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オデッセイ、あるいは酩酊の夢

(新宿~、新宿~)
 聞きなれた車内放送に目を覚ます。家まであと数駅か。電車の揺れが、俺を再び微睡みへと誘う。
(代々木~、代々木~)
 代々木だと!なぜ逆方向の電車に?
 慌てて電車を降りる。寝過ごして終点から戻ってきてしまったか。今度は気を付けなければ。
(沼袋~、沼袋~)
 沼袋!!なぜ私鉄に??そんなに飲んではいないはずだ。
 戻るとかなり時間がかかる。幸い歩けない距離ではない。少し遠いが歩いて帰るとしよう。
 月が不気味にきれいな夜だ。見知らぬ住宅地をなんとなく歩く。スマホを取り出して地図を見ることが、なぜか億劫に思えて仕方がない。
 目印になるような大通りも見つけられないまま、ふと路地裏に目をやる。暗がりの中、わずかに光が漏れている。
 GENKYO?どうやらバーのようだ。少し休んでいくとしよう。
重たい扉を開けて中に入る。うなじの辺りがチリチリとした。

【第一夜 バー元凶】

(続く)

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