雲は白いのに何故「青雲」?~古代日本の色のイメージの世界へ~

青色の空に真っ白な雲。今年の夏も暑い暑い…。
皆様、いかがお過ごしでしょうか?

今回のテーマは雲の色!
是非、これを読み始める前と後の2回、窓から雲の様子を見てみてくださいね♪

早速ですが、雲と言われるとどんなイメージを思い浮かべますか?
綿あめ? ふかふかの枕? 雪? それとも…?
恐らく真っ白な何かを思い浮かべるのではないでしょうか。

編集者である松岡正剛さんは著書「花鳥風月の科学」の中でイメージには歴史、起源があるとおっしゃっています。

あるものに対して抱くイメージって人それぞれで、正解は無いはずだけれど、どういうことでしょう?

突然ですが「青雲(あおくも)」ということばを聞いたことありますか。

…そうです!日本香堂さんが販売しているお線香の名前にもありますね!笑
ブランド名としてだけではなく、「日本文学と気象」(高橋和夫著)によると、現存する日本最古の歌集である万葉集にも「青雲(あおくも)」という言葉が5例出ていると言います。

ところで、青い雲って見たことありますか?
(お線香のCMに出てくる雲も真っ白でした…)
ですが、上記の本によると「白雲」という言葉は万葉集に出てこないそう。

もちろん、当時今は見られない青い色をした雲があったなんてわけはないはず。
そして、色の見え方も勿論古人と現代人の間で変わっているはずありません。

それならば、私達が普段見ているあの白い雲に「青」というイメージが当時くっついていたのではないかと考えられます…!

白なのに青い…

高橋先生によると、古代日本人には現代の色彩感が無く、視覚に訴えるのは「アカ」、「クロ」、「アオ」、「シロ」の4色だけだったそう。

虹の色が何種類かは国が異なれば違うって言いますよね。それに加え、この4分類はその者が視る者に訴える印象によって変わるものだったそうです。つまり、古代の日本において色の定義が各個人に委ねられていたんですね。

だから、一見現在ある基準を持ってどう考えても「白」と定義されるほかない対象でも、何色かは自分のイメージの中で自由にとらえていたのが古代の日本人の色彩感なのかもしれません。

そして、「アオ」は当時“木や水の持つ生命感、重量感”というイメージがあったそうです。
万葉集の中で「青雲」と使われている歌は

北山にたなびく雲の青雲の星離れ行き月を離れて  161

天武天皇崩御の際の太后(持統天皇)の作

高橋先生は「灰色の、何か意味ありげな感のある雲」を指して青雲と言ったのではないかと推測しています。


ぜひ、もう一度窓から雲を見てみてください。
その眼前に広がる雲は何色に見えますか?


参考資料
松岡正剛著『花鳥風月の科学』(2004年)
高橋和夫著『日本文学と気象』(1978年)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?