MSCAフェローシップ申請書 PartB2 CVを書こう

Part B2は最大5ページの CV (curriculum vitae, 履歴書) から始まります。フォーマットは特になく、自由です。私は働き始めてからCVをまともに書いたことが無かったので、そもそも研究者のCVとは一般的にどう書くものなのかを調べるところからスタートしました。今回のnoteは、そんな当時の私のレベルに合わせて書いています (ので、「こんなこと知ってるよ!」と思われることも多いかもしれませんが、ご容赦ください) 。

インターネットで検索すると色々なCVのフォーマットが出てきますので、それらを参考に書いてみると良いと思います。私のCVもここに置きますので良ければ使って下さい。実際に提出したものをベースに、一部情報を削除・伏字にしています。また、後述する通り、私のCVにはGuide for Applicantsに挙げられている項目のうち含まれていないものもあるのでご注意下さい。ヘッダーとページ番号は適宜自分に合うように変えて下さい。

では、内容について1つ1つ見ていきましょう。

1. 必須項目 (名前、職歴、学歴)

まず、Guide for Applicantsには、CVに必ず書くべきこととして申請者の名前、職歴、学歴が挙げられています。職歴(professional experience)と学歴(education)は年代が新しい順に上から並べ、所属機関(または卒業した大学)と、そこに所属していた年月日をdd/mm/yyyyで書くように指示されているので厳守しましょう。

職歴の項では、冒頭で自分の現在または過去の所属機関名とその所属機関がある国名、職業名を書きます。職業名は、研究分野や研究対象がわかるように「**分野の##研究者」などと具体的に書きましょう。その下に、代表的な仕事を箇条書きします。通常CVでは主語は省略する(自分自身 "I" が主語なのはわかりきっているから) ので、 "Studied~" や "Developed ~"など動詞から書き始めます。自分がどのような役割で何を成し遂げたかがわかるように、具体的かつ簡潔に書きましょう。成果を論文等にまとめているなら、後のPublicationsの項でリストに挙げる文献の番号を、"Related article : [番号]" などとして文末に書くのがお勧めです。

学歴は通常大学卒業以上を書きます。卒業式の日にちまで覚えている方は少ないのではないでしょうか。私は「卒業日は一律3月31日だろう」と思い込んでいましたが、後で調べてみたら31日ではありませんでした。この年月日が間違っているからといってペナルティは無さそうですが、お気をつけ下さい。卒業(修了)した学部・学科と卒論(修論、D論)のタイトルも書きましょう。私は指導教官名も書きましたが、これは不要かもしれません。

職歴、学歴に長期の空白期間がある場合や何か慣例と異なる場合は、事情を説明しましょう。私は修士課程修了後就職し、その数年後に働きながらPhDを取りましたので、その旨を学歴の項に述べました。

申請書提出締め切り時点でPhDを持っていない申請者については、これまでの所属機関、所属開始/修了の年月日を示して研究経験について述べる必要があります。Guide for Applicantsにて書き方が具体的に指示されていますので、それに沿って書きましょう。

2. 必須ではないが該当があれば書く項目 (Publicationsなど)

Guide for Applicants には、上記の必須項目以外に「含めるべき項目」が1. から10. まで上げられています。このうち、私は 3. Research monographs / chapters in collective volume, 4. Invited presentations at international conference / advanced school, 5. Research expeditions, 7. participation in industrial innovation は該当が無かったので、書いておらず項目も設けていません。私のCVをお使いの際はお気をつけ下さい。ここでは上記以外の項目についてお話します。

まず1. Publications は、peer-reviewed scientific journals, peer-reviewed conference proceedings, monographs に分けて書きましょう。自分が第一著者のものをまず年代が新しい順に挙げ、次に自分が共著者のものを再度年代が新しい順に挙げます。すべてのpublicationに[1]から順に通しの番号を振りましょう。こうしておくと、職歴その他の項で参照しやすくなります。

Guide for Applicantsには「被引用数(self-citation除く)を示せ」とあります。アピールできる被引用数があれば是非書きましょう。被引用数は、google scholarscopusで自分のページを作って論文を登録すれば調べることができます。どの論文に引用されているかも調べられるので、それを見てself-citationを除いた被引用数を割り出しましょう。恥ずかしながら私の論文は、すべてのself-citationを除くとごくわずかな (多くても20程度の) 被引用数しかなく、ホスト機関の研究者に「これなら書かない方がまし」と言われ、被引用数は書きませんでした。示せと指示されている項目を書かなくていいのか?! と悩みましたが、書かなくても問題はないようです。

