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THE 日記(8/2〜8/10)
八月二日
母の電話で起きる。あなた不器用だけんが、という言葉が心に残る。「不器用」この一言に尽きるなと思う。恋人とメールで大喧嘩。休みだったけど急遽労働。帰宅。恋人が誕生日プレゼントをくれて、そのメッセージカードに書かれている言葉を読んだら涙が止まらなくなってもうダメだと思いながら、ごめん、いつも余裕がないけんね、とただただ泣いた。
八月三日
誕生日。二十七歳。起きたら十八時半で、寝すぎた。でも久しぶりにたくさん寝れて疲れが取れた気がした。三鷹に行って水中書店でエズラ・パウンドの詩集と辻征夫の詩集を買った。吉祥寺でくぐつ草に入ってカレーを食べた。フォークナー『アブサロム、アブサロム!』を読んだ。おもろい。阿佐ヶ谷で降りて書楽に入ったらうんちがしたくなってきて、スタバに行った。カモミールラテみたいなやつを買ってうんちをした。タクシーで帰ってきた。『セックス・エデュケーション』を観て、風呂、『影分身と饅頭』の続き。四万字。書くのが楽しすぎる。ずっとこれできたらいいな。
八月四日
メイヴが退学になるかもしれない時に校長室で「実存主義と絶対主義の違いについて説明できます」と言ってかっこよかった。哲学書を読みたい気持ちになってきた。難しいだろうな、と思ったけど、その難しさは文法的に難しいとかではなくてきっと共通言語を使わないが故の難しさだから、全く使ったことない道路工事用の説明書とかと同じ性質の難しさだから、単語単語の意味がわからないだけだな、と気付いた。だからそもそも文章には難しいもクソもない。単語はわかるのに連なった瞬間わからなくなることはあんまりない気がした。文脈が難しいという状態は、もはやどこかしらが破綻していたり不思議な壊れ方をしているはずで、そうなるとそれはもう難しくなくて、おもしろく読める。でも哲学書はそうじゃなくて、何を言っているのかがさっぱりわからない。それはつまり単語が指示している対象が自分の中にうまくイメージされていないことが原因だから、そう考えると実はそんなに難しくないのかもしれない。そういうことを思いながら働いていた。
八月五日
疲れが全然取れない。
八月六日
全然元気が出ない。憂鬱の極み。好きなジャズ喫茶に行ったら今日も黙ってカマシを爆音でかけてくれて、本を読もうとしたけど疲れ果てていて全く内容が入ってこない。暗い気持ちで帰宅。湯船に浸かる。少し楽になる。『影分身と饅頭』の続き。四万二千字。
八月七日
朝九時に起きて(いつもは寝る時間)、渋谷に行った。スクランブル交差点のスタバに入って『未明の闘争』を読んだ。クソ暑くて、早起き由来の体のダルい感じとかも相まって、マキちゃんの葬式に行った時のことを思い出した。でもあれは冬だったかもしれない。とにかく朝だったことは覚えてるけど、でも通夜は夜だったかもしれない。告別式だけ朝だったかも。なんにも覚えてないもんだな。そしてあの時にはもうラジオにメールを送っていたのだろうか。バンドもできなくなって、ラジオも聴いてない、一番しんどい時期だったんじゃないか?
等々力渓谷に行った。自転車を漕いだ。安くておいしいイタリアンを食べた。
まなみんが教えてくれた自由が丘の本屋に行って、『男らしさの終焉』と『残響のハーレム』を買った。
八月八日
体調悪し。
ウイルス、執拗な梅雨、猛暑。という地獄の一年。生きてる意味あんのかな、という純粋な思いが純粋であるがゆえに執拗に追いかけてくる。何も好きじゃない。極端だから完全に排他的になる。坂口恭平さんの自殺志願者を励ます優しさに満ち溢れたツイートにすら「うるせえよ」と思う。何も好きになれない。投げやりな心を救うようなフリをしてるそれらにイラつく。連帯と分断。連帯と分断のことばっかり考えて絶望する。連帯にばっかり力が付与されるその最強さにイライラする。選挙、大きな会社、たくさんのフォロワー、視聴率、再生回数、実売部数。数。数数数数数数数数数。馬鹿だと思う。頭悪りぃと思う。死ねよ。君が大好きなその芸人もアーティストもバンドも小説家も実は全っ然味方じゃない。殴ってやろうか。馬鹿だから痛みにしか反応できねえんだろ。
ポテサラの家でたまたま流れていたアメトークがやばいぐらいつまらなかった。昔だったら笑っていた場面で、完全に心が白けきっていた。これは本当に時間の無駄だな、と、心から思った。あれだけ救われてきたお笑いに、音楽に、俺はもう救われることはないんだなと思った。
八月九日
本も読めないしゲームもできないし音楽も聴けないし何もできないから天井をただずっと見る。朝から晩まで。
八月十日
あくつさんから「水を飲むといいよ」というアドバイスをもらったそのあとにレッドブルを飲んだ。水を飲めよ。
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