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THE 日記(9/15〜10/6)

九月十五日
 あんまり覚えてないけどひたすら小説を書いていた気がする。

九月十六日
 インスタで、弓木英梨乃さんというギタリストがBTSの音楽に合わせてギターを弾いてる映像がオススメに流れてきた。上手すぎて何回も観た。それでなんでだか、弓木さんのツイッターを見ていて、確かジョージ・ハリスンの『All Things Must Pass』をオススメしていて、それはコタローも大好きなアルバムで、全く聴いたことなかったからすぐに聴いた。
 四曲目の『Isn't It A Pity』が圧倒的に良かった。それをコタローにLINEする。

九月十九日
 起きてすぐにiMacの大画面でTWICEのライブ映像を爆音で流して、叫びながらタバコを吸う。
 久しぶりにチャリで出勤。
 帰り道、ちんたらチャリを漕ぐおじさんが目の前で蛇行運転をしていて、追い越したいのに追い越せなくてイライラする。ベルを鳴らせば良かったけどそれも億劫でずっとついて行くと、急ブレーキをして、俺も慌てて急ブレーキ。右手を損傷。

九月二十日
 起きてすぐにiMacの大画面でTWICEのライブ映像を爆音で流して、叫びながらタバコを吸う。
 バスの中で、ジョンヨンのファンカムをひたすら観る。ファンカムというのは、一人のメンバーだけをズームして撮ったライブ映像で、ファン目線のカメラ、みたいなやつです。赤と青と白のストライプで袖にエルヴィス・プレスリーみたいな謎のひらひらがついたシャツと、黒のスキニーを履いたジョンヨン。『FANCY』のサビで右にくるっと一回転するところが美しすぎる。四回ぐらい観る。この幸福な感じは自分の中に滅多に現れることがなく、一体なんなのかを結構長い間考えてる。ただの性欲だったらおもろいけど、なんかそういう感じもなく、九人の人間が音に合わせて歌ったり動いたりすることをひたすら練習してそれを人前で披露する、という行為の根源的尊さが体の芯にぶつかってきている感覚。ファンカムで各メンバーを観ると、同じ振り付けでも一人一人の関節の曲げ方や、髪の毛に触れるタイミング、ピンマイクを直すタイミングなんかは当たり前だけど違う。というこれももう何回も日記に書いている。だから俺は、人が踊ってるのを観るのが好きなようだった。
 働く。大忙し。

九月二十一日
 起きてすぐに三鷹に。恋人とビジネスホテルに泊まる遊び。クレープを食った。行列ができていた。完全に民家に挟まれたお店だったから、行列問題が大変そうだった。こういう時にどうしてもお店側に立って考えてしまう。フヅクエで働いてるからだ。店員さんは作る人と注文を取る人の二人しかいない。これは、大変だぞ。調べたところ、店舗を移転してきたばっかりで、前の店舗の時も行列問題で自主的に移転したらしい。素晴らしい対応。しかしこれは大変だ。ライムのクレープを食った。生地とライムのクリームとホイップしか入ってない。シンプル。なのに鬼のうまさ。
 啓文堂で『波止場日記』を買った。
 リスボンに行ってそれを読む。
 ちょっと一回一人きりにさせて、とお願いして、俺は一人でサイゼリヤに行き、恋人はホテルに戻った。
 小説を書く。しかし、何か、上手くいかない。こればっかりだ。
 ホテルに戻る。恋人とテレビを観る。自宅のテレビはあのアンテナの線を繋げてないから、そもそもテレビが観れない。だから久しぶりに観る地上波だった。いつのまにか恋人は眠っていて、俺は風呂に浸かる。
 風呂から上がって、プロットの整理をもう一度する。そして完璧にプロットが整ったところで、もうめんどい、イライラする、「書かないといけない」という必然性がまるでない、と思い、『影分身と饅頭』を書いている俺そのものを主人公にして小説を新たに書き始めた。すらすらと五千字ぐらい書けたし、こっちのが明らかにノッてる。そのスクショを落合に送る。しばらくして「めちゃくちゃおもしろいよ」と感想をくれる。電話もくれる。話して、やっぱこっちでいこう、と思った。純粋な物語を作るのは脚本でやるべきで、おもしろくしようとすればするほど脚本的になっていく。それを小説に乗せるテクが俺にはまだなかった。
 明け方の三鷹に散歩に出た。iPhoneのメモ帳につらつらと書いていく。進む。セブンでカフェオレとソースカツ丼を買うとホテルに戻ってまた書いて、寝た。

九月二十二日
 りんてん舎で木山捷平全集を買った。ホテルの一階にあるレストランでメシ食って、帰宅。
 シンクに溜まった食器たちを洗って、『波止場日記』を読み続ける。短歌と小説もちょろっと書く。ゲームをしようとして恋人と喧嘩。そこから建設的な話し合いに。俺のことを理解してくれている。恋人がいつもよく耐えてくれている。すいません。

九月二十三日
 働く。
 『影分身と饅頭』がほぼこの日記みたいな状態に変化したので、この日記を書く腰が重くなっている。

九月二十四日
 起きて、ちょっとApex。
 しばらく小説を書く。一回外に出よう、と新高円寺に行き、マックを食う。このまま七つ森とか行こうかな、と思うも、ナチュラルローソンにだけ寄ってすぐに帰る。
 Apexやって、青春農業の収録。
 小説を書く。かなり進む。おもろいのかは知らん。でもこれを書かなきゃいけない、とは思っている。題材が何か具体的に決まっているわけでもないのにそう思っている。