2. 特許は、発明者、特許番号、タイトル、出版年を最低限書きましょう。発明者が複数いる場合は、自分がどのような役割を果たしたのか(新しいアイデアを着想したのか、アイデアの実証を行ったのかなど) を書くと良いです。

6. 国際会議の主催は、学会名、主催地、主催年、何の委員会に所属したのかを書きましょう。さらに、学会の規模(参加人数、論文数、参加国数など)もわかる範囲で書くと良いです。

8. 表彰・受賞は、賞の名前、授与団体名、受賞年を最低限書きましょう。私はこの3つしか書きませんでしたが、本来は、どんな仕事に対する表彰かも書いた方が良いと思います。

9.はこれまでに受けた研究助成金を書きます。返還不要な奨学金フェローシップなどもここに書くと良いと思います。助成金の名前、番号(もしあれば)、助成団体、研究タイトル(もしあれば)、助成額(ユーロ換算で!)、助成期間を書きましょう。もし共同で受けた助成であれば自分の役割も簡潔に書きます(Principal Investigator = PI なのか、Co-Investigatorなのか等)。

10. は誰かを指導したりメンターとなった経験を書きます。いつ、誰に対し (どの段階の学生か等)、どのような内容の指導をしたか(卒業研究を指導した、インターンシップの指導をした等)書きましょう。

3. 指定されていないがアピールのために書く項目

ここまで書いて既に5ページいっぱいになったという方は、この先を読む必要はありません。十分な業績をお持ちだと思います。私は3ページちょっとにしかなりませんでした。一般的なCVは長くなり過ぎないように2ページ程度に抑えることが推奨されるようですが、MSCAではそれは求められていないので、新たに項目を追加し5ページいっぱいに自分の業績をアピールしましょう。

私が追加したのは以下の項目です。

International collaboration : 私の過去の仕事は国際共同のものが比較的多かったので、それらの内容、相手の機関と国名、自分の果たした役割などを延べ、論文にまとめているものはrelated articleとしてpublicationで割り振った文献番号を書きました。MSCA-IFは研究者が出身国とは別の国に滞在して研究を行うものなので、もし国際共同プロジェクトの経験が既にあれば書くと良いと思います。フェローシップでの研究を遂行させる能力がある、とアピールすることができます。

Reviewer activities : 自分の研究分野の peer-reviewed scientific (international) journal のレビューワーの経験があれば、具体的に論文誌を挙げましょう。私は書きませんでしたが、Impact factorを書いても良いと思います。その研究分野でexperienced researcherとして認められているということを示すことができます。

Scientific communications : 国内学会での招待講演、国内の大学等での招待講演・講義の経験があれば、学会名(大学名)、講演年月日、講演タイトル、場所などを書きましょう。Guide for Applicantsで指示されているのは "国際" 学会またはinternational advanced schoolでの講演のみですが、私は国内での経験しかなかったので項目を自分で追加して書きました。

Outreach and public engagement activities : 一般向けの講演や、高校生以下の生徒・児童向けの講演、イベントなどのアウトリーチ活動の経験があれば書きましょう。講演(イベント)年月日、場所、講演の目的またはタイトル、ターゲット (聴講者)、参加人数など、分かる範囲で具体的に書きましょう。私は申請書Part B1の 2. Imapctの項で、一般や若い生徒向けの講演やイベントを実施する計画であること、また自分はそのような講演の経験が豊富にあることを述べていたので、その裏付けとしてCVに過去に行った全てのアウトリーチ活動を具体的に書きました。

他にも挙げられる項目があると思います。ぜひ、業績をアピールしたり、Part B1の内容を補強したりするようなオリジナルの項目を追加して、CVを充実させて下さい。

もし、まだキャリアが浅くてCVを十分に書けなかったとしても、心配し過ぎることはありません。MSCA-IFは、優れた研究者になるためのトレーニングを兼ねたフェローシップです。CVの弱点を克服できるような研究計画を立て、申請書Part B1のリサーチプロポーザル部分でそれを十分に説明しましょう。

Part B2の残りのセクションは、フェローシップに参加する全ての機関 (主なホスト機関となるbeneficiary, secondment先のパートナー機関など) の概要を説明するパートと、研究倫理レポート (課題とその対処方法、該当する法令など) になります。前者は指定フォーマットがありGuide for Applicantsに具体的に書くべき内容が指示されています。また後者は研究内容に強く依存するものなので、両者ともこのnoteでは書き方の紹介はしないでおきます。


MSCA-IFの申請書の書き方紹介も今回のnoteで最後になりました。次は、私のMSCA-IF応募の経緯や、採択に至るまでの体験談を書こうと思います。





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