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なぜイーサリアムは担保になるのか ~社内説明用データ集を公開します~

こんにちは!デジタルアセットグループの神脇(@H_Kamiwaki)です。
2022年2月初頭に、日本初のイーサリアム(ETH)担保ローン提供開始のプレスリリースを出させて頂きました。
昨年11月入社早々から私も関わった案件なので非常に感慨深いです。
今回は、そのETH追加にあたり、Fintertech社内を通すために使用した調査データを公開できる範囲で織り交ぜながら、暗号資産担保ローン事業者目線でETHを紹介していきたいと思います。エンタープライズでETHを扱う際にどのようなデータを参照したか等の参考になるかと思われます。

Ethereum(イーサリアム)とは

「ワールドコンピューター」を標榜し、分散型アプリケーション(DApps)やスマートコントラクトを構築するための開発環境を提供するパブリックブロックチェーン型のプラットフォーム。数百万のコントラクト、数千のDAppsが存在している。
・イーサリアムの開発エコシステムは業界1位であり、2021年の月平均で約4000人以上の開発者が開発に参加。2位のポルカドットは、約1400人で、その差は2.8倍以上。(Electric Capital調べ)
・コンセンサスアルゴリズムがPoWからPoSへ移行予定(The Mergeと呼ばれる)。マイニングが終了することにより、99.9%以上の電力消費を削減できるとされており、イーサリアムによる持続可能なエコシステムが可能となる。
・The Merge後はシャーディングの実装、スケーラビリティやガス代への取り組みが予定されている。
・DeFiやNFTのブロックチェーン基盤としてシェアが高く、DeFi,NFT,WEB3を語る上でイーサリアムは避けては通れない存在となっている。

創設者
2013年当時大学生であったロシア系カナダ人のヴィタリック・ブテリン氏によって「Ethereum ホワイトペーパー」が書かれた。その構想をギャビン・ウッド氏が学術的に整理し、2014年6月にETHの42日間のクラウドセールを実施し約18億円相当のビットコインの調達に成功した。ちなみに、昨今バズワードとなっている「WEB3」はギャビン・ウッド氏が2014年に提唱したものです。

続いて、ETHを見ていきましょう。

ETH(イーサ)とは

イーサリアム上で使われるユーティリティ通貨。
取引手数料(ガス代:Gwei)やスマートコントラクトを実行するための手数料およびマイニングの報酬として使用されている。その特徴から、BTCがデジタルゴールドと呼ばれるのに対し、ETHはデジタルオイルと呼ばれている。

発行開始年月
2015年7月30日

発行主体
初期はイーサリアム財団(スイス)、以降はプログラムによる自動発行。

発行枚数・発行上限
2022年1月31日時点で、約1億3,000万ETH。
BTCの発行上限は約2,100万BTCと決まっていますが、ETHには発行上限がありません。その代わりに2021年8月のロンドンハードフォークにてバーン(焼却)が実装されています。

時価総額
暗号資産の中では、ビットコインに次いで2位の規模。
下図は昨年のデータにはなりますが、他資産との比較です。
BTCは約119兆円とGAFAM<Google(Alphabet)、Amazon、Facebook(Meta)、Apple、Microsoft>の一角に食い込んでいます。
ETHは約56兆円で、日本の時価総額トップ企業であるトヨタ、ソニーの数倍の時価総額となっており、米国を代表する金融機関であるJPモルガンチェース銀行とVISAと肩を並べる規模となっているのがわかります。

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出典:Top Assets by Market Capを元に筆者作成

国内保有者の保有残高
デジタルアセット担保ローンのETH追加のご要望は、最も多く頂きましたが、実際に国内(取引所ベース)にはどれほど保有者がいるのかみていきましょう。国内のETH保有残高は約4700億円あり、BTCの約8400億円に次いで2位。BTC,ETH,XRPの上位3銘柄で全体の93%を占めています。

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出典:JVCEA統計情報を元に筆者作成 

国内取引所の流動性
2021年下半期の国内の一日平均売買代金は、BTC約430億円、ETH約130億円となっています。DeFiブームが起きた2020年後半以降ETHは増加傾向となっているのが見て取れます。デジタルアセット担保ローン開始時(2020年3月)のBTCの売買代金約160億円と同程度までETHの売買代金が拡大してきています。

