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THE 日記(4/5〜4/10)

四月五日
 昨日は吉祥寺に着くとジュンク堂に行って、『チョンキンマンション 世界の真ん中にあるゲットーの人類学』『星の時』『野生の思考』の三冊を買った。
 李朝園で焼肉をめちゃめちゃ食った。うまかった。おばあちゃんは足が悪いから先に帰るようで、じゃあみんなで帰ろう、とぺっちゃんちに帰ってきた。アンジーにみんなでプレゼントをあげて、テレビでE.Tが流れていたからそれを観た。エンドロールでみんなで拍手して、屋上で煙草吸って解散。
 帰宅して恋人と風呂に入って、あまりにも眠そうだったから郵便物の再配達の電話をしてあげて、ドライヤーで髪を乾かしてあげて、恋人は寝た。起こさないようにドアを閉めて、煙草を吸ってぼーっとして、今日買った『チョンキンマンション』をちまちま読んで、Apex。腰撃ちの練習をしたくてカジュアル。ただ、やっぱり勝てない。明らかに自分よりエイム定まってない相手にも勝てない。つまり俺の方がエイム定まってない。負けてるんだから。いつもだったらランクをやるけど、ちょっとこれはマジで練習だなと思ってずっとカジュアル。腹立ちすぎてスナイパーを持ち出す。カジュアルでスナイパー持つ発想の奴なんかいないから、むちゃくちゃに無双する。ありえないぐらい殺す。
 それは昨日で、今日はDMMブックスが100冊まで70%オフのキャンペーンをやっているのを知って、『幽☆遊☆白書』『レベルE』『いちご100%』『鋼の錬金術師』『進撃の巨人』を全巻買う。進撃の巨人がおもしろすぎる。怖い。

四月六日
 進撃の巨人の続きを読む。Apexそっちのけで読む。おもろい。少しだけ西上くんと落合とApexやった。「詰めた方がいい?」と落合が言って「詰めんと!」と俺が応えると、「方言がわかんない!」と言われて三人がバラバラに動いて負けた。まさか熊本弁のせいでApex負けるとは思ってなかった。「詰めんと」は「詰めないとダメだよ」って意味だと教えた。

四月七日
 群像新人文学賞の審査結果発表日。初台のくまざわ書店で震えながら群像のページをめくると、どこにも名前はなかった。そうか、と思う。悲しい気持ちと、なんで?という薄い怒りのようなもの。絶望のようなもの。本屋を出てとぼとぼ歩きながらここから先にはもう何もないんじゃないかと思う。『影分身と饅頭』でも無理なの? わからない。何と戦ってるんだ? これはApexでもストファイでもないんだぞ。
 バンドを辞めた時に自分にはもう何もないと思ったけどラジオにメールを送ったことで今までの全てが意味のある時間に思えた。そうやって俺は俺のことを救いたいし、救うしかないし、諦めたらそこにあるのはぼんやりとした輪郭のままのさばっている死の観念だけだ。クソが。お前が死ね。最後に唯一残された手段が特別な物に感じるのなんか当たり前だし、そいつに簡単に裏切られるのも当たり前だ。何を期待してるんだ? 特別な人間だと思ってるのか? 馬鹿が。ただ生きて書くだけだろ。何のために日記を書いてる。何のためとかない。お前はお前をやれよ。ただお前だけをやれよ。それしかないだろ。それだけがあるんだろ。ただ生きて書くだけだ。ただ生きて書くだけ。しつこく。嫌がらせみたいに何回でもやってやる。君が謝るまで殴るのをやめない。
 恋人から「みんなが山口くんのことわかって下さいってお祈りした」とメールが来て、泣きそうになる。
 働く。本を置き忘れたまま帰られたお客さんがいて、走って追いかけて無事に渡せた。たくさんの人が夕方の街を歩いていて、そこを文庫本一冊持って走っている自分は尊い気がした。みんな今から家に帰ったり仕事に戻ったりサボったり昔されて嫌だったことを思い出したり、俺みたいにそれはゲームだったり恋人と映画を観ることだったり好きなこともやる。俺は全てが許される瞬間を待っている。待っていた。そしてそれはこういう風に不意に訪れて、少し、大丈夫かもしれないと思う。

四月八日
 休み。Apex。途中抜けてコンビニに行って五千円分メシ買って、食いながらまたApex。進撃の巨人読み終わったから『いちご100%』読む。女性を「エロい物体」として見る視線がバリバリだな、という思いと、み〜んなかわいくてエロいな、という相反する思いが共存していて、それについて考える。

四月九日
 起きて『デリケート』を読み返す。意外と良い。ちょっと前に編集しようとした時に、「これは青臭すぎてダメかも」と思ってたけど、今日読んだら全然大丈夫だった。日によって変わる。くらいくらい公園のYouTubeのブリッジ的な映像を編集する。十秒間の映像作るのにめちゃめちゃ時間かかって、夜。みんなでApex。ポテサラがトライデントにコースティックガスを乗せてクラクション鳴らしながら爆走する、ガスの配達屋さん通称「ガスのカクヤス」をやっていて凄い笑う。

四月十日
 二学年下ぐらいの格闘技経験者の後輩と喧嘩になる夢を見る。素手で戦おうとしてたから普通に何か棒状の武器みたいなやつで戦った。だけど戦いが始まる直前で目が覚めた。倒せれば何でもいいと思った。素手で戦う方が律儀だろとか男だろとか知らない。特に男だろの方がどうでもいい。とにかく倒せれば何でもいいじゃん、と思っていた。起きたあともそう思う。ゲームじゃないんだから。
 うどんを食って煙草を吸ってバスに乗った。バスの側面が環七沿いに植えられた何かしらの木の枝を擦って、少し開いた窓から入ってきたみずみずしく緑に輝いた葉っぱが俺の膝に落ちた。

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