら拘っていたけど、三人称で書き始めたらやたらスラスラと進んで、一人称だと物語のメインロードから脇道に逸れることが難しく、それをやっとクリアできた。簡単なものだった。こんな簡単なことに気付けないせいで今までずっと詰まっていたのか、と思った。
 三人称で『影分身と饅頭』を書き直した。

七月二十四日
 くらいくらい撮影日。
 ぺっちゃん、落合、西上くん、クイズ、ポテサラ、の順にうちに来た。
 二個ぐらい撮って、渋谷に移動。コタローが合流。
 楽しく撮る。
 ポテサラの家に移動。吉野家で牛丼を食う。うまい。
 ヘロヘロで撮影。完了。ボサノヴァ(ポテサラが飼ってる亀)が大暴れしていた。
 ポテサラは綺麗好きで、前の家もめちゃ綺麗だったけど、最近引っ越してきたこの部屋はめちゃ汚くて、「どした?」と聞いたらApexやりたすぎて荷解きを進められてないらしく、笑った。
 移動中、落合に小説の冒頭部分を送っていて、帰宅して風呂から上がると、その感想が来ていた。三人称メインが良いんじゃないか、という感想だった。やっぱりそうか、と確信に変わった。髪を乾かして、滝口さんの『高架線』、町田さんの『告白』、千葉さんの『オーバーヒート』、柴崎さんの『千の扉』を本棚から引き抜き、そこだけに着目して読む。三人称だ。全部。勝手に一人称だと思っていた。いやこれは、一人称とか三人称とかそういうデジタルな理解ではなく、どの書き手も自分が書いていることを請け負って逃げないという姿勢の現れだった。ハンドルをどこにでも切れるポジションをキープしている。なんで気付かなかったんだ?

七月二十五日
 高円寺で回転寿司を食った。あんまうまくなかった。
 西上くんと喫茶店に入った瞬間ポテサラから「北口でタバコ吸ってる」という連絡があり、店員さんに「あ、すいません、やっぱり出ます」と言うと、「密だった?」と聞かれ、「いや、待ち合わせしてる友達が思ってるより早く着いちゃって」と応えると、「そうかそうか〜」と、店を出た。西上くんが「知り合いっすか?」と聞いてきた。
「いや違うよ」
「え、めっちゃタメ口っていうか、フランクでしたね」
「ね。全部あんな感じでいいと思うけどね」
 本当に全部あの感じで良いと思う。
 そして俺はすぐに「いや、待ち合わせしてる友達が思ってるより早く着いちゃって」と素直に言えるようになった自分のことを褒めてあげたい。

 吉祥寺のルノアールでタバコを吸いながら「オリンピック死ねよ」の話をして、SKITに行った。ポテサラがアシックスのスニーカーを買った。アンジーが来た。ぺっちゃんちに行くと、ポテサラがぺっちゃんファミリーに「新しい靴買ったんですよ」と自慢して回って、みんな優しく「かわいい」と褒めてくれていた。ぺっしも最近ニューバランスのスニーカーを買って、それを見せるとみんながさっきのリアクション以上に「え!かわいい!」と盛り上がって、ポテサラが真顔でそれを見て、「ぺっし、それ持ってくるのやめて」と言うと、ぺっちゃんファミリーは大爆笑、ポテサラはこうして一躍大スターになった。

七月二十七日
 感染者二千八百四十八人。過去最多。どした?
 川又さんに「Apexっていうシューティングゲームにハマったせいでイライラしてタバコの本数増えちゃってるんですよ〜」と話した。
 プールサイドがキングオブコントで二回戦に上がったので、その動画を観た。おもろかったし、お客さんにもウケていた。凄い。あの量の笑い声を直接的に浴びることへの苦闘を思った。
 いつもはバスだけど、今日はなんとなく電車で帰ることにする。柴崎さんの『千の扉』を読み続ける。おもろい。
 帰宅してApex。ポテサラと。ジブラルタルでハンマーを獲ろうとしていたけど、やっぱり何かピンと来なくて、ポテサラが寝たあとに一人でカジュアルを回す。やっぱりバンガを使うことにする。そしたら途端に勝つ。バンガしか使わなくていいや、と思う。
 ツイッターで「文章を書くことが好きで楽しんで書いてる人よりもめんどくさがりながら業務的な態度で書いてる人の文章の方が、自己実現とかじゃなくて相手に伝わるかを考えて書いてるからおもしろい」みたいなツイートを見て、「人によるやろ」と思った。後者は確かに必須の考え方だと思うけど、別にだからって楽しさとの関わりは完全に人それぞれだ。千葉さんみたいに「書くのも読むのも好きなのに」と小説中に書いちゃう人もいる。そのツイートはこういう風に考える契機になるから良いな、と思うけど、その他のツイッターが本当にうるさい。でもそれは小説や短歌を書く時に特に思うことなんだけど、絶対ノータッチで乗り切ってやる、と思う。触れない。これは日記だから書いてるけど。何か物語を作る時にそういうおもしろくない気色悪さに呑み込まれない。注意。

七月二十八日
 十三時に起きて、舐達麻のTシャツを着て、出る。日差しが暑い。
 高円寺まで歩く。途中、小さな車道を横切った。車道の真ん中で後ろを振り返ると、環七と交差するところが見えて、真ん中の消失点に向かって木や花が規則的に生い茂っているのが見えた。赤・黄・緑の草花たちが良い景色だったからしばらく立ち止まってそれを見た。車は来そうにもなかった。自宅から駅のホームまで歩いて二十分ちょうどぐらいだと知った。自販機でポカリを買う。柴崎さんの『千の扉』を読み続ける。中野で東西線に乗り換えて、高田馬場。ロマンに入る。タバコが吸えるみたいで嬉しい。高田馬場に来るといつも滝口さんの『茄子の輝き』を思い出す。ポークジンジャーを食って、また『千の扉』。早稲田松竹に行って、『ホモ・サピエンスの涙』を観た。良かった。歯医者がバーで酒を飲みながら、外では雪が降っているシーンがとても良かった。
 すぐに高円寺に戻ってくる。さわやこおふぃでアイスコーヒーの紙パックのやつを買う。帰宅。ヘロヘロ。暑いだけで体力持っていかれる。気圧のせいか、頭が痛かったからイブを飲む。くらいくらいの電話会議。Apexやりながら話そうと試みるも、難しすぎて普通に話す。
 ソーメンを作った。ミョウガ、大葉、トマト、キュウリ、ツナ、油揚げ。
 寝る前に『ノーカントリー』を観る。おもしろい。シガーが車に轢かれるところで一気に世界が広がる感じが気持ち良い。そして納得。そうだよな、お前もそういう目に遭うこともあるだろうよ、という。
 モデルナ製ワクチン予防接種の予約をした。しかし、受けていいのかわからない。怖い。受けるのも受けないのも怖い。予約取った瞬間キャンセルしたい気持ちにもなった。

七月二十九日
 起きた。お気に入りのファイヤーキングのマグカップに氷を三つ入れて、昨日買ったアイスコーヒーを注ぐ。換気扇の下でタバコを吸いながらそれを飲む。そして今この日記を書いている。休みだ。

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