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THE 日記(12/23〜12/31)

十二月二十三日
 なんも覚えてない。

十二月二十四日
 休みだから何かしらをしたはず。思い出した。新宿の東急ハンズでプレゼント交換会用のプレゼントを買う。結構迷う。誰に当たっても良いプレゼントってムズイ。良い歯ブラシと良いハンドクリームと良い入浴剤を買った。全然攻めてない。置きに行った。恋人とケーキ屋の行列に並ぶ。ケーキを買ってまた東急ハンズに戻る。珪藻土のバスマットが欲しかったのに買うの忘れてたから。なぜか珪藻土のバスマットが全部売り切れていた。ニトリのやつにアスベストが混入してたのが関係してるのか。ここニトリじゃないけど。スタバに行ってなんかのお茶をテイクアウトしてタクシーに乗って帰った。恋人は疲れていたようですぐに爆睡して、俺は静かに電気を消して隣の部屋に移った。キムチ鍋を作った。ずっとニューヨークのYouTubeを観た。ニューヨークとダイタクが相席居酒屋に行く会がめちゃめちゃおもろくて、大声で笑った。こんな具体的に声に出して笑うのは久しぶりだった気がする。M-1観てる時って芸人さんの生き様を観てるのが乗っかってるから顔は真顔で心で笑ってる感じがある。だから久しぶりだった。本が読めないし、何も書けない。ずっと朝までニューヨークのYouTubeを観て、恋人の隣に滑り込んで寝た。

十二月二十五日
 昨日食えなかったケーキ食った。
 『架空OL日記』を一気観。
 
十二月二十六日
 九百四十九人。最多。
 恋人が家を出る直前に「プレゼントあげる」と俺のポケットに何かを入れて、取ってみたらそれは合鍵だった。三年かかった。人は変わらないと思う。変わらなくていいし。他人に変化を求めることよりそれを飲み込んでそこをスタートにした方が、というかそうするしかなくてその方が楽しい。「合鍵ちょうだいよ、不便なんだけど」と何回も言ってきて、自分がいない時に部屋に入られるのが嫌だから、とずっと断られていて、その理由もわかっていた。恋人は今も変わってないと思う。わかんないけど。恋人が引いたその線の内側にいつのまにか俺が入っただけで、だから変わったっていうか、時間が経ったんだな、緩やかに何か液体が混ざるみたいに境界線がぼやけていくようなことが誰にもわからないスピードで起こって、それはかなりの感動だった。「やった!やった!やった!」と騒いでいたらそのまま恋人は手を振って出かけて行った。
 新宿。郵便局。誰かの日記を発送。お待たせした方々すいませんでした。もうこれをやったら今日の任務全て終わったようなもん。紀伊國屋に行って本買う。タイムスで煙草吸う。西荻に。恋人と合流して、SEIYUでみんなと待ち合わせ。色々買って、ポテサラん家。ピザ食う。ケーキ作る。まなみん帰ってきて、プレゼント交換。俺はクイズのが当たった。ワードバスケットやりまくる。64のマリオカートとスマブラやりまくる。ぺっしと戦う時は読み合いが深くて、西上くんと戦う時は浅いから、その振り幅でイライラする。終電で帰宅。

十二月二十七日
 風呂上がりに換気扇の下で煙草を吸いながら「ねぇケーキ屋に並んだ日ってケーキ買ってすぐうち帰ったっけ?」と、小さなオレンジ色の光に包まれた寝室で今まさにドライヤーの電源を点けようとしている恋人に聞くと、「帰ってない」と返ってきて、それから二人で何をやったかの詳細を全部言ってもらって、十二月二十四日の日記を今書いた。

十二月二十八日
 起きてすぐ働きに向かう。忙し。疲労困憊。風呂入ってニューヨークのYouTube観て寝た。

十二月二十九日
 『誰かの日記』を昨日から置いてくれてる群馬県高崎市のrebel booksさんが「もう売り切れました」とツイートしていて、え、一日で、と驚く。
 どん兵衛食った。
 働く。仕事納め。疲れた。
 京王新線で新宿から乗り換えようとしたら、いつもの通路が塞がれていて、地上に一回出なきゃいけなかった。高円寺に着いて、誰もいない夜道を煙草を吸いながら歩く。公園の前を通ると男女がバドミントンをしていた。こんな真夜中に。コンビニに寄って、恋人とFaceTime。ずっと変な顔をしていたから笑う。風呂。久しぶりにストファイ。あんま楽しくない。飽きてきたのかな。本読む気にもならない。ゲームももういい。何もする気が起きない。

十二月三十日
 夕方に起きて、郵便局に。『誰かの日記』の発送。モスバーガー食う。帰宅。母親と電話。準備して、中野坂上に。恋人がいないからスタバに入ってM-1アナザーストーリーを観る。恋人が来る。手袋を落としたらしく泣いていた。大江戸線に乗り換えて六本木で降りる。恋人が電車の中でも泣いてたからか、対面に座っていたおじさんとおばさんがずっとこっちを見ていて、地味にイライラしてきて、降りる間際に「見てんじゃねえぞ」と言おうか迷って、でもそんなの恋人からすると嬉しくないだろうから耐えた。でもマジで言いたかった。泣くだろ別に、生活してたら。そんなに珍しいか? 芸人さんでもないのに人前で泣くことを恥ずかしいと思ってるんだったら、そう思うことは好き勝手してくれだけど、表出させてくんのめんどいから消えろよ。
 寒い。文喫に着いた。しみずさんの作った洋服を着させてもらった。文庫本もハードカバーも入るポケットがついている服で、全部かっこよかった。その展示の写真はヨーコちゃんが撮っていた。
 手袋を探すために、恋人の来た道を全部逆に辿った。地面を見ながら。地面を見ながら歩くと、普段気付かないだけで結構色んな物が落ちとる。でかい枯葉とか、ペットボトルとか、なんかの紐。手袋が見当たらない。しばらく歩いて、恋人が、あ、と小走りになって何かを拾った。手袋だった。「よっしゃ〜!!!」と叫んだ。テンションが猛烈に上がった。
 ごはん食べながらM-1アナザーストーリーの続きを見たら、野田さんがお母さんに電話してるところで俺も泣いた。

十二月三十一日
 千三百人超え。最多。
 夕方に起きて、シャワー浴びて、準備して、出る。もらった合鍵で鍵を閉める。バスが来るのを待つ。一旦自分の家に帰る。恋人がもうすぐ帰ってくる。ぺっちゃんちに行って年越しそばを食べるだろう多分。
 元気がない。何もする気が起きない。どうした。仕方ない。
 なんやかんや、笹井賞の最終選考に残ったり、『誰かの日記』を本にしてもらったり、『アボカドの固さ』が公開されたり、それなりに形になった一年でした。皆さんのおかげです。でもやっぱりまだ満たされないな、という気持ちと、それなりに頑張ったやろ、という気持ちが相剋してます。責めすぎないように、でも満足しすぎないように。

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