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先生と呼ばれて

高齢の女性が「足が痛くて動けない」というので駆けつけると、
ぶつけたわけでも腫れているわけでもない。

「病院行きますか?」と聞くと、
「この湿布貼ってください」というので、
痛いという足に湿布を貼ってあげた。

「湿布を貼ったら治った」と言い歩き出したので、
病院へ連れて行かずに帰ってきた。

数日後、高齢の女性から電話がかかってきた。
「先生、湿布貼ってくれてありがとう」というお礼の電話だ。

「先生?」

わたしは「先生」と呼ばれるような人間ではないのに…。

そういえば、この女性は精神疾患の持病があり、
ときどき幻聴が聴こえると言っていた。

まあ、先生でも何でも感謝されるというのは悪い気はしない。

その日を境に、夜の22時過ぎと朝方の3時頃になると、
高齢の女性はお礼の電話をかけてよこすようになった。

お礼の電話といっても、内容は多岐にわたり
「先生、お金がないので病院へ行けない」
「先生、眠れない」
「先生、誰かに見張られている」

精神疾患があるから、
こんな訳の分からないことを言っている、
と片付けてしまうのは簡単だ。

でも一人暮らし高齢者にとって、
夜になっても眠れないこと、早朝に目が覚めてしまうこと、
こんなツライ状況は決して珍しいことではないと思う。

誰かと会話ができることが、
どれだけ安心できることか。

もう少し、もう少しだけお付き合いしてみよう。


それでは、また。


♯高齢者 ♯湿布 ♯先生 ♯お礼の電話


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