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出典:JVCEA統計情報を元に筆者作成

これを次の日本株の一日の売買代金ランキングと比較すると、BTCはランキング10位近辺、ETHは50位近辺に相当します。ETHについても日本を代表する株式銘柄群と同等の十分な流動性があると言えます。

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出典:Yahoo!ファイナンス 2022/2/4のデータを元に筆者作成

グローバルでの流動性
上記は、あくまでも日本の暗号資産取引所の売買代金との比較でしたが、グローバルでの売買代金も見てみましょう。グローバルですと、一日平均売買代金は、BTC約4.3兆円、ETH約1.9兆円となっています。仮想通貨先進国と呼ばれたかつての日本はどこへやらで、BTC、ETH共に日本のグローバルシェアは1%以下となっているんですね。。

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出典:JVCEA暗号資産取引についての年間報告2020年度

さて、少しばかりのショックを受けつつも、気を取り直して下図の日本の株券等の一日平均売買代金3.5兆円と比較すると、BTCは約8,000億円も上回っており、ETHに関しては5~6割ほどの規模となっています。非常に大きな規模であり、もはや見て見ぬふりはできない存在となっていますね。
また、世界中で取引できるといった点で、通貨やコモディティに近しいと言えます。株や債券等とは違いグローバルで流動性があるというのは、特筆すべき点だと改めて感じます。

<株券等(売買代金)>
東証一部・二部、マザーズ、JASDAQ、TOKYO PRO Marketにおける普通株式及びETF・ETN/REIT等の立会内及び立会外の一日平均売買代金

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出典:JPX主要商品の一日平均売買代金・取引高等の推移: 

無事リリース(2022年2月2日)
上記の様なデータ等を参照し、「ETH」に関する担保掛目設定(BTCと同じ50%)やその他もろもろの条件等を検証・決定し、社内の承認を得て、この度晴れてリリースとなったのでした。リリース日は時価総額で2位のイーサにこだわった日程と思いきや、たまたまです笑。
非常にお問合せが多く、納税時のご活用ニーズがあった事から、1日でも早くリリースしなくては!といった想いの結果が、たまたまこの日程となったのでした笑。なんとか確定申告シーズンに間に合い、チーム一同ホッとしております。

ちなみに、BTCとETHの担保掛目50%を当グループ会社の大和証券の証券担保ローンの掛目と比較してみますと、実は外国株や投資信託(分配金支払いコース)と同じ担保掛目なんです!
これは上記の様な検証の結果、十分な流動性が確保できるとの判断から、同じ担保掛目での実現が可能となりました。

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出典:大和証券サイト

近々、デジタルアセット担保ローンのサイト刷新も予定しておりますので、今までお伝えしきれていなかったこの様なアピールポイントも盛り込んだサイトに仕上がればと、目下奮闘中です!

最後に

イーサリアムの名前の由来
ヴィタリックが、ウィキペディアでSFの用語を見ていた時にether(エーテル)という言葉に出会い、その響きに惹かれたのだそうです。そして、そのエーテルはSFの中だけの存在ではなく、実際、19世紀初頭まで科学的理論として存在していた時期があったのでした。
エーテルが天才・アインシュタインの相対性理論の出現により廃れる前は、「宇宙はエーテルで満たされており、光の旅を可能にする不可視の媒質」
と考えられていました。ヴィタリックは、すべての用語を精査した結果、Ethereumに決定したそうですが、Ethereumがアプリケーションを構築して実行するための媒体である事から、このエーテルという単語のチョイスはこれ以上ないものだったのではないでしょうか。

エーテルは中世の時代にアインシュタインによって、その存在が否定されてしまいましたが、天才ヴィタリック・ブテリン氏が考案したEthereumは「WEB3という新たな宇宙空間に満ちている媒質として欠かせない存在」であるとWikipediaに記載される日が訪れるかもしれません。

私達は、暗号資産の未来を信じています。
共に暗号資産の成長を見守っていきましょう。



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