等身大のヒーローだからこそ、立ち上がる姿が見たい

TRPGの話でもアニメの話でもなくてごめんな。ぼくのフォロワーの大半に伝わらない(というか伝わる人が5人ぐらいしか思い浮かばない)アレなんですが、プロレスの話です。「なんでアイツあんなに最近テンションおかしいの?」と思ってる方は読んでいただければ幸いです。

最近のソエジマ、プロレスの話しかしていません。それもそのはず、ちょっと最近見ているプロレスの展開が情緒不安定になるレベルで色々ありまして……最近の言葉で言うと「エモい」というアレです。

が、ぼくの「エモい」はなかなか! 伝わりにくい!

で、それを伝わりにくいとうつむくだけじゃなく、何とか形にしてみよう……と足掻いてみたのがこの文章になります。

推しの2人組“ROPPONGI 3K”

何のコンテンツでもそうですが、「推し」という存在がいます。ぼくの場合、プロレスで言えば“ROPPONGI 3K”という2人組のユニットがこれに当たります(正確には3人いるんだけど、今回はちょっと割愛)。
田中翔選手と小松洋平選手の2人です。この2人、同時期に新日本プロレスに入門した同期。さらに新日本プロレスは若手を卒業すると海外武者修行に送り出されるのですが、ここでも一緒。海外武者修行から帰国後は田中翔→SHO、小松洋平→YOHと名前を変え、“ROPPONGI 3K”として活動します(これにコーチ役が1人いますが今回は省略)。

この時期から今に至るまで、実に9年間!

体育会系の厳しい道場での若手時代、プロレスが活発なメキシコやアメリカでの修業時代、そして帰国後、ずっとパートナー同士だった2人には、やはりそれなりの絆があったと思います。

とにかく、帰国時には「X(プロレスの世界で秘密兵器的な、誰が来るかわからないぞ! と煽る時によく使われる)が参加する!」と派手に宣伝されたうえで2人は凱旋試合を行うなど、会社からも期待されるユニットとして動きだします。

“コイツは殴っていい”世論の形成

今やコンテンツは数字を稼いだもの勝ちの感がある時代です。売上、PV、イイネ、RT、フォロワー。「実力」とか「面白さ」とかの曖昧な評価より、可視化しやすい数字はとにかくわかりやすい。
プロの興行でも同じことが言えます。「実力」があるチームより「人気」があるチームの方が売上が多い……なんてことはどんなスポーツでもあることだと思います。
プロレスでも、まあ、あります。人気のある選手、金になるユニットから優先してえ見せ場が与えられたり、その団体の“顔”であるチャンピオンへの挑戦権が早く回ってきたり。
では“ROPPONGI 3K”、実力(単純な強さもそうですが、見せ場などを与えられるに相応しい説得力や納得させる雰囲気などひっくるめたものだと思ってください)と人気で考えると、「人気先行型」として受け取っていたファンが多いと思います。
イケメン若手2人組、男子プロレスラーなのに写真集も出しちゃったりするし、会場では女性ファンが黄色い声で応援する。で、まあこうなるとやっぱり「あいつら、実力ない癖に女性ファンが多いから会社に優遇される!」みたいな声が、“硬派なファン”からも出てくるわけですよ(無論、実際の「実力」の部分でどうだったか……と言われると、やはり他の選手に比べて劣っていた部分もあったかな、とは思うんですが……にしても拒否反応的なものもあったかな、とは思ってます)。

ぼく、これってジャンプとかでやってる連載バトル漫画で時々見る光景だなって思っていて。
「メジャー受け狙ってる」「女性人気高そう」なキャラが強キャラ設定になったり、他の人気キャラ(特に男らしいキャラが多い気がする)に買ったりすると「梃子入れだ!」とか「女性ファンに媚びてる!」とか「あのキャラが目立つようになってからあの漫画読むのやめた!」とか、ヒートする時あるじゃないですか。アレに近いなあって。

違うのは、その批判の矛先が2次元のキャラではなく、生身の人間ってことですかね。とにかくこの手の“世論”、形成されると雰囲気として固定されるのが早い早い。

そんな中、ぼくは3Kが好きなので(特にYOH選手)、「そういったメタ的な構造まで含めて跳ね返してほしい!」と思って応援してました。

これはプロレスファンにしか伝わらない余談。
「なんでYOH推しなの?」と言われると2つありまして。
1つがファイブスタークラッチ。オスプレイのストームブレイカー、ヒロムのTIMEBOMB、SHOのショックアロー、鷹木のラスト・オブ・ドラゴンなど、「首や頭から落とす投げ技」をフィニッシャーにする選手が多い中で、電光石火の丸め込みを持ってきたセンスはすごいと思ったんですよね。BoSJの公式戦でELPから一本取った時とか。SANADAが「頭から落とすだけがプロレスじゃない」って発言もしてましたし、この路線で行くのかなって思いました。
もう1つはぼく、ドラゴンスープレックスが大好きで。多分プロレスの原体験が大谷、金本、高岩、カシンのころのBoSJで、中でも大谷晋二郎のドラゴンスープレックスが印象に残っていて……という(なお、同じ理由でスターダムの岩谷選手も好きですw)