九月二十五日
 昼に起きて、バスに乗る。幡ヶ谷原町で降りてブルーラグに着くと、もうポテサラとぺっしとアンジーがいた。アンジーが誕生日プレゼントをくれた。
 ポテサラがチャリを買うのを観に来た。店内にはフルカスタムされた自転車が整然と並んでいて、宙に吊るされたフレームもたくさんあった。いくつか候補を出し、迷いながらもまずは深緑色のフレームに決めた。俺とポテサラはずっとGIOSのミストラルというクロスバイクに乗っていて、俺は青でポテサラは白だった。割と同じ時期に買ったけど、一度盗まれて以来俺は部屋の中に停めていて、ポテサラはずっと屋外だったから劣化の速度が凄まじく、もうボロボロだった。
 ミストラルのハンドルは一般的なただのなんてことないもので、それに慣れていた俺たちはドロップハンドル(競輪のハンドルみたいな曲がってるやつ)は嫌だね、というところで一致していたけど、試乗してみたポテサラは意外にも、ドロップも良い、ドロップにしよ、となった。
 黒を基調に部品が選ばれていたのを、シルバーや白系に変更していき、見積もりを出すのでちょっとお待ち下さい、と言われた。コーヒーを飲みに行こう、となって、笹塚の南蛮茶館まで歩いたが、閉まっていた。
 それでまた幡ヶ谷まで歩いてぽえむに入った。もうとっくにアンジー以外の三人は疲れていた。体力がない。俺とぺっしは特にない。みんなでフットサルやった時も、10分ぐらいで俺とぺっちゃんは地面に寝転がって吐きそうになる。休憩時間になっても西上くんとかは半ズボンを履いて元気なままボールを遠くに向かって蹴ったりしている。あれは馬鹿だ、と話して、アンジーの誕生日プレゼントを開けた。PUEBCOのメガネ置きとまな板だった。嬉しい。
 見積もり出ました、の電話が来て、ブルーラグに戻る。恋人が来ていた。そこからまた細かいパーツを選んで、ギアをブレーキの横に付けるか、ドロップの先っちょに付けるか、で悩んだ。ドロップの先に付いていたら、ギアを変える時に一瞬だけ片手運転になる。

 と、ここまで書いて、ここら辺のことを小説に書いたのでかなり腰が重くて放置していた。これを書いている今は十月六日だ。

九月二十六日
 確かここら辺で笹井賞に応募した。五十個、良いのが書けた気がする。昨年のリベンジ。短歌を書いてる時の素直さを持ったまま小説書けんかな、と思う。

九月二十八日〜九月三十日
 小説とApexの繰り返し。ずっと家。書いてる時の楽しさが昔に比べて本当に薄れてる。どうした。でもこれがスタートなのかもしれないとも思う。楽しくないのに書いてしまうこと、を見極めろ。やめるつもりはなかった。
 書いてる途中で大体タイトルが思い付くけど、今回はそうならなかった。原稿用紙93枚。書き上げたあとにタイトルを考えて、『象が持ち上げる光の繭だ』にした。なんとなく今までの経験でわかるものだけど、多分落ちるだろう。でも書けない書けない言いながらとりあえずクオリティー的にもまずまず満足のいくこれを書き上げたことに大きな意味があったし、もう割とすぐに次何書こうかな、と楽しみにしている気持ちもあって、諦めんくて良かった。

十月一日
 TWICEの新曲『The Feels』の公開日。起きてすぐにタバコ吸い、コーヒーを飲みながら観た。良い曲。テンション上がる。ジヒョの声がこのアメリカ感に合いすぎてる。ダンスシーンにジョンヨンの姿はなかったけど、ちょいちょい出てくる。

十月四日
 首あたりの痛みが凄まじく、四時間ぐらいで起きる。痛すぎて少しも動かせないヤバい状態。iMacの前とゲーミングモニターの前にずっと座ってる生活だからいよいよガタが来たのか、年齢的なものか。慌てて近所の整骨院に行き、鍼を打ってもらった。かなり楽になった。

十月五日
 鍼の効果は翌日以降に出るらしく、確かにかなり好調だった。
 もう一回整骨院。首だけじゃなくて背面全部終わってるらしいので、今日も鍼。次からマッサージのみに移行するらしい。鍼の効果が出やすい筋肉らしく、「素直な体ですね」と言われてなんかエロい感じだった。

十月六日
 朝からフヅクエのみんなと会議の予定だったのに、最近の首の痛みで睡眠不足が重なっていて爆睡。大遅刻。慌ててZOOMに入る。すぐに終わってしまい、そしてまた何の反省もしていないかのように寝る。いや反省はしている。大体アラーム一発で起きるから、よっぽど眠かったんだろう。
 起きたら夕方。換気扇の下で考える。何を書こうか。『影分身と饅頭』は劇中劇の中の物語として消化された。改めてこの物語に挑戦するのか、別のものを書くのか。とにかく〆切に迫られず、ゆっくり、自分が「これは非の打ち所ないだろ」と思えるものを書かないといけない。どっちも書くか、と思った。『影分身と饅頭』も、新しいのも、どっちも書こう。短歌を書いている時にこれはどう見られるとかを全く考えていない。それは俺が短歌を知らないからだ。小説のことは知った気になっているからそういう思いが交差してくる。『デリケート』を書いた時も何も知らなかった。今も何も知らないはずなのに、調子に乗っている。何もわからない、という気持ちで好きに書くことにした。
 Apexちょっとやって、RPを簡単に300ぐらい溶かして、家を出る。
 新代田行きのバスに乗って、もう夜だった。

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