“HIGH VOLTAGE”SHO選手の覚醒

そんな“ROPPONGI 3K”に転機が訪れます。試合中の負傷でYOH選手が長期欠場に追い込まれました。
基本的にYOH選手と2人でセットの活動が多かったSHO選手。ここにきてYOH選手が復帰するまで、ソロ活動が中心となります……が! これが凄かった!
YOH選手の欠場前から「SHO選手はソロでも凄いのでは?」という雰囲気はあったんですが、これがこのタイミングで可視化されました。詳細を書くといくらでも書けるのですが、ただの面倒なオタクになるので、「とにかく観客が感動するような凄い試合を1人で連発した」「他の団体の旗揚げ戦のメインイベントに呼び出された」ぐらいの説明にしておきますが、もうこれが凄かった(「他の団体の旗揚げ戦のメインイベントに呼び出された」と言われても通じにくいかもしれないですが、「大資本をバックに新たに活動開始するYoutuberが、最初の動画配信でPV稼ぎに呼んだ超大物ゲストの立ち位置」ぐらいに考えてください。まあとにかく凄い)。

かくしてソロ活動でも実績を残したSHO選手。YOH選手の復帰を待ち、“ROPPONGI 3K”の活動再開まで力を蓄えます。

“DIRECT DRIVE”YOH選手の低迷

待ちに待ったYOH選手の復帰。ケガから回復し、コスチュームなどの雰囲気を一新した“ROPPONGI 3K”の快進撃が始まります。

ちょっとだけ。

復帰直後はよかった。タッグ戦(テニスとか卓球でもダブルスがあるけど、2対2の試合)のチャンピオンにもなったし、かなり活躍もした。
しかしここにきて、負傷欠場の理由になった膝のせいなのか、それともメンタル的なものなのか、はたまた両方なのか。YOH選手が狙われて負ける、YOH選手が足を引っ張って負ける展開が続きます。
一方のSHO選手はソロ活動で培った経験と実績を開花させ、YOH選手の分まで頑張る。でも勝てない。

9年間ずっと一緒だった相棒は遥か上のステージにいるのに、自分が足を引っ張って負ける展開が続く。

「覇気がない。やる気ないなら帰れ」
「客も見たくねーだろ」

同業者である他のプロレスラーからも厳しいコメントが続く(とはいえ「同業者」であり同じ興業に携わる「運命共同体」なので、「役割としての発言」だったり「叱咤激励」ともとれるわけですが……)。

厳しいコメントはファンからも。しかし同業者と観客では、コメントの立ち位置が違います。これもまたSNSで可視化されてしまう令和の時代。
“ROPPONGI 3K”に勝った勝者チームより、敗者である“ROPPONGI 3K”にスポットが当たるまでに深刻な状況になります。

折しもタイミングは最強のタッグチームを決めるリーグ戦の最中。直近の大会を3連覇していたディフェンディングチャンピオンのはずの“ROPPONGI 3K”はいきなりの3連敗。今年の優勝はなくなり、その敗因は全てYOH選手でした……

唯一の救いは、相棒であるSHO選手の前向きさ。ネガティヴな思考にハマり、闇堕ちしそうなYOH選手を献身的にサポートするSHO選手の存在は、とても心強かったと思います。

人生は上手くいかないことの方が多くて、それでもどうにかして前に進んでいかないといけないタイミングはあって。単に試合のレベルではなく、観客や興行論の中でのYOH選手がどう立ち上がっていくのか。メタ的な点も含めて、とても感情移入していた数日でした。

“ROPPONGI 3K”の今

そして8月16日。“ROPPONGI 3K”に突然の終焉が訪れます。

9年間、一緒にやってきた相棒。
同期で入門し、辛い若手時代を共にし、メキシコもアメリカも一緒に武者修行を経験し、同じ歩幅で歩いていたはずのパートナーは、気が付けば遥か先にいて。
どこまでも前向きに、“ROPPONGI 3K”としてYOH選手を支えていく……と思た矢先の決別。
ちゃんとしたコメントはまだ出ていませんが、「YOH選手の不甲斐なさにSHO選手が見捨てた」というのが、おそらくの現状の見解です(そしてほぼ間違いないと思います)。

繰り返しになりますが。

人生にはどうやっても何やっても上手くいかない時期はあるし、それでもどうにかしないといけないタイミングはやってくる。
みんながみんな、大谷翔平でも堀米雄斗でも、プロレスラーで言えばオカダ・カズチカでもなくて、困難を乗り越えて栄冠を手にできるわけではなくて(無論、簡単にやっているように見えて、水面下では物凄い努力をしていると思いますが……)。
そうはなれず、目の前の困難に苦しんでいる人の方がはるかに多い。

そんな中、今回の一連のYOH選手に起こったことは、他のどの選手よりも感情移入ができてしまって、これをどう乗り越えるかを応援したくて、きっとそれを見てぼくは力をもらうんだろうなあ……と思いながら、この出来事を「エモい」でまとめるのもいかがなものか、とこんな長い文章書いてます。

これを機にちょっとでもプロレスが気になるな!
と思った人は、一度見てみてほしいなあ。そこには非日常の世界から、等身大のドラマまであるコンテンツなので。ぜひ。

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